不倫ネタは世界共通で盛り上がる!?『彼女がその名を知らない鳥たち』白石和彌インタビュー

──確かに、陣治はどんどん狂気じみていきましたね。かわいらしさと狂気のバランスが絶妙でした。では、十和子の不倫相手となる水島については、どういった理由で松坂桃李さんに?

白石:『ピース オブ ケイク』と『日本のいちばん長い日』を観たときかな。桃李くんのシュッとしたイメージが、水島にちょうどいいんじゃないかなと思いました。でも、この役を受けてくれるとは思ってなかったんですよ。水島を演じてもあんまり、得することがないだろうなって。

──それはゲス男なキャラクターとか、激しいラブシーンとか?

白石:それに、水島が十和子に何か残すような存在じゃないから。でも、そんな役柄を松坂くんは「こんな面白い役ないですよ」って、楽しんで演じてくれました。

そう、水島はクレーム処理のために十和子の家まで来て、そこでいきなりキスシーンがある。突然の展開を、彼ならナチュラルに演じてくれそうと感じたのがいちばんの決め手ですね。

──「第42回トロント国際映画祭」から帰ってきたばかりということですが、現地で印象的だったエピソードはありますか?

白石:これもまたおっさんホイホイな話なんですけど、その映画祭に10年くらい通って映画をたくさん観ているという、映画ファンのおじさんが来て、「この映画が本当に心に響いたよ」と言ってハグしてくれましたね(笑)。

あと、生まれ変わりの話のような仏教的な要素を感じさせる内容だけれど、そういうのを気にする人があまりいなかったのが、なるほどな、と思いましたね。

そうそう、不倫というのは世界共通で盛り上がるネタでした(笑)。「どうして不倫を描いた映画を撮ったのか」とか、「日本には水島みたいな男ばかりいるのか」といった質問でも盛り上がりました。

──なんて答えたんですか!?

白石:「今、日本は芸能ニュースといえば不倫の話ばっかりで、日本の全国民が不倫の話が大好きだ」って、ちゃんと教えてあげましたよ(笑)。

──そのほか、印象的だったQ&Aはありますか?

白石:ストレートに、ラストの陣治の行動がわからなかったという声がありました。僕も原作を読んだときに同じことを思って、それでまったく泣けもしなかったから、それはそうだろうなって。僕は読んでから咀嚼するまでに、時間がかかったんですよね。読後1週間くらい経って、やっと沼田まほかるさんが言いたいことがわかった。だからこそ、映画化したいなって思えたんです。

もっというと、その陣治の選択では結局なにも解決しないので、観た人が理解できないところではあると思う。彼が最後、十和子に幸せを与えたのか、残酷さを与えたのか…。考え方によっては残酷さを与えた、とも取れるラストだと思います。

──最後に、本作は白石監督初のラブストーリーですが、これまでと違うテイストのものを撮られたことで、ご自身の変化だったり、今後の作品への影響はありそうですか?

白石:僕のスタンスとして、なにがどう変わるか、っていうのは、これからの題材と向き合ってみないとわからないですね。でも、ひとつ言えるのは、僕にとってのエポックメイキングな作品になったということ。

まず、「男臭い実録モノしか撮らないんでしょ」という、周りのイメージが変わるんじゃないかな、と。そういう意味でいうと『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』のような作品だけをやっていたら出会えない題材に、『彼女がその名を知らない鳥たち』が、これから引き合わせてくれるんだろうな、という期待がありますね。

『彼女がその名を知らない鳥たち』(配給:クロックワークス)は、2017年10月28日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショーです。

http://kanotori.com/

(取材・文:大谷和美)

『彼女がその名を知らない鳥たち』予告動画はこちらから

(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

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    ライタープロフィール

    大谷和美

    大谷和美

    高校2年の時に観た「バトルロワイアルⅡ」に衝撃を受け、映画の道を志すも、縁あって雑誌編集者に。特撮誌、若手俳優グラビア誌等の編集・ライター、WEB編集者を経て、現在はフリーランスで活動中。社会の闇を描いた邦画が好きで、気づけばR指定のDVDばかり借りていることも。一方、元々好きだったライダー・戦隊などの特撮作品やコメディ映画も好んで観ます。

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