2015年度キネマ旬報ベスト・テン発表!

■「キネマニア共和国」

IMG_5213

みなさま、あけましておめでとうございます。
今年もシネマズby松竹および当コーナーをよろしくお願い申し上げます。

さて、2016年最初のお題は……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.89》

2015年度キネマ旬報ベスト・テンが発表になりました!

世界最長の歴史を誇る
老舗映画雑誌の伝統ある映画賞

「キネマ旬報」は1919年(大正8年)に創刊し、まもなく100周年を迎えようとしている世界最長の歴史を誇る老舗の映画雑誌であり、その中で1924年(大正13年)より始まったキネマ旬報ベスト・テンは今回で89回を迎えます(戦時中に3年間中止された時期もあり)。これはアメリカのアカデミー賞(今年で88回)よりも先に設置された映画賞でもあります。

多くの映画賞が合議制、即ち数名の審査員が会議室の中で各賞を決めていくのに対し、キネマ旬報ベスト・テンは100人を超える老若男女の映画評論家や映画記者などが記名投票し、その集計で選ばれる賞であり、また各自の選考理由なども2月5日に発売されるキネマ旬報決算号にて開示されますので、その公明正大さや中立性も特筆されてしかるべきものがあるでしょう。

では2015年、どのような作品が選ばれたか……?

 

いよいよ発表!

 

ベスト・テン&個人賞

【2015年 第89回日本映画ベスト・テン】

1位:恋人たち
2位:野火
3位:ハッピーアワー
4位:海街diary
5位:岸辺の旅
6位:GONIN サーガ
7位:この国の空
8位:ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判
9位:母と暮せば
10位:きみはいい子
10位:ローリング
(次点:『駆込み女と駆出し男』『バクマン。』)
*10位は2作品同点のため、次点は12位(こちらも同点のため2作品)となります。

 

poster2 (2)

(C)松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ

 3人の男女と社会とのジレンマを慈愛豊かに描いた橋口亮輔監督の『恋人たち』は、作家主義×俳優発掘を理念とする松竹ブロードキャスティングによるプロジェクトから生まれた作品として、その他の映画賞も含めて2015年度最良の作品として下馬評の高かった作品です。

また、これ以外にも『ソロモンの偽証』(本年度から2部作を1本とカウントして選出)『母と暮らせば』と、松竹グループが関わった作品がベスト・テン入りしました。
戦後70年記念ということでは、その代表として『野火』と『この国の空』が選ばれたと捉えていいでしょう。特に『野火』に関しては、塚本晋也監督が日本中の上映劇場を訪ねては観客と対話していく熱意も好評価でした。

意表をついているのは3位の『ハッピーアワー』で、これは「即興演技ワークショップin Kobe」から誕生した、30代後半の女性たちそれぞれの日常を通して不安や悩みを描出した濱口竜介監督による5時間17分の作品で、ほとんどのキャストも演技未経験者という意欲的な作品ですが、誰もがその気になれば映画を作ることのできるデジタル時代の今、こういった職業プロ的ではない土壌からの秀作が続々登場してくるような予感もしています。

 

【2015年 第89回外国映画ベスト・テン】

1位:マッドマックス 怒りのデス・ロード
2位:アメリカン・スナイパー
3位:アンジェリカの微笑み
4位:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
5位:黒衣の刺客
6位:神々のたそがれ
7位:セッション
8位:雪の轍
9位:インヒアレント・ヴァイス
10位:おみおくりの作法
(次点:『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』)

poster2 (3)

(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 

邦画とは逆に、下馬評の高かった『アメリカン・スナイパー』を押しのけて『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が1位を獲ったことで、SNSなどで驚きのつぶやきがあふれ始めていますが、今回の『マッドマックス』は、それこそジョン・フォード監督の名作『駅馬車』の21世紀的な再現であることを考えれば、そう驚くことでもないでしょう。

『バードマン』『セッション』と、アカデミー賞絡みの作品はやはり強いようですが、『アンジェリカの微笑み』『おみおくりの作法』などミニシアター作品が着実にランクインするあたりもキネマ旬報ベスト・テンならではです。

松竹絡みでは『黒衣の刺客』がランクイン。ホウ・シャオシェン監督の武侠映画への芸術的オマージュが評価されたのでしょう。

 

【2015年 第89回文化映画ベスト・テン】

1位:沖縄 うりずんの雨
2位:戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)
3位:瀬戸黒 ―加藤孝造のわざ―
4位:“記憶”と生きる
5位:芭蕉布 ―平良敏子のわざ―
6位:福島 生きものの記録 シリーズ3 ~拡散~
7位:生命の誕生 ~絶滅危惧種日本メダカの発生~
7位:放射線を浴びたX年後2
9位:日本と原発
9位:みんなの学校
(次点:「首相官邸の前で」)
*7位、9位は2作品同点となります。

 

文化映画ベスト・テンは、本来は商業ベースに乗らない学術的もしくは思想的傾向の強い作品を対象としたものでしたが、今回の『沖縄 うりずんの雨』『戦場ぬ止み』をはじめ、最近は劇場公開された作品も普通にランク・インされるようになってきており、どこか対象が曖昧になってきている感もありますが(いっそ記録映画ベスト・テンとでもしたほうが今後はすっきりするような気もしますが)、それでもここに掲げられた作品群は、機会があったら見ておいて損のないものばかりでしょう。

 

【作品賞】

■日本映画ベスト・テン第1位
「恋人たち」(監督/橋口亮輔 配給/松竹ブロードキャスティング、アーク・フィルムズ)

■外国映画ベスト・テン第1位
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(監督/ジョージ・ミラー 配給/ワーナー・ブラザース映画)

■文化映画ベスト・テン第1位
「沖縄 うりずんの雨」(監督/ジャン・ユンカーマン 製作・配給/シグロ)

 

【個人賞】

日本映画監督賞:  橋口亮輔 「恋人たち」
日本映画脚本賞  橋口亮輔 「恋人たち」
主演女優賞  深津絵里 「岸辺の旅」「寄生獣 完結編」
主演男優賞  二宮和也 「母と暮せば」
助演女優賞  黒木華 「母と暮せば」「幕が上がる」「ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判」
助演男優賞  本木雅弘 「日本のいちばん長い日」「天空の蜂」
新人女優賞  広瀬すず 「海街diary」
新人男優賞  篠原篤 「恋人たち」
外国映画監督賞  ジョージ・ミラー 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

 

個人賞も『恋人たち』チームが多数受賞していますが、二宮和也と黒木華の『母と暮らせば』の“恋人たち”もめでたく受賞。特にジャニーズ系俳優の受賞ということでは、かつて生田斗真が新人男優賞を受賞していますが、主演男優賞ではニノが初めてということになります。また、ランクインされていない『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』で本木雅弘が助演男優賞を受賞というのも、それだけ彼の名演が印象的だったということでしょう。

新人女優賞の広瀬すずは納得ではありますが、それでも『ソロモンの偽証』の藤野涼子にもあげたかった感もあり、一人しか選べない個人賞の難しいところであります。

とはいえ、実は私もこのキネマ旬報ベスト・テンの選考委員を務めさせていただいているのですが、今回の結果の中でかぶっているのは、洋画ベスト・テンで1本だけという、まことに恐れ多きマイノリティぶりを露にしております⁉

何がどうマイノリティであるか、2月5日発売のキネマ旬報決算号でお確かめくださいませ。
(でも、キネ旬もアニメーション映画ベスト・テンやればいいのにね)

 

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

    ピックアップ

    関連記事

    新着記事

    WP Facebook Auto Publish Powered By : XYZScripts.com