世界(=レース)の中心でアイを叫ぶ⁉ 『劇場版弱虫ペダル』の楽しさ

週刊少年チャンピオンで連載中の渡辺航による人気コミックを原作とするTVアニメ『弱虫ペダル』の劇場用映画がいよいよ公開!

というわけで、

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.12》

『弱虫ペダル』の楽しさをご紹介!
『劇場版 弱虫ペダル』本ポスタービジュアル

女子に大人気の熱血自転車スポ根アニメ!

『弱虫ペダル』はアニメヲタクの総北高校1年生の小野田坂道が、ひょんなことから自転車の才能を見出され、自転車競技部に所属し、先輩や仲間たちとともに過酷な自転車〈サイクル〉ロードレースに挑むというもの。
気弱な性格だった坂道が、仲間たちとの交流や、何よりも自転車そのものに魅入られていきながら、他校との熱いバトルを繰り広げていくさまは圧巻。また仲間たちやライバル個々も非常に魅力的に描かれていて、ある種の青春群像劇としても突出しています。
メインカット
これまで13年10月~14年6月までTVアニメ第1期(全38話)が、14年10月~15年3月まで第2期(全24話)が製作されています。
また第1期の総集編ODS『弱虫ペダルRe:RIDE』(14)、第2期の総集編ODS『弱虫ペダルRe:RODE』(15)は、それぞれ映画館にてイベント上映されました。
私は両方とも劇場で見ましたが、レース中心の構成が意外に功を奏して、インターハイに挑む坂道はもとより仲間やライバルたちのキャラがシンプルに引き立ち、イチゲンさんでも見やすいものになり得ていました。
そしてこのとき驚いたのが、観客の大半が若い女性だったこと。上映中も目をハートにしながら、時折「キャッ」などと小さく黄色い悲鳴なども上がりながら、まるでライヴ会場に来ているかのような盛り上がりなのでした。
なるほどこの作品、エンタミクス「全国3000店の書店員と選んだ 女子がハマった少年漫画ランキング」第1位であることを知ったのは、その後のことです。

火の国・阿蘇を舞台にもたらされるカタルシス!

サブ5
そして今回の劇場版は、原作者自身の書き下ろしストーリーで、TVシリーズ第2期の後、総北高校自転車部の面々が“火の国”阿蘇山の「熊本 火の国やまなみレース」に出場します。

ここにはインターハイで成績優秀だったチームが多数参加します。つまり、これは第2のインターハイといっても過言ではない強豪たちの熱き宴でもあるのです。

映画の前半は、坂道を中心に総北自転車部の面々との日常的交流がほのぼと描かれていきます。
総集編2作に比べ、今回はゆとりのある人間関係が描出されていて、またそのうえでひとつの事件が起きますが、まあ、これは言わぬが花。

そして後半は阿蘇のレースとなるのですが、TVシリーズからしてそうでしたが、各キャラが汗まみれになりながらライバル・キャラと並走し、もはや肉体の限界を越えているとも思しき状況の中、お互いがお互いの名前を絶叫しながらペダルをこぎ続けていく、その昂揚感は熱血の域を優に超えた“愛”そのものとしか言いようがなく、なるほどこれが女子の支持を得ている所以なのかと納得させられます。

これぞ本当の「世界の中心でアイを叫ぶ」!?

サブ9
もっとも、この“愛”に満ちた絶叫、闘う男なら大なり小なり持ち合わせているものだと個人的には確信していますので、実は男から見ても大いに感動的なのでした。

また今回は、坂道のアニヲタぶりが周囲を巻き込んでのナイスなシーンへと行き着いてくれますので、そちらも見てのお楽しみ。

高校3年生にとっては、おそらくはこれが最後のレースであろうという設定も、今大ヒットしている『ラブライブ!The School Idol Movie』と共通する要素があり、フィナーレを鮮やかに決めようと奮闘する男たちの姿は実にかっこいいものであります。各声優たちの好演も大いに讃えたいものです。

正直、見る前は上映時間90分では全てを語り切れないのではないかという不安もありましたが、ふたを開け見てみれば、実に充実した内容で、緩急のバランスもよく、理想的なプログラムピクチュアになり得ていました。

ただし、見終わってすぐに、「この続きを早くみせてくれ!」と、こちらも叫びたくなるような欲求にかられましたのは、このカタルシスをいつまでも味わい続けたい欲求にかられたからです。

ぜひとも大ヒットして、映画でもシリーズ化していただきたいものです。
公式サイト http://yowapeda-movie.com/

(文:増當竜也)
(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/劇場版弱虫ペダル製作委員会


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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