インタビュー

2017年03月10日

金曜ロードSHOW!プロデューサーインタビュー、番組づくりの舞台裏と思い

金曜ロードSHOW!プロデューサーインタビュー、番組づくりの舞台裏と思い

日本テレビ(以下日テレ)の「金曜ロードSHOW!」は、映画の放送時にデジタル企画を利用し様々な特別企画を実施するなど、視聴者参加型の番組を心がけていらっしゃいます。スタジオジブリ作品など、取り組みによっては、データ放送(dボタン)やスマホを使うなどして、どんどん大きな「祭り」になっています。このような「祭り」のアイデアはどのように作られているのか、その製作の裏側や番組づくりへの思いなどについて、「金曜ロードSHOW!」の2人のプロデューサー、稲毛弘之さんとターニャさんにインタビューしてきました。




──お二人の役割分担はどのようになっていますか。

ターニャ 放送する作品をどのように宣伝していくか、といったPR戦略は私が担当しています。ご指摘のあったデータ放送や特設サイト、SNS展開などデジタル関連のことも私が担当しています。稲毛の方がフォーマット編集など、という形で分担しています。

稲毛 フォーマット編集、とは、映画本編の編集など、金曜ロードSHOW!の放送フォーマットに合わせる作業のことです。

──ジブリ祭りやハリー・ポッター祭りなど、データ放送やデジタルを使った仕掛けをされてますが、毎回どのようなアイデア会議をやられていますか。

ターニャ いわゆる「祭り」と表現している大がかりな取り組みは、毎回やりたいのですが、大きなことは何度もできるわけではありません。

年間の予定の中で「これは力を入れよう」「これはそのまま勝負しよう」みたいな感じで濃淡をつけながら決定していくんです。そのあと、仕掛けを実施するものが決まり、放送タイミングを決定した作品について、どんな企画ができるかまずはアイデア会議を行います。出たアイデアを持って、デジタル企画の運用担当をしている部署の担当者たちと打ち合わせをして、実際に何ができるか考えていきます。

私が金曜ロードSHOW!の担当になってからの5年弱くらいでいろいろな試みをやってきたので、それらをまた使えないか、あるいは何か新しいものを作るか、作品のテイスト、演出によって、デジタル企画を考え、相談しながら決めています。

たとえば、作品がアクションで、みんなで盛り上がるテイストのものだったら、スマホを使いボタンを押してもらって主人公と一緒にアクションしている気分になってもらったり、あるいはしっとりしたテイストの作品であれば、友だちにシェアしたくなるような製作裏話など、知って得するお得情報を読んでいただく、といった展開を作ったりしています。・・・こんな形で、作品に応じていろいろな仕掛けをすることで単に映画を放送するだけではなくて、プラスアルファの魅力を提供して、見ていただきたいと思っています。

稲毛 映画が初放送ではなくて、2回目3回目と放送する場合もありますので、観たことがある方にもまた違った作品の楽しみ方をしてもらうという意味合いもあるんですよね。放送している作品をより深く知ってもらって、より楽しんでいただく、そのための仕掛けづくりをターニャが先頭をきっていろいろやっています。

また、テレビ初放送の作品を放送する際など、じっくり作品を見てもらいたいときは、あえてデジタル仕掛けを作らなかったりもします。

ターニャ 現在は、配信など技術の進歩とサービスの充実により、いろいろな手段で映画を見られますよね。そうした中で「金曜ロードSHOW!」を選んでいただいているので、何かその時間に金曜ロードSHOW!を見る意味を提供したいと思っています。プラスアルファな情報なのか、別のものなのかといったことを考えたときに放送と一緒に楽しめるデジタル企画は時代に即しているので、力を入れている状況です。

稲毛 たとえば、ジブリ作品などは何回も見ても楽しめますよね。逆に、観るたびに新しい発見や感動を味わったりします。そういうことを情報やデジタル企画によって放送と一緒に落とし込んで視聴者のみなさんに伝えられたらいいなと考えています。

素晴らしい作品は何回見ても素晴らしいし、見る年齢などによって視点が変わったりします。そういうことも伝えられたらいいなと思っています。その手助けができるのがデジタルの良さだと思っています。

ターニャ テレビを観るとき、今ではほとんどの方がスマホやタブレットを使っているんじゃないかなと思います。そういう方々に映画のあたらしい見方や新しい楽しみ方を提供したいと考えているんです。そうしたこともきっかけにして、まずは金曜ロードSHOW!を観ていただき、デジタル企画が気に入っていただければその情報をSNSなどにシェアする機会もあると思います。

放送中にシェアされることで、「あ、今日金曜ロードSHOW!で○●やってる」ということに気がついてもらえるチャンスも増えますよね。

デジタル企画がSNSに発信されることで広がっていく、それでリアルタイムで金曜ロードSHOW!を見てもらえる方が増える・・・そんな展開が作れたらいいなと思っています。

──金曜ロードシネマクラブについて教えて下さい。

ターニャ 金曜ロードSHOW!のデジタル戦略の一環として、番組のホームページを2014年の4月にリニューアルして、「金曜ロードシネマクラブ」と名称変更すると同時に、ネット上で会員になれるようにしました。いままで、テレビは一方的に放送するだけ、ホームページはオンエア情報などを発信するだけでしたが、会員制にすることで、番組と視聴者の皆様とで、パーソナルな繋がりを作っていくようなイメージです。

ヒントにしたのは、航空会社のマイレージ制です。同じ航空会社を使うとマイルが貯まりポイントとなり、新しい航空券に引き換えられたり、プレゼントに交換できたりしますよね。同様に、シネマクラブという会員制にすることで、金曜ロードSHOW!のオンエアを見るとポイントが貯まり、データ放送企画やデジタル企画に参加することでまたポイントが貯まる・・・という仕組みです。

ポイントを貯めると、番組のキャラクター・宣伝大使である黒うさぎのスタンリーグッズや映画関連のプレゼントに応募していただくことができます。

情報発信だけのページではなく、金曜ロードSHOW!をより身近に感じ、愛してもらって、オンエア以外の時間も楽しんでもらって、また番組を見て頂いて・・・それを繰り返していきたいというコンセプトです。各種の「祭り」などデジタル企画をやるときは参加するとシネマクラブのポイントが貯まるようになっています。

──『アメイジング・スパイダーマン』の放送時もありましたね。

ターニャ あの時は、特設サイトとデータ放送で「ウェブシューター企画」を実施しました。バトルのシーンを放送中に、ボタンを押すと敵を捕まえるようになっていましたね。そのほか、エヴァンゲリオン放送時のATフィールドやヤシマ作戦・・・といった作品の世界観を反映させた展開もやりました。

そのほか、ハリー・ポッター放送時の「魔法のつえ」企画、どれも大変な数の参加者に楽しんでいただき、盛り上がることができました。・・・・・そんな感じで、デジタル企画が話題になって広がり、我々は「祭り」と呼んでいますが、放送自体がイベント化されて楽しんでいただければと願っています。

「祭り」といえば、その最たるものが『天空の城ラピュタ』の放送時に話題になるいわゆる「バルス祭り」ですね。あれこそ、●月○日のよる九時に金曜ロードSHOW!で「天空の城ラピュタ」をリアルタイムで観る意味が本当に大きい「お祭り」ですよね。とにかく、祭り化することで、録画ではなく、リアルタイムで金曜ロードSHOW!を見る意味がでてくると思います。

稲毛 SNSでも視聴者に感動を共有できるものを展開していければいいなと思っています。

ターニャ さきほどもお伝えしたように、いろいろな手段で映画を見ることができる中、わざわざその時間にテレビにチャンネルを合わせていただき、2~3時間見ていただくのは大変なことだと思っていて、その瞬間に金曜ロードSHOW!で映画を見る意味をプラスオンできたらと、と常々いろいろと頭を巡らせています。シネマクラブを始めて、様々なデジタル企画をお届けする経験を積んで、3年経って、今回、またリニューアルすることになりました。

──どのようなリニューアルをされるのでしょうか。

ターニャ インターフェイスを向上させて、スマホでより操作しやすくなります。また放送作品のレビューが投稿できるようになります。それによって、よりインタラクティブに番組と視聴者のみなさんが交流できるようになります。また、トップに出ている次の金曜ロードSHOW!の作品について「みたい!」ボタンも追加され、ユーザーのその映画への注目度を感じることができます。

──レビューというのは点数がつけられたりするようなイメージですか。

ターニャ そうですね、5段階で★がつけられるのと、コメントが投稿できる機能が追加されます。今後さらに発展させていく可能性はあります。

投稿が掲載されるとシネマクラブのポイントもゲットできますし、ぜひどしどし投稿いただければ嬉しいです!
3月24日に放送する「おおかみこどもの雨と雪」に向けては、新装された金曜ロードシネマクラブ上に特設サイトを設置し、感動シーンランキングのファン人気投票を行います。

映画の感動シーンの動画つきでわかりやすく印象的なシーンが掲示されています。投票したり、シェアしたりするとポイントがゲットできます。トップ10に選ばれたシーンについては、放送中に、データ放送と特設サイトで発表していきますので、ぜひその結果も楽しみにしていただいて、番組をご覧くださいね!

企画に参加してポイントを貯めて頂くと、かわいい「おおかみこどもの雨と雪」のグッズにも応募いただけます。













──ジブリ作品などの放送のタイミングはどのように決められているのでしょうか。

稲毛 これまで夏に新作が公開されることが多かったので、「夏のジブリ」といった形でまとめて複数週放送することが多かったですね。

ターニャ 映画が公開されるときは、そのタイミングにあわせて放送していました。それを中心に他の時期にすることももちろんありましたが。

最近は新作公開があまりなくなってきたので、よきタイミングを見計らって、祭り化することで盛り上げていきたいという戦略は持っています。複数週のジブリ作品の放送自体がイベント化されるような意識をしています。
タイミングに関してはいろいろな状況を見ながら決めている、とだけお伝えしておきますね・・・

稲毛 その作品にとって一番いいところを常に考えています。言うまでもなく、ジブリ作品は金曜ロードSHOW!にとって極めて大切な作品ですので。

きちんとしたタイミングで放送すると、前回よりいい数字が出せることもあるので、常に置き場所を精査して、いい結果が出せるようにと考えていますね。さらに、デジタル企画なども付加して盛り上げられるようにしていきたいです。

──今後どんな映画を流していきたいですか。

ターニャ 金曜ロードSHOW!がある作品をかけますとなったときに「ワ~」となる、インパクトのある映画をかけ続けていきたいと思います。ジブリ作品やハリー・ポッターなど、そういう作品を一つでも多く編成し続けることが番組の盛り上げに繋がるので・・・。

放送することで世の中に何か反応が広がるような作品、話題になる映画をかけ続けていきたいと思います。今でも、金曜ロードSHOW!は子どもたちやティーンズの方々、お茶の間で何よりも気楽に「映画と出会う場」、であると信じていますので。

稲毛 ハリー・ポッターのように何年経っても色あせない映画、昔なら『ホームアローン』や『天使にラブソングを』『ベイブ』みたいに何年経っても廃れない洋画を発掘して10年、20年とかけられるような金曜ロードSHOW!独自の作品みたいな形でラインアップできたらいいな、と思っています。

今の時代は、映画の消費が早くなってしまっている気もします。そんな中、映画のプロとしての目利きで作品を選び、視聴者の方に届けられたらと思っています。

(取材・文:波江智)

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