カンフー映画とその担い手たちをリスペクトする ドニー・イエン主演『カンフー・ジャングル』

■「キネマニア共和国」

香港映画界の伝統的ジャンルであるカンフー映画は、ブルース・リーやジャッキー・チェンなど数々のアクション・スターを生み出してきましたが、現在このジャンルの最前線を突っ走り続けているのがドニー・イェンです。
古くは『ドラゴン危機一発97』(97)、最近では『イップマン』シリーズなどで知られる宇宙最強男の最新作は……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.38》

世界中のカンフーおよびアクション映画ファン必見感涙必至、最強のリスペクト・アクション映画『カンフー・ジャングル』です!
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武術チャンピオンを殺害し続ける犯人と
彼を追い求める仮釈放の武術家の闘い

かつてそれぞれの流派で武術チャンピオンに輝いた男たちが殺される事件が発生します。

しかも、それぞれが得意とする武術によって……。

事件を知った服役中の囚人ハーハウ(ドニー・イェン)は、担当警部を刑務所に呼んで、仮釈放を条件に捜査の協力を申し出ます。

かつて警察の武術教官を務めながらも、私的試合で相手を死なせてしまったハーハウは、どうも犯人のメドがついているようなのです。

そう、犯人のフォン(ワン・バオチャン)は、自分が世界一の武術家“天下第一”であることを証明するために、次々とチャンピオンたちに挑戦し続けていたのでした。

警察はようやくフォンを追い詰めますが、そのさなか、ハーハウも仮釈放の身でありながら、フォンとの決着をつけるために姿を消してしまうのでした……。

このように『カンフー・ジャングル』は、さまざまな武術に精通する殺人犯と、一門のために投獄したドニー・イェンとの決死の闘いをクライマックスに据えながら、そこに至るまでにありとあらゆる武術バトルを壮絶かつダイナミックに展開させることで、カンフー映画の現代的再生を図った意欲作です。
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壮絶なるクライマックス!
そしてエンドタイトルのリスペクトに涙!!

監督は孫文を警護する武術集団の運命を描いたカンフー・アクション時代劇『孫文の義士団』(09)のテディ・チャン。

彼は今回、カンフーの達人らの精神を21世紀の現在に導入させながら、カンフーおよびカンフー映画に対するリスペクトを捧げているのです。

前半は、ひとりひとり流派の異なるチャンピオンたち(演じるは、実際それぞれ武術家としても名を馳せる名優ばかり!)と、フォンが戦う殺人試合の数々。

さまざまな武術を取得していなければ成立し得ないバトルを堂々と繰り広げるワン・バオチャンの凄みは本作のキモともいえるものです。
(彼を推薦したのはドニー・イエンだったとのこと。両者は14年の『アイスマン 超空の戦士』でも共演しています)

中盤は、フォンの隠れ家を突き止めての警察、そしてハーハウとの水陸両用の攻防戦。

武術に銃器、ボートなど、その状況下のアイテムを駆使しながらの壮大な見せ場となっています。
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そしてクライマックスとなる深夜の高速道路でのハーハウVSフォンの大激戦。

ドラマの展開に応じながら、こうした壮絶なるカンフーの見せ場をバランスよく配置した構成もお見事で、見る側は上映中だれるところがないままエキサイトできますが、特にクライマックスはもう狂っているとしかいいようのないほどに危険な状況下(マジに猛スピードで車が走りまくっている!)でのリアルな一触即発バトルは、もう目が離せません。

ドニー・イエンのアクションもまたドラマの流れに即しながら徐々にヒートアップしていきますが、クライマックスはその極みとして、もはや誰にも止められないといった武術家の誇りがみなぎったものにもなり得ています。
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本作の原題『一個人的武林』の“武林”とは、武術家だけの世界を指す言葉であり、その武林の中で誰が一番強いかを競い合う本作こそは、これまでのカンフー映画の伝統の韻を踏んだものでもあるのです。

だからこそ、本作では全てのドラマが終わってのエンドタイトルで、これまで香港カンフー映画に携わってきた映画人の名を掲げながら、先達に対してリスペクトを捧げています。

こうした姿勢そのものが、実は本作のもっとも感動できる点でもあるのです。
(たとえば日本の時代劇映画で、最後にカツシンやライゾウ、キンノスケなどの名を掲げながらリスペクトを捧げる映画など未だかつてありません。嘆かわしいことです)

こういったリスペクトの精神がある限り、香港カンフー映画は今後もすたれることはないでしょう。

エンタテインメントを稼業とする者にとってのお手本ともなるべき快作、それが『カンフー・ジャングル』なのです。

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(文:増當竜也)

『カンフー・ジャングル』は2015年10月10日(土)より全国ロードショー!
公式サイト http://kung-fu-jungle.gaga.ne.jp/

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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