『僕たちのラストステージ』は、一発屋芸人もそのファンも必見の感動秀作だ!

© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018 

ローレル&ハーディをご存知でしょうか?

戦前に大活躍したコメディアン・コンビで、主演映画も多数あります。

一般的にチャールズ・チャップリン、バスター・キートン、ハロルド・ロイドが三大喜劇王として広く知られるところではありますが、実際は彼ら以外にもマルクス兄弟やアボット&コステロなど多数のコメディアンをアメリカ映画界は昔から擁し続けています。

ローレル&ハーディも、その中の一組で、三大喜劇王よりもこちらのほうが断然好きというファンも当然ながら多数います。

さて、そんなローレル&ハーディの晩年を描いた映画が日本でも上映開始されました……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街374》

題して『僕たちのラストステージ』、しかしながらそのラストステージは観る側に新たな人生のステージの希望を抱かせてくれる、映画ならではの秀作に仕上がっています。

落ちぶれた芸人コンビ
一念発起の英国ツアー

『僕たちのラストステージ』はまず1937年、やせっぽのスタン・ローレル(スティーヴ・クーガン)と太っちょオリバー・ハーディ(ジョン・C・ライリー)のお笑いコンビが人気絶頂だった時代を映し出します。

主演映画の撮影で大わらわの中、契約にまつわるトラブルなども描かれていきます(実はこの部分が後々のドラマに大きく影響していくので、しっかり見ておいたほうがいいでしょう)。

やがて時が流れて1953年、ローレル&ハーディは既に過去の人になっていました……。

ふたりは再起をかけてイギリス・ツアーを開始しますが、行く先々の待遇はかつての栄光を知る者からすれば決して恵まれたものではなく、客席も最初はまばら。

それでも彼らの精力的活動によって徐々に観客は増え始め、ついにロンドンの大きな劇場での2週間ライヴが決定するに至ります。

しかし、その一方で、老いに伴う肉体的な限界や、それぞれの隠し事などが徐々に表面化して行くに従い、お互いの心に疑心暗鬼が芽生え、やがてそれが爆発して大喧嘩を始めてしまい……。

© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018 

ビジネスパートナーから
真の友情を育む過程の感動

本作は戦前の栄光から一転して戦後落ちぶれたコメディアン・コンビの晩年の模様を描いた実話の映画化ですが、同時に長年コンビを組み続けてきた同志の友情と確執を余すところなくとらえた人間ドラマの秀作です。

俗に「人気のあるお笑いコンビほど、実生活は仲が悪い」などと言われたりしますが、少なくともローレル&ハーディに関してはそんなことはなかったようで、ただし友好的ではあれビジネス上のパートナーという距離感は保っていて、またそれゆえにお互いの資質を冷静に理解した上での息の合ったライヴなどが本作では見事に再現されています。
(マスコミ用のプレスシートによると、ライヴ中のささいなミスまで見事に再現されているとか)

しかしながらそれでも長年一緒に活動してきた中での鬱屈やわだかまりなども生じてきて当然、またその確執を両者がいかに乗り越え、それこそ晩年に至って真の友情が育まれていく過程が描かれているので、観ている側も思わず嬉しくも涙してしまうのです。

またユニークなのがスタンの妻イーダ(ニナ・アリアンダ)とオリバーの妻ルシール(シャーリー・ヘンダーソン)の関係性で、どちらも夫を愛しその才能を認めているが故に相方には厳しく、そこに伴う女同士の仲が良いのか悪いのかわからないシニカルな火花散るコミュニケーションが何ともニマニマさせられます。

戦後の時代色も過不足なくとらえられ、観る側も同時代の観客になったかのように、落ちぶれても一流の誇りを持ち続けるローレル&ハーディの見事な芸の数々を堪能しつつ、世紀を超えて彼らの新たなファンになっていくことは必定。

スティーヴ・クーガンとジョン・C・ライリー、どちらも名演という言葉だけではすまされないほど素晴らしい“ローレル&ハーディ”を体現しています。

どちらか一方が欠けても、この魅力は醸し出されなかったことでしょう。

監督のジョン・S・ベアードはローレル&ハーディのファンで、学生時代に彼らのコスプレをしたこともあったというだけに、今回の企画をオファーされて非常に昂揚したとのこと。

「好きこそものの上手なれ」ではありませんが、本作は稀代の名コンビを愛してやまない者たちによって作られた愛の映画であるともいえます。

ゴールデンウィークの映画興行は例によって華やかな超大作などが中心となりますが、こういった一見小粒ながらもその実いつまでも見た者の心に残る名画もちゃんと存在しています。

映画ファンはもとより、お笑いが好きな人にもメチャおすすめの作品です。

個人的には一発屋芸人の人たちにも見てもらい、明日への希望を見出してもらいたいですね!?

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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