俳優・映画人コラム

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2016年02月26日

西島秀俊と北野武=ビートたけし、二人の昔と今

西島秀俊と北野武=ビートたけし、二人の昔と今

女が眠る時


(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会



西島秀俊と北野武=ビートたけし13年ぶりの再会


西島秀俊とビートたけしの共演が続いている。昨年11月に公開された「劇場版 MOZU」。そして、2月27日(土)から公開される「女が眠る時」が続く。

「劇場版 MOZU」はTBSとWOWOWの共同製作で2014年に半年にわたって連続ドラマとして放映され、その後スペシャルドラマも製作された大型企画の完結編で、西島秀俊は主人公の公安警察のエース倉木をシリーズとして演じた。ビートたけしは、その完結編にすべての黒幕、存在しているのかどうかも不明な謎の存在ダルマを演じた。

映画自体は幸運にもビートたけしをダルマにキャスティングできたことが、災いして(?)シリーズ全体のキャラクターのバランスが崩れてしまい、主人公倉木の影も薄くなり、もう一方の主役であった香川照之は完全に脇に周り、タイトルロールMOZUを演じた池松壮亮はスーパーサブという扱いになってしまった。

公開が直前に控える「女が眠る時」は1995年の「スモーク」でベルリン映画祭グランプリ(銀熊賞)を受賞したウェイン・ワンがオール日本人キャストによる日本映画に挑んだ最新作。

スペイン人作家ハビエル・マリアスによる短編小説を日本を舞台に置き換えて翻案した注目作だ。ビートたけしは北野武監督作品以外では「血と骨」(04年、崔洋一監督)以来12年ぶりとなる主演で、西島秀俊が対になる作家を演じる。ヒロインには忽那汐里と小山田サユリがそれぞれに絡むヒロイン役を担っている。

「スモーク」自体がそもそも日米独合作の映画で、監督も香港出身ということもあって、アジア圏には心理的に近いものがあったのだろう。製作準備中のミーティングの中で日本を舞台にすることに決め、たけしと西島が「スモーク」のファンであったこともあって、早々に話が決まったとのことだ。

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(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会



西島秀俊、心の師匠との再会と共演


「たけしさんは僕にとって、僕を見出してくれた恩人です。僕の中では「心の師匠」、僕が勝手にそう思っているだけなんですが(笑)。その方とこうやって俳優として対峙して共演できた時間は、僕の俳優人生で一番の宝のような時間でした。」

これは昨年10月、第28回東京国際映画祭の中で行われた「劇場版 MOZU」のワールドプレミアで西島秀俊がたけしとの共演についての思いを語った言葉だ。

自分も機会に恵まれ、そのワールドプレミアを勧賞することができたのだが、その言葉を聞いて、感慨深いものを感じた。偶然のめぐりあわせなのだが、この二人が初めて組んだ映画「Dolls」(02年、北野武監督)の初日舞台挨拶も見ていた。そのこともあって、思わぬ時間の経過と、数段スケールアップした二人が並ぶ姿に感動してしまったものだ。

「Dolls」前後の西島秀俊はTVドラマ「あすなろ白書」で注目を浴びたものの、諸々の事情もあってその後はTVでの露出が限られてしまっていた。映画への出演にシフトしても90年代半ばまでは日本映画自体に今のような活況がなかったこともあり、小規模作品の年に1,2本ペースで出演しているような状況だった。

一方たけし=北野武はすでに97年の「HANA-BI」でヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞済みの“世界のキタノ”となっている状況だった。

「Dolls」では菅野美穂、深田恭子を起用するなどキタノ映画にしては珍しくキタノ映画常連組を外した座組であったが、02年の当時では西島秀俊は大抜擢といわれてもおかしくない起用だった。

それから13年たけしの言葉を借りれば「ここ数年で着実に実力をつけて、人気も上がって、日本を代表する役者に」なった。ちなみにそのあと照れ隠しなのか「日本を代表する役者になったのに、私に一銭もお礼をくれない非常に不義理なヤツだと思っています」と付け足した。

ちなみに、西島秀俊の出演歴を見るとTVドラマ「菊次郎とさき」に出演して、たけしとニアミスをしていた。監督と出演者、原作者と出演者という関係を経て、遂に共演者として肩を並べた二人。「劇場版 MOZU」「女が眠る時」だけで終わらず、まだまだこのコンビが見てみたい。

(文:村松健太郎)

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