『オズランド』波瑠と西島秀俊が働く遊園地に行きたくなる!その理由とは?

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

小森陽一の人気小説「オズの世界」を、波瑠と西島秀俊の競演で映画化した話題作『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』が、10月26日から全国公開された。東京から遠く離れた熊本の遊園地、グリーンランドを舞台に、恋と仕事の狭間で悪戦苦闘する女性の姿を描くコメディ? そんな予想で鑑賞に臨んだ本作。公開直前まで放送されていたテレビドラマ『サバイバル・ウェディング』での、波瑠の役柄とも重なる気がした今回のヒロイン像だが、果たしてその内容はどんなものだったのか?

ストーリー

夢と希望にあふれて、彼氏のトシ君(中村倫也)と同じ超一流ホテルチェーンに就職した波平久瑠美(波瑠)に言い渡されたのは、 系列会社が運営する地方の遊園地グリーンランドへの配属辞令だった…!
ふてくされながらも、“魔法使い”と呼ばれる風変わりなカリスマ上司・小塚慶彦(西島秀俊)と 個性的すぎる従業員たちに囲まれる日々を過ごすうち、 少しずつ働くことの楽しさ・やりがいに気づいていく。
小塚に対して、憧れとも恋ともわからない感情を抱きだしたある日、 久瑠美は小塚の秘密を知ってしまう…。

予告編

巨大遊園地の裏側の秘密と、陰で支えるスタッフの存在が凄い!

本作のヒロインとなる超有名ホテルグループの新入社員・波平久瑠美(愛称はナミヘイ)が、熊本に実在する九州最大級の遊園地グリーンランドに配属されてしまったことから、この物語はスタートする。

実際に現地でロケが行われただけでなく、何とグリーンランドの営業時間中に撮影が行われた本作!

更に、映画の中で使用されている黄色を基調とした印象的な制服も、実はグリーンランドのスタッフが実際に着用している物であるなど、その細部に至るこだわりのおかげで、登場人物たちが働く遊園地内の様子が観客にも非常にリアルに感じられる様になっている。

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

例えば、広大な敷地内に設置された多数のゴミ箱からゴミを回収する作業や、落し物の捜索だけでも大変な時間と労力がかかるなど、普段我々には分からない巨大遊園地の裏側や従業員の苦労が分かって、実に新鮮で興味深いのだ。

特に驚いたのが、現実社会から離れた夢の国であるグリーンランドのイメージを守るための、“五か条の鉄則”の存在! その内容は是非劇場でご確認頂ければと思うが、緊急時でも決してお客さんに悟らせないその気配りとサービス精神は、正にスタッフの人々の陰の働きと努力によって支えられているもの。

突然の停電や落し物など、時に遊園地を襲うトラブル解決の障害となるこの“五か条の鉄則”を、果たしてスタッフたちがどう切り抜けるのか? その辺の臨機応変な対応も、本作の見せ場の一つだと言えるだろう。

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

更に、今回出演している西島秀俊と橋本愛が、普段と趣を変えて軽く明るい役柄を演じているのも、こうした遊園地スタッフたちの魅力を増す効果を上げていて実に見事だと言える。

こんな素敵な従業員がいる遊園地なら絶対行ってみたい! そう思えることは確実な彼らの仕事ぶりは、是非劇場で!

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

実は、現代女性の生き方を描く内容だった!

希望通り、彼氏と同じホテルチェーンに就職したヒロインの久瑠美。だが、期待に反して系列会社が経営する地方の遊園地に配属になってしまい、本社勤務の彼とは離れ離れになってしまうことに。

もともと仕事への情熱よりも彼との恋愛が重要だっただけに、遊園地での仕事に全く興味もやりがいも見出せず、早く実績を上げて東京の本社に戻ることしか眼中に無い久瑠美。そのため、手柄を焦って自分の都合で仕事を進めようとする彼女には、職場の同僚とのチームワークや来園するお客さんのことが、自分には関係の無いものとしか考えられない。

自分はこんな地方の遊園地にいる人間ではない。今の自分の能力もわきまえず、周りの人間と仕事を見下していた久瑠美だったが、地道に与えられた仕事を頑張っていた同時配属の男性社員に、自身が仕事の能力で劣ることを思い知らされてしまう…。

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

本作が素晴らしいのは、そんな彼女が次第に仕事への興味に目覚め、職場での自分の役割とその重要性に気が付くことで、あれほど大切だった彼氏との恋愛に頼らなくとも、立派に自立できる女性へと成長していく姿を描いている点だ。

実は自分が一番仕事が出来ない人間だった。そう気付かされた彼女は、初めて謙虚な気持ちで仕事に向き合い、そこから何かを学ぼうとするまでに成長することになる。

自分の能力を他人に認めさせることや、自分がやりたい仕事が出来ない不満ばかりに目がいって、現在の仕事から何かを学ぶ、あるいは誰のための仕事なのかに気が付かなかった女性が、仕事を通してより広い視野に目覚めるという本作の展開は、正直予想外のものだった。

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

恐らくそれまでの人生で本当の努力や挫折をした経験の無かったヒロインが、自分のダメさ加減とそれまで意味が無いと思っていた雑用の重要性に気付くことで、恋愛に逃げ道を求めていた日々から脱却し、ついには仕事を通して恋愛に依存しない強さを得る。

東京にいる彼氏との関係が最終的にどう変化したかは、是非劇場でご確認頂きたいのだが(このシーンでの中村倫也の役者根性は必見!)、社会の中で自身が輝ける場を得た彼女には、現在の姿に相応しい恋愛が待っていることを予感させる内容の本作こそ、正に恋と仕事、そしてなりたい理想の自分と現実とのギャップに悩む全ての社会人女性に、是非観て頂きたい作品だと言える。

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

本当に努力をしたことの無い人間には、自分の限界や挫折を味わった経験が無い。だからこそ、自分が一番能力があり本気を出せば何でも出来ると思い込んで、他人を低く評価したり見下したりするものだ。

自分の現状をまず認識し、次にそれを許容することで他者への理解が生まれ、初めてそこから物事に対して前向きになれるという、正に人生を成功へと変える秘訣を教えてくれる本作。

仕事と恋に悩む全社会人必見の映画なので、全力でオススメします!

最後に

実は本作鑑賞後に、この『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』と同傾向の作品として思い出したのが、昨年の同時期に公開された新垣結衣主演の映画『ミックス!』だった。

ミックス。

どちらも恋と人生に悩む女性の姿や、人生の挫折からの再スタートを描いた作品だが、一つ決定的に違うのは、最終的に恋も人生の再スタートも手に入れた『ミックス!』のヒロインに対して、本作のヒロインである久瑠美が、もはや恋愛には重きを置いていない点だろう。

実際普通の展開なら、東京の彼氏と今の仕事のどちらを選択するかが重要な問題となるはずなのだが、本作では恋愛問題よりもヒロインの社会人としての成長がメインで描かれているのが、実に興味深い。

そう、決して恋愛に頼ることなく、仕事へのやりがいや成功体験を人生の活力とする女性の姿が描かれた本作は、現代の女性像がもはや男性の勝手な固定概念を覆す存在であると宣言するものなのだ!

©小森陽一/集英社 ©2018 映画「オズランド」製作委員会

本作のヒロインの役名“波平久瑠美”を縮めると“波瑠”となることでも分かるように、原作執筆の時点で既にヒロインのイメージとされていた彼女を起用しただけに、やはり波瑠には、新しい環境に適応しようとして振り回される中で、仕事の責任・やりがいに目覚める女性の役柄が良く似合う! そう再認識させられた本作。

ただ欲を言えば一つだけ、あれだけ印象的に登場したのだから、やっぱりアイドルグループ“フライングモンチー”のライブシーンは無いと寂しいのでは? そう思わずにはいられなかった、と言っておこう。

普段よく観る様な「恋も仕事も両方ゲット!」という単なるロマンチックなラブコメではなく、現代に生きる等身大の女性が直面する、様々な悩みを克服するヒントや勇気を与えてくれる内容は必見です!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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