マジに5億人の女性を救った男『パッドマン』に男は頭が上がらない!

「アメリカにはスーパーマンがいる。スパイダーマンがいる。だがインドには…パッドマンがいる!」

何ともシャレの効いた予告編だなあ、などとニマニマしつつ、いざ映画を見始めたら、このキャッチコピー以外に本作の感動を伝える言葉は存在しないかも! とまで思えるほどのヒーロー讃歌を目の当たりにしてしまいました。

果たしてパッドマンとは? もちろんスーパーマンやスパイダーマン、マーベルヒーローのように巨悪と戦うわけではありません……いや、実は差別や偏見と闘ったという意味で、彼こそ本物のヒーローなのかもしれません……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街347》

『パッドマン 5億人の女性を救った男』のサブタイトルに偽りなく、彼こそは現代インドに生理用品を普及させ、多くの女性たちを救済した、まさにヒーローと呼ぶにふさわしい男なのです!

愛する妻のために安価な
生理用ナプキンを開発した男

『パッドマン 5億人の女性を救った男』は20世紀末の北インド中部、マディヤ・プラデーシュ洲の田舎町マヘーシュワルから始まります。

結婚式を挙げたばかりのアイデアマン、ラクシュミ(アクシャイ・クマール)は愛妻ガヤトリ(ラーディカー・アプテー)が生理になったとき、その期間中は「穢れ期」として部屋の中に入ることが許されず、しかも生理の処理には不衛生な古い布が使われている事実に愕然となりました。

市販の生理用品は高価なため(インドでのランチ価格平均が日本円で93円として、当時のナプキン1枚が何と217円!)、ラクシュミが奮発して買ってあげてもガヤトリは使いたがりません。

ならば自分でナプキンを作ってみよう!

ラクシュミは手作りナプキンの開発を始めますが、何せ生理を「穢れ」とみなしてしまう因習の田舎ゆえ、たちまち彼は変人の域を越えた罪人的な迫害を受け、ガヤトリは実家に帰されてしまいます。

それでもめげないラクシュミは都会インドールへ移り、最適な布地素材を入手し、簡易ナプキン製作機を発明。

そこにたまたま知り合った女子大生パリー(ソーナム・カプール)の協力を得て、徐々にラクシュミの作るナプキンが農村の女性たちに売れ始め、やがては彼女たちの起業にも繋がり、さらには彼の活動が海外からも注目されるようになって……。

差別や偏見に満ちた因習と
対峙し続けた男のヒロイズム!

本作は実話を基にした映画化で、細かい人間関係などには創作も含まれているようですが、要は一人の男が女性たちのために“奇跡”を起こしたという事実!

正直、女性の生理に対して男性はどうしても理解しきれない部分があり、そこに言及したり踏み込んだりするのを避けがちではありますが、実際のところ女性にとっては毎月の大切な問題であり、主人公のラクシュミは愛する妻のためにひたすら開発を続けていきます。

彼は一度のめりこんだら周りが見えなくなってしまう性格なようで(もっとも、だからこそ奇跡を成し遂げることもできたのでしょうけど)、周囲はおろか愛妻にまでその活動と情熱は理解されません。

さらには生理にしてもSEXにしても何にしても、なぜ人は生命を誕生させるために必須ともいえる諸要素を公に語ろうとせず、むしろ隠そうとばかりするのか? といった世界中に古くから蔓延する因習などが彼を阻害していくあたり、大なり小なり日本でも思い当たる節があるのではないでしょうか?
(未だに「産めよ増やせよ」などと、女性を出産マシンのようにみなす下卑た発言を繰り返す政治家や文化人などの、何と多いことか!)

しかしラクシュミ=パッドマンは知っています。

もはやそういった偏見や差別意識を捨てない限り、人類の進歩はあり得ないことを!

などと、思わず大きくふりかぶってしましましたが、実のところラクシュミはただただ愛する妻のために活動を続けていったわけで、それゆえにいくら周りから奇異な目で見られ、迫害されようとも不屈の闘志を抱き続けることもできたのでしょう。

こういった闘志こそ、真のヒロイズムと呼ぶにふさわしいのかもしれません。

同じ男として頭が下がるとはこのことで、いや、もう、本当にこの映画は何よりも男性に見ていただき、我が身を振り返りながら大いに反省していただきたい!

映画の語り口にしても実にエンタテインメントとしての韻を踏んだ造りになっていて、観客の心を昂揚させていく仕掛けにも怠りなし。まさに真のエンタメこそは観る者の意識を革新させてくれるという事象の好例ともいえるでしょう。

監督のR.バールキは『マダム・イン・ニューヨーク』で知られるガウリ・シンデーの夫ですが、妻に負けず劣らずの活躍が期待されます。

それにしても『バーフバリ』2部作の大ヒットや『踊るマハラジャ』のリバイバル、日本と共同制作した幻のアニメ映画『ラーマーヤナ/ラーマ王子伝説』のロングラン上映、そしてインド人の死生観を露にした人間ドラマ『ガンジスに還る』など、このところインド映画の多彩な面がどんどん日本に紹介されていて実に嬉しい限りですが、本作もその中に当然含まれるエンタテインメント・ヒーロー映画として大いに讃えたいと思います(そして男たちよ、パッドマンにひれ伏しましょう!)。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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