なぜだ!なぜ『パワーレンジャー』を観てくれないんだ!『レベルE』『ジョジョ』『ドラゴンボール』好きが大歓喜するのに!
(C)2016 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.
現在公開中の『パワーレンジャー』が最高すぎました!しかし、日本では興行収入が初登場9位と苦戦している!なぜだ!なぜなんだ!続編決定には日本で70億円の興行収入が必要と言われているのに!日本発祥のコンテンツであるうえ、日本のオタクこそが熱くなれる要素も満載なのに!
ここでは、本作を観てくれない人に向けて、「これでも観てくれないのならどうしたらいいんだ!」と思うレベルで、その魅力を訴えまくります!
1:ヒーロー映画なのになかなか変身しない!だが、それこそが重要なんだ!
本作の最大の特徴であり、また賛否を呼ぶポイントにもなっているのは、“ヒーロー映画であるのになかなか変身しない”ということです。なんと、主人公たちが変身するのは、映画の3分の2を過ぎてからなのです!
そして、その変身をするまでの“青春パート”が、ものすごく面白いのです!そこにあるのは、鬱屈した時間を過ごしていた若者の“再起”の物語。ある者はアメフトの有望選手だったが不祥事をきっかけにして道を絶たれ、ある者は家庭に問題を抱えていて、ある者はチアダンスのチームから離れなければならなくなる……そのように“コミュニティから外れてしまった若者たち”が、“外的な要因(人知を超えたパワーを手にする)により成長する”という物語は青春映画の王道と言ってもいいでしょう。
また、主人公たちが“早い段階から力だけは手に入れていたのに、なぜか変身できない”ということも重要でした。鬱々とした日々を過ごしていたティーンエイジャーが「なぜ正義のヒーローへと変身できないのか?」という“理由”を模索する内容もなっているのです。“なかなか変身しない”というのは、単に構成上の都合のことではなく、それこそが物語の軸でもあるのです。
「戦隊ものやヒーロー映画らしくない」、「終盤になるまでヒーローとして戦う場面がないのでもどかしい」という否定的な意見ももっともなのですが、それは裏を返せば「他のアクション映画とは違うユニークな作品になっている」「戦いに赴くまでの人間ドラマをしっかり描いている」ということ!それを期待すれば、本作を大いに楽しめるに違いありません。
また、“名乗り口上”や“謎爆発”など、戦隊ものの“お約束”のシーンがなく、それも残念だったという声もありますが、個人的には作品のトーンに合わないためにオミットしたものだと納得できました。また、合体した巨大ロボットが登場する時の“あの演出”は、戦隊もの好きこそが大興奮できるはずですよ!
2:もちろん原作に多大なリスペクト!ラストのド迫力アクションを見逃すな!
本作が原作としているのは、日本の特撮「恐竜戦隊ジュウレンジャー」をリメイクした同名のTVシリーズです。このシリーズの初期では、変身前まではアメリカ俳優たちによる学園ドラマが展開するものの、変身した後はなんと「恐竜戦隊ジュウレンジャー」の日本の映像をそのまま使っていたのだとか。つまり、戦うまではアメリカが舞台なのに、変身すると日本の風景に切り替わるのです(笑)(シリーズの後期からはアメリカで新規に撮影された戦闘シーンが使われています)。
お伝えしたいのは、本作が(前述のように青春映画としての側面が強くなったとしても)、このTVシリーズ版に多大なリスペクトを捧げているということ!
それは、1995年の『パワーレンジャー・映画版』を観ただけでもわかるでしょう。“アルファ5”や“ゾードン”の見た目は今回の映画版そっくり!基地の内部がほぼ存分に再現されていること、かつ最新鋭の映像技術により、いかに現代的にアップデートされているかがわかりました。
正直に申し上げると、この『パワーレンジャー・映画版』は今観るとCGがかなりチープでした。しかし、今回の映画版の総製作費は120億円!コスチュームはよりスタイリッシュになり、終盤の『パシフィック・リム』を彷彿とさせる巨大ロボットアクションは大迫力かつ、しっかりと戦隊もの(チームもの)としてのカタルシスをもたらすものになっていました。往年の『パワーレンジャー』ファンからもやや否定的な意見のある本作ですが、この巨費をかけただけのことはあるスペクタクルには、認めざるを得ないところがあるのではないでしょうか。
余談ですが、筆者は今回の映画を機に「特捜戦隊デカレンジャー」のリメイクである「パワーレンジャー・S.P.D.」も観てみたのですが……これがめちゃくちゃ面白い!宇宙人が人間と同居している地球での犯罪者を取り締まるという『メン・イン・ブラック』を彷彿とさせる世界観で、なおかつレンジャーのうち2人は警察に追われていた犯罪者になっていたりと、日本の戦隊ものにはない魅力が満載でした。
(C)2016 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.
3:豪華声優陣が共演!吹替版も字幕版もおすすめだ!
本作は吹替版もめちゃくちゃおすすめです!5人のパワーレンジャーには勝地涼、広瀬アリス、杉田智和、水樹奈々、鈴木達央という豪華配役。杉田さんは「涼宮ハルヒ」や「銀魂」など“冷静なツッコミをする立場”な役柄のイメージが強かったのですが、今回のように純朴な少年役にもぴったり!古田新太さんが“司令官”な役柄にマッチしていたのも嬉しかったです
ラスボスの配役が沢城みゆきというのも最高でした!今までも「荒川アンダー ザ ブリッジ」などで“ドS”な役を演じてきた沢城さんですが、今回はその女王様気質なゾクゾクしてしまう声で攻めまくってくれるのですからたまりません!特にあの「水からあげられた魚みたぁい!」というセリフを聞いたら、絶対に服従したくなるよ!
なお、字幕版も若手キャストたちの演技を堪能できますし、『インサイド・ヘッド』のビビリなどを演じていたビル・ヘイダーが声をあてているマスコットキャラがカワイイので、こちらもぜひ観てほしいです。何より、終盤には原語および字幕でしかわからない、とある爆笑ギャグがあったりもするのですから!吹替版ではそのギャグはまったく別のものに変わっていましたが、これはこれで上手いローカライズができていて大好きです。
(C)2016 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.
4:自閉症スペクトラムやLGBTも!悩みの描き方が実に真摯だ!
前述したように、本作は若者たちが悩み、それを“変身”を通じて乗り越えていくという、青春映画としての側面が強い作品です。特筆すべきは、その悩みに“自閉症スペクトラム”や“LGBT”もあることです。
本作の自閉症スペクトラムを持った少年の描き方は実にフェアで、こだわりの強さや冗談を理解できないという自閉症らしい特徴を描きながらも、機械に強いという長所や、調子に乗ってすぐにウソをついてしまうことなど、悪い点も含めたその人の魅力を十分に示しています。ごく症状が軽いためもあるのでしょうが、ステレオタイプな自閉症の描き方になっていないのです。
なお、スペクトラムとは“範囲”を意味しており、それは自閉症などの症状について明確な境界線を設けないことで、その多様性を認めることのできる言葉です。近年では『ザ・コンサルタント』でもそうでしたが、こうして作り手がスペクトラムという言葉を積極期に使い、自閉症に悩む人たちが勇気づけられる映画が誕生しているのがうれしいですね。
LGBTの描写は作中で“それとなく”示している程度の描写なのですが、その悩みそのものはかなり深刻であることもわかるようになっています。なぜなら、彼女がLGBTであることは、家族がとても“普通”であるために、理解を得られないのですから……。
本作には、自閉症スペクトラムやLGBTだけでなく、あらゆるマイノリティの人々へのエールが込められていると言ってもいいでしょう。しかも彼らはヒーローとして、彼らを偏見の目で見ていたはずの街の人々を救うのです!ヒーロー誕生の瞬間には、涙を流してしまうほどの感動がありました。
(C)2016 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.
5:ラスボスの倒し方が『ドラゴンボール』と『ジョジョ』のあわせ技だ!
本作で大笑い&大興奮したのは、ラスボスの倒し方!これが、日本の超有名マンガ「ドラゴンボール」および、「ジョジョの奇妙な冒険」のとあるシーンにそっくりなのです!もちろんどういう場面かはネタバレになるので書けませんが、両作品を知っているなら、きっと「◯◯だ!」と思うはず!
さらに、中盤の展開には、大傑作マンガ「レベルE」の“カラーレンジャー編”を思わせるシーンもありました。具体的には、パワーを手にした直後に“次の日の朝”に切り替わり、仲間と「ヤバいんだけど!」と確認し合ったり、力を手に入れた事実にナーバスになったり、はたまた大興奮したりするのです。
思えば、本作には「少年ジャンプ」的な、仲間と結託し、自分を高めるためにトレーニングをし、そして強大な敵に打ち勝つ!という、“努力・友情・勝利”な面白さが満載です。入場者特典が「アイシールド21」や「ワンパンマン」などジャンプ系で活躍されているマンガ家・村田雄介さんが描きおろしたポストカードになっているのも、その“少年ジャンプらしさ”があったがためなのではないでしょうか。
結論としては、本作にはヒーロー映画とは思えないほどに青春パートが面白く、『パシフィック・リム』的な巨大ロボットアクションがあり、少年ジャンプ的なアツさも満載だということです!ええい!これでも観てくれないのか!(観てください!)
(C)2016 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.
おまけ:この映画が好きならきっと楽しめる!
ここからは、『パシフィック・リム』以外で『パワーレンジャー』が気に入った人に観て欲しい、またはこの作品が好きな人に『パワーレンジャー』をおすすめしたい3つの映画をご紹介します。
1:『ブレックファスト・クラブ』
『パワーレンジャー』の監督が影響を受けていると明言した青春映画です。内容は、問題を抱えた5人の生徒たちが補習を受けて、会話をしていると徐々に彼らの問題や隠している悩みが明らかになる、というもの。舞台はほぼ学校の中の図書館と廊下だけなのですが、それぞれのキャラクター造形が秀逸なおかげで、グイグイと引き込まれました。『パワーレンジャー』の主人公たちが補習クラスにいる設定や、悩みを打ち明けていく過程にはかなり似たものを感じられるでしょう。
2:『ファンタスティック・フォー』(2015年のリブート版)
本国では酷評の嵐、製作経緯は問題だらけ、興行的にも大コケと、世間的には駄作のレッテルを貼られてしまっている作品です。しかしながら、主人公たちの未熟さや、能力を持ってしまったがゆえの悲哀などはしっかりと描かれており、個人的にはかなり楽しめました。『パワーレンジャー』とは“人間ドラマの比重が大きい”、“ヒーローとして活躍する時間が短い”という大きな共通点があるため、こちらが好きであれば確実に気に入るでしょう。
3:『クロニクル』
『パワーレンジャー』や『ファンタスティック・フォー』と同じく、突如としてスーパーヒーローの力を手にしてしまった高校生たちを描いた作品です。何気ないセリフそのものが二度とは戻ってこない青春の輝きをあらわし、時には終盤の驚くべき展開に活かされるなど、映画としての完成度は並々ならぬものでした。リアリティのあるP.O.V方式(登場人物がビデオ撮影した主観映像をそのまま映画にする)も実に効果的で、終盤のとある尊い“メッセージ”には涙を流してしまいました。PG12指定で少し性的な話題や残酷な描写もありますが、ぜひ若者や子どもにも観てほしい傑作です。
■このライターの記事をもっと読みたい方は、こちら
(文:ヒナタカ)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。