『最高の人生の見つけ方』は吉永小百合ファン=サユリストにとってのキラキラ映画だ!

©2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会 

年号が平成から令和に代わって5カ月経ちますが、昭和の映画黄金時代を象徴する映画スターがどんどんいなくなって久しい中、吉永小百合はその矜持を保ち続ける数少ない貴重な存在ともいえます。

そんな彼女の最新作『最高の人生の見つけ方』が2019年10月11日から公開となりますが、このタイトルを聞いて「?」となった映画ファンも多いかと思われます……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街412》

そう、この作品、同名邦題のアメリカ映画のリメイクなのでした!
(そう言えば私、ひと月ほど前の連載No407で「9月から10月にかけてのたった1か月の間に、国の別を優に越境した映画が3本も公開される」と書きましたが、この作品のことを記すのを失念してましたね。ごめんなさい。あのときは気持ちがアジア映画のほうへかなり向いていたもので……)

ガンを宣告されたふたりの女性の
“死ぬまでにやりたいこと”

まず2008年に製作されたロブ・ライナー監督のアメリカ映画『最高の人生の見つけ方』は、ガンを宣告された二人の初老の男が入院先で意気投合し、生きている間にやりたいことをやってしまおうと“やりたいことリスト”を作り、それに基づいてさまざまなことに挑戦していくというお話です。

地道に生きてきた自動車整備士カーター(モーガン・フリマン)とわがままな大富豪エドワード(ジャック・ニコルソン)の凸凹コンビの珍道中は死を意識させながらも前向きで明るく、観る者に不思議な希望を与えるものがありました。

そして今回の犬童一心監督の『最高の人生の見つけ方』は、キャラクターを日本人女性に替えてドラマが進んでいきます。

人生を家庭に捧げてきた主婦・幸枝(吉永小百合)と仕事一筋に生きてきた社長・マ子(天海祐希)。

ふたりが病院で出会うのはオリジナルと一緒ですが、この後がかなり日本版独自の展開を示していくのがお愉しみ。

最初のほうだけネタばれしますと(チラシにも書いてあることなのでご容赦を!)、彼女らは自分たちで“やりたいことリスト”を作るのではなく、病院で出会った12歳の少女の患者が落としていった“死ぬまでにやりたいこと”リストを彼女に代わって実践してみようということになるのです。

何せ12歳の女の子が書いたリストゆえに、スカイダイビングや海外旅行みたいにオリジナル版と同じものもありますが、それ以外は多分に無理ムリで痛い要素も湛えつつ、何となく微笑ましくもうらやましくなってしまうものがあるのでした。

また、たとえおばさんとはいえ、やはり“女”ですから、おっさんの加齢臭まで漂ってきそうな濃ゆいオリジナル版とは真逆に、こちらは香水の匂いが漂ってくるような華やかな味わい。

ここで吉永小百合&天海祐希というコンビの妙が大いに活きてくるのです(そう、ももいろクローバーZと一緒に並んでも、全く引けを取らない華やかさ!)。

©2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会 

“いつまでも夢を”と謳い続ける
映画スター吉永小百合

思えば21世紀以降の吉永小百合は、映画の風格みたいなものにこだわった重厚な大作仕立ての作品をチョイスしてきた節が感じられます。

しかし、もともと10代でデビューして以来、同世代を含む熱烈なファン=サユリストの熱い支持を得ながら映画スターとして君臨してきた彼女に、サユリストが真に望んでいるのはもっとフットワークの軽いものではないだろうか?

そう思えてならなかっただけに、今回のコミカルな中に人生の機微を忍ばさせるような作品は、おそらくはサユリストはもちろんのこと同世代の映画ファンを喜ばせてくれるのではないでしょうか。

映画は何も若者だけのものではなく、老若男女さまざまな世代が、それぞれの年齢や環境などに応じたものが作られていくべきでしょう。

その意味では本作は、吉永小百合とともに人生を歩んできた映画ファンにとってのキラキラ映画であると言えるかもしれません。

本作の犬童一心監督は、最近でこそ時代劇など様々なジャンルを手掛けていますが、もともと少女漫画の大ファンで自主映画時代からそういったタッチの女の子映画を得意としてきた才人なだけに、今回も吉永小百合の庶民的な可愛らしさ、天海祐希の宝塚男役的ダンディズムの中の“女”性を巧みに抽出し、同性から憧れられるようなキャラクターを構築し得ています。

またサユリストにとってちょっと嬉しいのは、今回の吉永小百合の夫役が前川清という意外なキャスティング! 「内山田洋とクールファイブ」のヴォーカルとしてのさっそうとした面はともかく、バラエティ番組などでのコミカルな三枚目イメージが強かった彼だけに、このキャスティングは大いにサユリストを嫉妬&夢を抱かせてくれるのではないでしょうか?

吉永小百合の名曲《いつでも夢を》ではありませんが、やはり吉永小百合にはどこか夢心地のよい作品が似合う気がします。その意味でも今回は死をモチーフにしながらもあくまでも“いつまでも夢を”といった想いが最後の最後まで貫かれています(その点でもムロツヨシのキャラクターにご注目を!)。

エンドタイトルに響き渡る竹内まりあの主題歌が実に似合う吉永小百合・主演のスター映画、壮年世代はもとより、10代など若い世代もおじいちゃんおばあちゃんを誘って見に行かれてはいかがでしょうか。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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