2017年03月09日

映画『しゃぼん玉』の原作者・乃南アサ作品に迫る

映画『しゃぼん玉』の原作者・乃南アサ作品に迫る



(C)2016「しゃぼん玉」製作委員会


3月4日より公開となった映画『しゃぼん玉』。林遣都さん主演、市原悦子さんや、藤井美菜さんらが出演しています。この映画の原作となったのが、作家・乃南アサさんの同名小説「しゃぼん玉」です。

今回は、乃南アサさんの小説が原作として映像化された作品と映画『しゃぼん玉』をご紹介します。

『ジューンブライド 6月19日の花嫁』(1998)


1991年に出版された「6月19日の花嫁」が原作となって映画化されました。映画は1998年に公開、富田靖子さん主演、椎名桔平さんや野村宏伸さんらが出演しました。

結婚式を控えた主人公・千尋が事故に遭い、記憶を失ってしまいます。目が覚めてからは記憶を取り戻すため自分探しを始める千尋ですが、記憶がないため出会う人みなが初対面。その中でも「結婚」という言葉には身体が反応してしまうのでした。

このキーワードをもとに、少しずつ千尋の過去が明らかになっていきますが、そこには向き合いたくない壮絶な過去が。過去の人間関係が複雑に絡み合っていることに気づいたころ、招待不明の何者かに命まで狙われそうになります。それを救ったのが、結婚相手だった前田(椎名桔平)です。

千尋の元恋人が亡くなっていることなど、新たな事実を知った千尋に、前田は改めて求婚しますが、拒否されてしまい、逃げられてしまいます。

千尋が逃げた先には、自分が主役をやるはずだった舞台「結婚オンザロック」の劇場。再び舞台に立とうと練習を始めた千尋ですが、千尋を見つけた前田は、練習中で花嫁姿の千尋にもう一度を求婚し、舞台が結婚式に変わるのでした。

『女神のかかと』(2005)


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『永い言い訳』や『ディア・ドクター』などを手がけた西川美和さんが監督をし、映画化
された作品です。本編は20分ほどで短編の映画になっており、主演を大塚寧々さんが務めました。

原作は、2004年に出版された「female」の中の一編、「僕が受験に成功したわけ」です。

小学5年生の奈月がボーイフレンドの真吾と家に帰ったら、真吾は奈月の母の、女性らしさに惹かれてしまうのです。奈月の母に心を奪われた真吾は、成績もがた落ちしました。奈月の母も、真吾の気持ちに気づき、スカートを履いて裾をなびかせたりと誘惑します。

しかし、奈月と母は父親のいるアメリカに急きょ帰ることになり、真吾とは会うことができなくなりました。それで、原作のタイトルにあるように、受験に成功したのでした。

『凍える牙』(2012)


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韓国で製作・公開されました。原作は「女刑事・音道貴子シリーズ」の初巻として1996年に出版された同名小説です。乃南アサさんは、この小説で直木賞を受賞されています。

日本では、2001年には天海祐希さん主演、2010年には木村文乃さん主演でドラマ化されています。

映画では、韓国が舞台になっているのでそのストーリーをご紹介します。
(あらすじは同じです)

中年の男性刑事と、若い女性刑事二人が、ソウルで発見された謎の焼死体の事件を追い、謎を解いていきます。この焼死体は、大型犬(狼)に噛まれた痕跡があるとして、それが死因と断定されました。その次に発生した事件でも、大型犬に噛まれて死亡。しかも、焼死体の人物とは知人同士でした。ふたりとも麻薬や未成年売買春などの前科があり、連続事件性があるとして刑事二人が真相を追います。

新たな被害者を出しましたが、口封じのために殺されたのではないかと警察犬の元トレーナーを容疑者としてあぶり出します。狼犬を殺人の道具に使った猟奇性のある事件ですが、それを追う刑事ふたりの過去も明らかになり、結末では犯人と狼に同情する女刑事の心情も描かれています。

ここまで、それぞれのストーリーを紹介してみると、過去に闇や失敗を抱えた登場人物が頻繁に描かれていることがわかります。

乃南アサさんの作品では、作品の途中で過去をあぶり出していくことで、観ている人や読者自身の過去を見つめ直すきっかけを与えてくれます。

しかし、過去を振り返ることでその苦味を思い出すだけでなく、作品の最後には救いがあります。
心が疲れていても、作品に触れると自然とその世界観に浸ることができるのが魅力です。

公開中『しゃぼん玉』




(C)2016「しゃぼん玉」製作委員会


3月4日より公開されましたが、すでに公開が始まっているのは関東地方と作品の舞台になった宮城県のみです。
その他の地方・地域では3月下旬から4月にかけて公開が予定されています。

劇場情報はこちら

伊豆見(林遣都)は、人を刺し逃亡中に迷い込んだ山で倒れたバイクを見つけます。そこで声をかけられたのが、そのバイクに乗っていたであろう老婆のスマ(市原悦子)。
それがきっかけで、スマの家に寝泊まりするように。近くの住民は、スマの孫だと勘違いし伊豆見を可愛がります。

伊豆見は親の愛情を知らず、これまで女性や老人だけを狙って通り魔や強盗などを繰り返しており、スマの家でもお金を盗んで逃げるつもりだったのが、寝泊まりをして山の仕事や町の行事に参加しているうちに少しずつ心の変化が起き……。

自分の人生をもう一度やり直したいと思い、奮闘する青年が主人公の映画になっています。

主演の林遣都さんは、現在放送中の朝ドラ「べっぴんさん」でも親との確執を抱えた青年を演じていましたが、その繊細さと、プロのドラマーを目指している設定から、力強いドラム演奏のシーンは引き込まれました。
ほかにも、NHKで放送中のNetflixのドラマ「火花」でも主演を務めるなど様々な作品に出演されています。

そして、林遣都さんを含め、作品のヒロインとして登場する藤井美菜さん、主題歌を担当した秦基博さんはそれぞれデビュー10周年なのだそうです。3人の作品での活躍にも期待できます。

年度末で忙しい日々が続きますが、心に栄養を与えたいとき、安らぐ時間を持ちたい時、ぜひ映画『しゃぼん玉』はじめ乃南アサさんの作品に触れてみてください!

(文:kamito努)

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