賛否両論の『最後のジェダイ』こそSW史上最高傑作!吹替版で鑑賞すべき理由とは?

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昨年末に公開され高い評価を得た『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に続き、また今年もスター・ウォーズの新作公開の季節がやって来た。しかも今年はスピンオフ作品ではなく、紛れも無い正統な続編の公開!

予告編に含まれた情報量の多さと、怒濤の展開を予感させるその映像に公開前から期待は膨らむばかり。そんな想いの方々も多いはずの本作を、今回は公開二日目の土曜日深夜25時代の回で鑑賞してみた。場所は新宿歌舞伎町の映画館。

いつもと違う環境でのスター・ウォーズ鑑賞となった今回だが、果たしてその結果はどうだったのか?

*ストーリー概要は、あえて伏せさせて頂きます。

予告編

シリーズ最長の上映時間もあっという間!
賛否両論の本作が描きたかった物とは?

取りあえず今回の予告編から推測出来るのは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で倒れたフィンが復活し、あのキャプテン・ファズマと直接対決する!ということ。更にレイア姫の登場や、謎のボスキャラであるスノークがついに姿を現すこと。そして予告編のラストで描かれていた、レイとカイロ・レンとの接近?の行方など、実に盛りだくさん!なるほど、これだけの内容であれば、今回上映時間がシリーズ最長となったのも確かに納得出来ると言うものだ。

しかし、意外にも本作の冒頭で観客が目にするのは、反乱軍側の余りに大き過ぎる戦闘の被害と、多数の犠牲者の姿。そう、名も無き脇役たちが明日への希望のため、そして仲間を救うために払う自己犠牲の連続と、どんどん劣勢に立たされる反乱軍の姿だったのだ・・・。

一見昨年公開されて高評価を得た『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の世界観を踏襲したかの様に見える今回の展開、実は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の真逆を行くものであることが、次第に観客に分かってくる。戦争における末端の名も無き兵士たちの自己犠牲と死を英雄として美化していた『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に対して、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のテーマは「きらびやかなヒーローと戦闘における自己犠牲美化の否定」。

それは本作の中でも、「生き残るのが使命。後の人々への希望の光を絶やさない、そのための火花となる」のセリフとして登場するほど徹底されている。

例えば、映画冒頭の爆撃作戦で出た多大な被害と戦死者に目を向けず、「でも、英雄も生まれただろ」としか捉えられないダメロンが、女性艦長の想いと深い考えの末の行動により自らの過ちに気づき、最後は味方の犠牲を防ぐ為に「作戦中止、退却」の命令を選択させるほどに成長する!この描写も英雄的行為=戦死の否定と、人は失敗から学ぶ=過ちはやり直せる、という本作のテーマを見事に表現する物だし、その攻撃に参加したフィンが、反乱軍のために自分を犠牲にしようとしたところをある人物に阻止され、「大事な人を守り救うのが愛だ」と初めて教えられるシーンも、次回作への重要な伏線となっている気がしてならない。

正義が悪と戦って倒して勝つ、そんな勧善懲悪の物語に深い人間ドラマと哲学を持ち込んだ『スター・ウォーズ』。
そう、その精神は確かにこの『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』にも受け継がれているのだ!

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華やかなヒーローや選ばれた特別な存在を否定し、しかも名も無き兵士の死を英雄として美化しない本作のスタンス。これこそ正にルークやジェダイという偶像を破壊し、そこから再構築しようとする本作の志の高さであり、その点は絶対に評価すべき!

つまり、もはやジェダイであるかないか?その血縁や出生によってフォースの有る無しは左右されないのだ。

思えばこれは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でフィンがライトセイバーを使っていた時点で既に暗示されていた物であり、実際作品中でも、フォースやジェダイに対する固定観念やイメージを全否定することで、それが限られたファンやマニアが独占するものでは無く、本来一般観客が自由に楽しめる物であると再認識させてくれる本作。
思えば、いつの間にか鑑賞に多くの予備知識が必要となってしまい、新たな観客層の参加が難しくなってしまっていた、『スター・ウォーズ』シリーズ。これを再びリセットし直し、より多くの観客と共に『スター・ウォーズ/エピソード9(仮)』の完結を迎えようとする、そのための橋渡しとしての役割こそが、この『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』なのだ!

そう考えれば、本作に賛否両論の意見が出るのは当然のことであり、『スター・ウォーズ/エピソード9(仮)』公開後にこそ、本作の真の評価と素晴らしさが観客に広く理解されるのは間違いない。

『スター・ウォーズ』シリーズは、今までどうしてもハードルが高くて手が出せなかったという方、今こそ参加する最大のチャンスなので、是非劇場へ!

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賛否が真っ二つに分かれる本作、
より楽しむなら吹替版がオススメ!

非常に賛否が分かれている、この『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』。正直初見で字幕版を見た感想は、ネットの否定的意見とほぼ同様の物であり、幾つかのシーンに関しては未だに失敗だと思っているのも事実。

だが翌日、日本語吹替版で鑑賞し直したお陰で、字幕から開放されより細かい部分を注意して見る事が出来たため、2回目の鑑賞で本作への評価は格段に上がった。
確かに今回、予告編やテレビスポットから想像される様な内容にはなっていない本作。そのため、劇場で見て「想像と違う!」と感じた観客がかなり多かったことも、今回の否定的意見の原因となっている様だ。

しかも今回は、予告編に登場しない重要なサブキャラの登場もあって、その特定のキャストへのディスや拒否反応が目立っている。

ただ、今回の吹き替え版のクオリティは非常に高く、特にレイア姫の吹き替えが最高!

更に、非常に多くの方が不満を持たれていた新キャラも、日本語吹き替え版では声優の演技力のお陰もあり、字幕版よりも遙かに違和感が無く魅力が倍増する!

本作で印象的なコメディ要素のシーンも、吹替版の方が微妙なニュアンスが判って笑えるし、字幕版とは真逆の意味になっているセリフがあったり、ルークがカイロ・レンに「また会おう」と言っているなど、字幕版を見た人だからこそより楽しめる趣向が満載のこの吹替版!

氾濫する否定的意見に惑わされず、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を本当に楽しみたいなら、日本語吹替版での鑑賞がオススメです!

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本作が描こうとした物、そしてラストに込められた想いとは何だったのか?

前述した通り、過去の『スター・ウォーズ』シリーズの予定調和を全てぶち壊す本作だが、実はその基本部分では『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を忠実に踏襲しており、正に『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』オマージュ満載の作品となっている。

例えば、三角関係や恋愛要素の導入、修行中のダークサイドへの誘惑と修行途中の離脱、前作での勝利から一転して劣勢に立たされている反乱軍から始まる、など。
(個人的には、ダメロンの階級が『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のルークと同じ中佐だったのが印象的だったが)

だが、監督のインタビューでも語られている通り、本作では意図的に『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』とは真逆の展開が取られており、観客の予想を大きく裏切る展開が結果的に今回の賛否両論の原因となってしまった訳だ。

しかし、ここまで『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』の展開を踏襲しながら、あえて真逆の描き方で観客に挑戦するその志の高さは評価するべきだろう。確かに初見では違和感や不満を感じるかも知れないが、2度3度と繰り返し鑑賞すれば、本作で描かれているのが100%純正の「スター・ウォーズ精神」であることが、きっと分かってくるはずだ!

とは言うものの、正直自分も中盤まではネットでの否定評の様に、「あ、今回はダメだ」との想いが強かった本作。だが、その考えは映画が終盤に近づくに連れて、次第に覆されて行くことになった。

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そう、その理由の全ては、実は本作のラストシーンにこそある。
このエンドクレジット直前の2〜3分のシーン。本編の主要登場人物がいっさい登場しない上に、英語のセリフさえ無いこの2〜3分の短いシーンこそが、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の重要なテーマであり、しかもそれは40年前にスクリーンで見た『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』が、何故あれほど当時の我々の心に響いたか?の答えでもあるのだ。

思えば『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の中で、『スター・ウォーズ』の本質を現す屈指の名シーンと言えば、何と言ってもパイロットへの夢を叶えられずにいるルークが、遠くに沈みゆく二つの夕陽を見つめるというシーンが挙げられる。

実はそれは本作においても、一人夕日を見つめるルークの姿と、故郷のタトウィーンの様に太陽が2つに見えるカットとして再現されている。
どんなに今過酷な状況にあろうとも、人は空を見上げて夢を見ずにはいられない、というこの普遍的な『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のテーマを、本作のラストで再現するこの名も無き少年の姿こそ、少年時代に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』に巡り合えた我々の姿に他ならない。

この少年の姿とその前のシーンで夕日を見つめるルークの姿が重なっていることに気が付いた時、きっと貴方も40年に渡って語り継がれてきた「スター・ウォーズ伝説」が、確実に次世代の子供たち、それも生まれや血筋に囚われないすべての子供たちに受け継がれたことを、実感出来るはずだ。この新たな「スター・ウォーズ伝説」誕生の瞬間を、是非劇場で体験して頂ければと思う。

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最後に

早くも、次の作品が完結編となる新三部作。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、と『スター・ウォーズ/エピソード9(仮)』を繋ぐ重要な要として、この『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は見事にその大役を果たしたと断言出来る。
もちろん本作にも、どう考えても弁護出来ないほど妙なシーンがあるのも事実。
(ある登場人物の宇宙空間での「江田島平八」化!は、その最たる物だろう)

ただ、全てのフォーマットを破壊し、また新たなスター・ウォーズ神話を構築しようとする過渡期の作品として考えれば、この様な描写も果敢に挑戦した試行錯誤の結果として、好意的に受け止めるべきなのかも?

果たして、本作で明らかになった謎や新たな人間関係、そして次回遂に迎える完結編への引きは、どの様な形でフィナーレを迎えるのだろうか?おそらく、最終作『スター・ウォーズ/エピソード9(仮)』の公開後に、本作の本当の価値と意味が明らかになるはずだ。

今までのお約束や設定を破壊しながらも、その根底にある「スター・ウォーズ精神」は残して、最高のラストシーンとして直球で投げ込んで来るのが見事過ぎる本作!

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を公開当時見た方も、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』から見た人も、皆平等に楽しめるのが今回の新三部作だと判明した今こそ、迷わず劇場に足を運ぶのがオススメです!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

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    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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