映画コラム

REGULAR

2017年08月08日

これを観なければ始まらない!『トランスフォーマー』1作目の魅力を語り尽くす!

これを観なければ始まらない!『トランスフォーマー』1作目の魅力を語り尽くす!

■「映画音楽の世界」





マイケル・ベイという名は、映画監督の名前であると同時に1つのジャンルの名前でもある。名プロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーとドン・シンプソンによって見いだされ、『バッドボーイズ』で長編監督デビュー。

卓越したアクション演出を見せ、主演のウィル・スミスとともにいきなりその名を映画界に轟かせた。以降、『アルマゲドン』や『パールハーバー』など、作品を重ねるごとに物語の規模と爆発の火薬量が増加。いつしか「爆破バカ一代」と呼ばれるようになり、興行収入とは反比例して賞レースにはラジー賞を除いて無縁、批評家からは叩かれる監督としての地位を築き上げた。この時点で、信頼できる監督だということが分かる。

スピルバーグも認める男、マイケル・ベイ


ブラッカイマーのもとを離れたベイに手を差し伸べたのが、スティーヴン・スピルバーグだった。ベイはスピルバーグ傘下のドリームワークスで『アイランド』を監督したが、しかしベイにとって初の興行的失敗作に。それでも、スピルバーグはベイを見放さなかった。「この作品は、君にしか撮れない」。そう言ってベイを指名したのが、日本発の玩具を実写映画化する『トランスフォーマー』だった。

トランスフォーマー (字幕版)



「おもちゃの映画なんて」とベイは当初難色を示したそうだ。それでも、車からロボットへと姿を変える玩具にインスピレーションを受けたことから監督を受諾。最先端の映像技術で、車からロボット、ロボットから車へと変身する驚異のビジュアルが公開前から話題となり、そして公開を迎える。

驚異の映像革命と丁寧なストーリー展開


「なんだこれクッソ面白いじゃないか!」。

初見時の筆者の率直な感想である。いや、個人的にはマイケル・ベイ作品は「どれも面白い」と思っているようなタイプなので、いつも通りと言えばいつも通りなのだが、今回の「面白い」は“映画そのもの”としての意味が当てはまるのだ。「おかしい、いつものマイケル・ベイと違うぞ」、と。



もちろんILMによるトランスフォームシーンは映像革命として映画史に残るものといっても過言ではない迫力があった。いつものベイならば“それ止まり”(あと爆発)なのだが、しかしそれだけでなく、ストーリーテリングとしてもしっかりとトランスフォーマーたちの存在、起源、対立の要因をしっかりと描いている。さらにシャイア・ラブーフ演じるサムとトランスフォーマーたちの友情物語であり、サムの成長の物語でもある。さまざまなエピソードパートが寄り集まりながら1本の芯となって、物語を“密”にしているのだ。

そこにベイがもともと持っているビジュアルセンスが加わるわけで、1フレームに収まった情報量の多さがこれまでのマイケル・ベイ作品と比べて、明らかに質を伴う作品となっている。凄いぞ、マイケル・ベイ!

全編に溢れるポップスロックとヒロイックな音楽


ベイはミュージックビデオ監督出身でもあるので、以前からポップス的な音楽センスにも長けていた。本作では主題歌にリンキンパークを起用。エッジの効いたロック・サウンドがロボットアクション映画を引き締めた。さらにグー・グー・ドールズやミュートマスの楽曲に加え、バンブルビーが意地を見せる場面では布袋寅泰の『仁義なき戦い』テーマ曲を使用するなど、音楽のタイミングも絶妙。

トランスフォーマー・オリジナル・サウンドトラック



今やシリーズ全作を手掛けているスティーヴ・ジャブロンスキーが響かせたスコアの方も、さすがハンス・ジマー直系の作曲家らしくとにかく熱い。スコルポノック戦やオプティマスたちの地球到着シーン、ラストバトルはアドレナリンをこれでもかと絞り出し、滾りようといったらない。要は、音楽も一つのピースとしてしっかりと映画にフィットして機能しているのだ。

話は戻るが、スピルバーグの見事な読み通りこれほどの情報量を必要とした映画はベイでなければ撮ることはできなかった。“つかみ”となる最初のトランスフォーム、ヘリコプターからブラックアウトへと変身する姿は映画好きの中に宿る少年少女の心を一気にわしづかみにした。金属音と電子的な音を立てるトランスフォーム時の音響効果もまた妙に心地良い。

個人的には地雷除去車=ボーンクラッシャー対オプティマス戦を推したい。ハイウェイを走る地雷除去車を追うようにカメラが追随、車の底を潜り抜け振り返るとボーンクラッシャーに変身完了しているという一連の流れをワンカットで見せるという、ある種変態的とも言えるベイのアングルは凄まじい。続けてオプティマスも走行中にトレーラーからトランスフォーム、勢い余って着地した瞬間にアス ファルトを削りまくるという芸の細かさ。何もかもが上手い。ラストの圧巻のロボット抗争まで、とにかく「あの日あの頃ロボット玩具で遊んだ」童心を掴んだまま、一切放すことはなく駆け抜けていくので息つく暇もない。

まとめ


シャイア・ラブーフ、ミーガン・フォックスのフレッシュなコンビに加え、ジョシュ・デュアメル、タイリース・ギブソンらの奮闘ぶり、ジョン・タトゥーロや名優ジョン・ヴォイトの存在感が輝く。ロボットたちの魅力的なキャラ立ても良い。

米軍も協力してリアリティの増した戦闘描写。これらすべてをきっちりと一本の映画に収めてしまったマイケル・ベイ。本当に凄いぞ、マイケル・ベイ! これほどまでにスマートで、熱く、全てのピースががっちりと合わさったベイ作品は今までなかった。賞に無縁でもいい。

『トランスフォーマー』はそれでも映画史に燦然と輝く作品に変わりはないのだから。

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(文:葦見川和哉)

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