『トイ・ストーリー3』の結末等に納得できない方へ

(c) Disney/ Pixar

本日3月23日、金曜ロードShow!にて『トイ・ストーリー3』が放送されます。

前作『トイ・ストーリー2』からおよそ11年を経て世に送り出されたこともあり、映像技術は格段に進化、持ち主が大人になってしまって忘れられつつあるおもちゃたちの悲哀が強調された物語、“脱獄アクション”の面白さも相まって、公開当時から絶賛の嵐で迎えられていました。今でもピクサー映画史上NO.1の呼び声も高く、まさに名作という言葉がふさわしい完成度を誇っています。

しかしながら、ある2つの点について、本作には否定的な意見もよく見られます。それは、悪役の辿る結末に納得がいかないということと、前2作に登場したボー・ピープというキャラクターがいなくなってしまったことです。ここでは、その2つの点に納得がいかなかったという方に向けた解釈をまとめてみます。

※以下からは『トイ・ストーリー3』の大きめのネタバレに触れています。鑑賞後に読むことをオススメします。

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1:悪役の辿る結末に納得できる理由とは?

ピンク色のクマのぬいぐるみのロッツォ・ハグベアは、保育園に寄付されたおもちゃたちを指揮する優しいリーダー……に見えましたが、その本性は独裁者そのもの。新入りのおもちゃたちを粗暴な年少者の集まりである“イモムシ組”の相手にさせ、囚人のように牢屋に入れるばかりか、「我々に絶えられない苦難を新しく強いおもちゃに引き受けてもらうんだ」とも言い放つ、差別主義的な考えをも持っていました。

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そんなロッツォは、手違いで置き去りにされ、やっとのことで家にたどり着いたものの、持ち主のデイジーが代わりのロッツォをかわいがっていることを見たために性格が歪んでしまった……という悲しい過去を持っていました。同情すべきところもあるのですから、彼がダークサイドに堕ちたまま救われないことに、居心地の悪さを覚える方もいるのも致し方のないことでしょう。

しかしながら、筆者はロッツォの辿る結末に納得しています。なぜなら、作中では何回も“改心できたはずの瞬間”があったのに、彼はその時の選択を間違えてしまっていたからです。

その1つは、ウッディから“デイジーから愛されていた証拠(「いつもいっしょだよ、デイジー」と書かれていたハート)”を見せられた時です。しかし、ロッツォはその証拠を、(自身と同じように捨てられたと騙していた)ビッグ・ベビーの目の前で壊してしまいました。

もう1つは、焼却炉にあった停止ボタンを押さなかった時です。その直前、ウッディとバズの決死の行動によりロッツォはバラバラにされずにすんだのに……ロッツォは、自身の命という一番大切なものを救ってくれたウッディとバズたちをも、見捨てていたのです。

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そもそも、持ち主のデイジーから必要とされなくなったというのも、ロッツォの勝手な思い込みにすぎません。考えてみれば、デイジーが代わりのロッツォを手に入れたということは、そこまでの思い入れが彼にあったということ。ロッツォが愛されていた証拠そのものとも言えるのに……。(しかも、一緒に手違いで置き去りにされたチャックルズとビッグ・ベビーの代わりをデイジーは手に入れていません。ロッツォだけがデイジーの“特別”であったこともわかります)

何より、ロッツォの邪悪なところは、自身が勝手に考えた歪んだ価値観を、他のおもちゃたちにも当てはめていたことです。一緒に置き去りにされたチャックルズには「俺たちみんな代わりなんだ」と耳を貸すことはなく、ビッグ・ベビーにも「お前なんて好きじゃないんだ」と勝手に言い放ち、果てはウッディたちには「俺たちはいつかみんな捨てられるゴミだ、それがおもちゃなんだ」とも告げていたのですから。ロッツォがケンに「彼女はバービー人形だ、同じものはごまんとあるんだぞ!」というのも、“代わり”がいたことに絶望した自身のトラウマの“当てこすり”にすぎません。

そんな風におもちゃを“どうせみんなゴミ”と画一的に見ているはずのロッツォが、そのおもちゃたちを階級的に分けて差別しているというのも矛盾しています。彼は自身が定めた価値観と都合しか見ておらず、他の誰かの意見など聞く耳を持たなかったのです。

いくつかの“改心できたはずの瞬間”で選択を間違え、そのくせ周りをも巻き込んで不幸にしてきたロッツォは、もはや救いようがありません。ウッディが「ほっときゃいいさ、復讐する価値もない」と言ったのもごもっとも。こんなやつを相手にしたところで、何の得もないですよね。

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また、ロッツォが辿る結末は、ゴミ収集車のフロントにくっつけられたまま走られるという、完全に希望が失われているものではないということもポイントです。ゴミ回収業車の男に「このぬいぐるみ、ガキのころ持っていたんだ!イチゴの匂いがする!」と、(雑に扱われたとしても)一応は愛されるかもしれない希望もあることも言われていましたしね。少なくとも、ウッディやバズたちが焼却炉で覚悟した“死”という絶望にくらべれば、大した罰とは言えないでしょう。

余談ですが、そんな風に“愛されていたことを信じられなかった”ロッツォがウッディやバズたちを見捨てたのに対して、“クレーンのアームを神様だと盲目的に信じていた”リトルグリーンメンたちがウッディやバズたちを救うというのもおもしろいですよね。信じることは、時には誰かを助けることにもつながるのかもしれません。

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2:ボー・ピープがリストラされてしまった理由は“陶器でできていたから”だった!

ボー・ピープはランプの飾りの羊飼い人形で、『トイ・ストーリー』前2作ではウッディと相思相愛のヒロインでした。ところが今回のボー・ピープは、ペンギンのウィージー、似顔絵が得意なスケッチと共に、「新しい持ち主の元へ行った」という事実がウッディから悲しげに語られたのみ。姿を表すことは結局ありませんでした。彼女のことが好きであったファンにとっては、納得がいかないでしょう。

そんなボー・ピープが今回不在であった理由は、実は物語上の都合によるものだったようです。具体的には、「ボー・ピープは陶器で作られているので、焼却炉での激しいアクションで生き残ることに説得力がなくなってしまう」ことが理由でオミットされてしまったのだとか。確かに、割れやすい陶器の体のボー・ピープは、イモムシ組の子供たちの遊びにすら耐えられなさそうですよね。

また、本作ではバービー人形が大活躍することも重要です。実は『トイ・ストーリー』1作目の時点でもバービーへの出演依頼があったのですが、マテル社は「映画独自の性格をバービーにつけてしまうと、子供たちが自由に想像できなくなる」という懸念があったために断っていたのだとか。(ハスブロ社からもG.I.ジョーの出演を断われていたそうです)

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しかし、『トイ・ストーリー』の2作が大ヒットしたこともあり、ついにマテル社もバービーの出演を許可しました。ひょっとすると、やっとの思いで出演許可を得たバービーを目立たせるためにも、ボー・ピープの活躍を断念せざるを得なかった、ということもあるのかもしれません(こちらは筆者の勝手な想像にすぎませんが)。

そのバービーが、恋心があったにも関わらず裏切ったケンに“服を次々に破いていく拷問”を仕掛けたり、独裁者のロッツォに対して「権力は脅しではなく、統治される者からの同意から生まれるべきよ!」というド正論を吐くのは痛快愉快ですよね。ボー・ピープの優しく穏やかなキャラでは、こうはならなかったでしょう。ボー・ピープのリストラはどうしても残念なところもありますが、バービーの魅力のおかげで少しは納得できるような気もします。

そして、ボー・ピープファンの皆さんに朗報があります。実は、2019年6月21日にアメリカでの公開が予定されている続編『トイ・ストーリー4』の物語は、ウッディとボー・ピープのラブストーリーになると報道されているのです! その詳細はまだ明かされてはいませんが、再びボー・ピープの活躍が観られる日を、楽しみに待とうではありませんか!

おまけ:お母さんに共感できるシーンが大好きだ!

最後に、筆者が何度観ても感動してしまう、お気に入りのシーンを紹介します。

それは、お母さんがこれから大学に行ってしまうアンディに対し「ずっと一緒にいられたらいいのに」と言いながら抱きしめるシーン。それは、おもちゃたちがこれまで思ってきた気持ちと同じ。母親の気持ちに、母親でなくとも共感できるのです。お母さんがダンボールだけが残された部屋を見て切ない表情になることが、序盤の賑やかなビデオ映像と“対”になっていることも上手い!

涙腺決壊必至のクライマックスはいうにおよばず。アンディが“覚えていないころからの友だち”だったウッディを渡す時にだけ、ためらいの表情を浮かべることも含め……これほどまでに感動的な“別れ”が描かれた映画も、なかなかないでしょう

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なお、『トイ・ストーリー3』には“序盤で出てきたゴミ収集車の運転手は1作目の悪役であったシド(ドクロ柄のシャツを着ていることや原語版の声優が一致)”や“『となりのトトロ』のトトロがチラッと友情出演している”などの小ネタもたくさん隠されています。ぜひ繰り返し観て、さらなる魅力を探してみてください!

(文:ヒナタカ)

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    ヒナタカ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」運営中のフリーライター。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。なぜか中高生向けの恋愛映画もよく観ています。

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