初めてTSUTAYAでレンタルした作品は何ですか?

中学生になって学生証が配られたとき、俺はクラスの中で誰よりも興奮していた。

「自分だけの会員証を作ってTSUTAYAでレンタルできる!」

と。

それまでは親と一緒にTSUTAYAに行き、親の選んだ作品に混ぜてもらってレンタルしていたのだが、それが、自分ひとりで完結できることに興奮していたのだ。

なんと言うか、大人の階段を上った気になっていた。生まれてはじめての身分証明証。厳密に言えば保険証があったわけだが、写真付きのものはこれが初めてである。

「ついに、ついに手に入れたぞ、俺はこれでTSUTAYAの会員証を作るんだ」と強く思ったことを今でも覚えている。配布されたその日のうちにTSUTAYAに寄り道し、入会申込書に記入し(はじめてなのでめちゃくちゃ時間がかかった)、まさかの入会金に驚き、しかしなんとか小遣いが足りたあの日のことを。

そんな俺が最初にレンタルした作品は、エディ・マーフィの『大逆転』だった。

大逆転 (字幕版)

ストーリーは、とある金持ち兄弟が、エリートとホームレスの立場が入れ替わったらどんな結果になるかを賭けるという話。兄弟の金持ちパワーでエディ・マーフィ演じるホームレスが一夜にしてエリート会社員の立場に、逆にダン・エイクロイド演じるエリート会社員がホームレスになってしまう。生まれは関係ない、結局は環境なんだ、いや、本人の器量で何でも叶うはずだ。どっちが正しいか勝負だ…的な展開。

当時はYouTubeなんてないから、ジャケットの裏に書かれたあらずじだけが唯一の情報。このあらすじを知ってから、ずっとずっと見たかった。絶対この作品はおもしろいと確信していたのだ。だがしかし、簡単にはレンタルできない理由があった。

なぜなら、パッケージの裏面でヒロインのジェイミー・リー・カーティスがおっぱいを強調した服を着ていたり、TSUTAYA店員の手書きポップで「ポロリもあります」と余計な書き込みがあり、親と一緒だと借りにくさMAXだったのだ。

で、これが、やっと、何も気にすることなく、大手を振って、断固たる決意をもってレンタルできるようになったのだ。

おっぱりポロリがなんぼのもんじゃい!

「おれは、『大逆転』を借りるぞ! ジョジョーーッ!!!」

と言ったかどうかまでは覚えてないが、確実にレンタルしたことは覚えている。そしてもちろん作品は素晴らしく、最高に気持ちのいいラストが待っていた。(実際のところ、TSUTAYA店員による「ポロリもあるよ」に間違いはなく、しっかりと堪能(リピート再生)させてもらった。)

中学生の多感な時期にこの作品と出会えて本当に良かったと心から思ったし、学生証が手に入ったのもすべて運命だったのだと感じたほどだった。

みなさんにもこんな経験ありますよね? えっ? ない!?

いえ、忘れているだけだと思います。なぜなら私は大学に進学してTSUTAYAでアルバイトを始め、いくつも同じ状況を見てきましたから。

TSUTAYAで追体験した大人の階段

TSUTAYAでアルバイトをしていると、学生証を持って入会申し込みにくる中学生、高校生にたくさん会います。これまでは親と一緒に来店していたはずなのに。

「あ、この子はいま、大人の階段を上ろうとしている…。」

そう感じて私は自分ごとのようにドキドキしたことを覚えています。自分の会員証で、一体なにをレンタルするのか。初めての作品は君にどんな影響を与えてくれるのかと。

そして、そんな子が、当時レンタル開始されたばかりの超大作である『インディペンデンス・デイ』や『もののけ姫』ではなく、ウィノナ・ライダーの『リアリティ・バイツ』とかをレジに持ってくるわけですよ!

リアリティー・バイツ (字幕版)

別の高校生は椎名林檎の『ここでキスして。』のCDを持ってくるわけですよ!!!

ここでキスして。

うぉおおおお!!!!
わかる、わかるぞその気持ちぃいいいい!!!!

ウィノナ・ライダーの『リアリティ・バイツ』なんて青春映画まっ正面のぶっ刺さり系は親と一緒には持ってこれないよな。憧れ感というか、「思春期です私は!」って親に宣言するみたいで無理だよな。でも自分の会員証なら関係ないもんな。

椎名林檎の『ここでキスして。』なんて、最高の名曲だけど親はタイトルだけで判断しそうだし、そもそも「キスしたいの?」とか思われるとか考えたくもないよな。

もっと言えば、親と来たときと違って、自分のお小遣いでレンタルするんだもんな。絶対に失敗したくない感もあって超吟味するよね。

ああああ、マジで本当にいいの持ってきたよ。間違いない。うん、一刻も早く帰宅してすぐに再生するんだぞと。レジを最速で終わらせて見送りましたよ、私は。

どうですか。思い出しました?

相手がいるわけでもなく、自分だけの甘酸っぱい思い出。いつまでも大事にしたいし、絶対に忘れたくないですよね。いつだって、どんなときだって、作品とは一期一会ですから。

初めての会員証でレンタルした作品は何ですか?

大人になったいま、改めて見てみると、当時の思い出が蘇ると思いますよ。ぜひおすすめします。それではまた。映画カタリストのゆうせいでした。

(文:ゆうせい)

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    ライタープロフィール

    ゆうせい

    ゆうせい

    人生のいろはを映画から学ぶ男。悪に鉄槌を下す映画が大好物であり、胸がかきむしられる映画に影響を受けやすい。いつか映画館で前後左右の席も買って、映画に心から没入したいと思っている。

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