傑作『ストリート・オブ・ファイヤー』が再上映!あの主題歌も登場する幻の続編とは?



(C)1984 Universal Studios. All Rights Reserved. 



今から34年前、その素晴らし過ぎる楽曲とラブストーリー、そして男同士の対決という盛りだくさんの内容で、当時の若者の心を掴んで離さなかった一本の映画があった。本国アメリカよりも、何故か日本で熱狂的に受け入れられ、未だに多くのファンの記憶に残るその作品こそ、現在絶賛リバイバル上映中の映画『ストリート・オブ・ファイヤー』!

個人的にも思い出の映画である本作を、今回は公開初日夜の回で鑑賞してきた。

実は1984年の日本公開時には、銀座のホール試写会で鑑賞しているため、恥ずかしながら初の劇場鑑賞となった今回のリバイバル上映。しかも上映劇場が、シネマート新宿でも332席の大きな方のスクリーンとくれば、これはもう鑑賞前から既に観客のテンションも上がろうというもの。

今回実に34年の時を越えて大スクリーンで再会した本作だが、果たしてその印象と面白さは昔のままだったのか?

ストーリー


ロック歌手のエレン(ダイアン・レイン)が地元凱旋ライブ中にストリートギャング"ボンバーズ"に誘拐された。姉リヴァ(デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ)から連絡を受け久々に街に戻ってきた流れ者のトム・コーディ(マイケル・パレ)は、偶然出会った陸軍あがりの女兵士マッコイ(エイミー・マディガン)、エレンのマネージャーを務めるビリー(リック・モラニス)とともにボンバーズのアジトを急襲、エレンを救い出した。

トムとエレンはかつて恋人同士だったが、彼女のキャリアを優先するため苦い別れ方をした仲だった。

面目を潰されたボンバーズのボス、レイブン(ウィレム・デフォー)はトムに決闘を申し込み、街に仲間とともになだれ込んでくる。レイブンとトムの一騎討ちの死闘。果たして、二人の壮絶な対決の行方は?(公式サイトより)


予告編


OPとラストのライブシーンは迫力満点!


黒い背景にタイトルが登場し、続いて「ロックンロールの寓話」と字幕が出た時点で、我々観客の心を瞬時に34年前に戻してくれる本作。

続いて始まるOPのライブシーン!ここで演奏されるのが伝説の主題歌二曲の内の一曲、「Nowhere Fast」だ。公開当時の日本では、主にジャニーズ系アイドルのコンサートでも、日本語カバー曲として歌われていた名曲だけに、今聞いてもその神曲っぷりは本気で鳥肌もの!

ちなみに本作が公開された1984年と言えば、あの名作『フットルース』も公開されるなど、MTV台頭の影響を色濃く受けた青春音楽映画が大流行していた時代。映画の中に数々の人気アーティストの楽曲を印象的に登場させて、サントラ盤のセールスに繋げるその戦略は、正に80年代を象徴する一大ムーブメントだったのだ。

もちろん主題歌以外にも本作には数々の名曲が登場し、映画鑑賞後には観客の頭の中を主題歌がリフレインして、思わずサントラ盤を購入したくなるのは確実!

そして主人公たちの恋と冒険の結末を飾るラストのライブシーンで演奏されるのが、もう一つの主題歌である、「Tonight Is What It Means To Be Young」(邦題:今夜は青春)だ。まるで実際のライブ会場にいる様な迫力と臨場感は、絶対に劇場の大スクリーンで味わってこそ、本来の魅力と感動が味わえると断言出来る。
初公開から実に34年ぶりに訪れたこの絶好の機会を、是非お見逃し無く!



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主人公トム・コーディのロングコートに皆憧れた!


前述したライブシーンで迫力のパフォーマンスを見せてくれる、ヒロインでロックスターのエレンも当然カッコいいのだが、何と言っても当時の観客が憧れたのは、主人公トム・コーディを演じたマイケル・パレ!

テレビの人気ドラマ『アメリカン・ヒーロー』の不良生徒役でブレイクした彼が、本作で演じる寡黙で無骨な流れ者役は、今見ても実に魅力的であり、彼が劇中で着ているロングコートなどのファッションも、当時の若者の憧れだったのだ。

実は今回劇場で見直して気付いたのが、マネージャーであるビリーの意外な男らしさだった。最初はトムの恋のライバルとして登場し、金持ち趣味の嫌な奴のように見えた彼だが、エレンのために敵の本拠地に同行しようとするし、ラストではトムとエレンの仲を認めて自分は身を引こうとする潔さも見せるなど、コメディリリーフのキャラと思わせて実はトムに負けない男らしさを秘めているのだ。

若き日の名優ウィレム・デフォーが演じ、未だに強烈過ぎる存在感を放つ本作の悪役レイブンと併せて、こうした主人公のヒーロー性を引き立てる脇役たちの登場も見逃せない本作こそ、80年代を代表する青春映画の傑作と言えるだろう。



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もはや伝説の悪役、レイブンがやっぱりスゴかった!


本作で主人公トム・コーディと人気を二分したのが、現在でも性格俳優として活躍するウィレム・デフォーが演じる、敵のバイカー集団ボンバーズのボスであるレイブンだ。まるで爬虫類の様なその目に睨まれたら、絶対に動けなくなりそうなその迫力は、年月を越えても全く衰え知らずなのだが、今回久々に劇場の大スクリーンで本作を鑑賞して、一つ気が付いた点があった。

実はこのレイブン、映画の中で一度もまばたきをしていないのだ!良く見るとアップの時は完全に目を見開いたままなのだが、上半身を映すショットの時などは若干顔をしかめるなどして、まばたきを我慢している様にも見える。確かに今思い返しても、レイブンの眼光がスゴ過ぎる!そんな印象が強かった本作。当時あれほど強烈な印象を残した悪役誕生の裏には、若き日の名優のこうした地道な努力と工夫があったのだ。

初公開時から長年の月日を経て、家のテレビでなく劇場の大スクリーンで見てこそ気付くこともある、そんなことを観客に教えてくれる今回の再上映。この貴重な機会に是非劇場のスクリーンで見て頂いて、自分だけの新たな発見をして頂ければと思う。



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実は、あの名主題歌2曲も登場する幻の続編が存在した!


実は本作の主人公トム・コーディーと姉のリヴァが登場し、更には主題歌二曲が劇中のライブシーンで歌われるという、幻の続編映画が存在するのをご存知だろうか?

その作品とは、2008年に製作された日本未公開映画『ROAD TO HELL』。主人公トム・コーディと姉役を、同じくマイケル・パレとデボラ・ヴァルケンバーグが演じる上に、何とヒロインのエレンやマッコイまで登場!更にはちゃんとライブシーンで主題歌二曲が演奏されるという大サービスなのだ!

この続編を監督したのが、何と『サイボーグ』や『ネメシス』、そしてキャプテンアメリカの実写版映画『キャプテン・アメリカ卍帝国の野望』のアルバート・ピュン監督と聞けば、アクション映画ファンならきっと見たい!と思うはずだ。残念ながらエレン役は別人が演じていて、マイケル・パレも25年の歳月を感じさせる風貌になっているのは仕方がないところだが、オリジナルの『ストリート・オブ・ファイヤー』の大ファンである監督が撮っただけに、全編に渡って原作へのリスペクトが感じられる作品となつているのが嬉しい。

特にファンにとって見逃せないのが、オリジナル版のラストで登場したトムとエレンがステージ袖で別れるシーンを、この『ROAD TO HELL』でも再現してくれている点だろう。しかもこの別れから、オリジナル版の通り「Tonight Is What Means To Be Young」の演奏シーンに繋がるという忠実再現っぷりは見事!

残念ながら国内では未だにソフト化されていない、この幻の続編でありリメイクでもある映画『Road To Hell』。今回の再上映で盛り上がっている今だからこそ、是非国内でもこの『Road To Hell』をソフト化して頂きたいものだ。

幸いYoutubeなど動画サイトでは、オリジナル予告編やラストのライブシーンを見ることが出来るので、今回の再上映で興味を持たれた方は、是非探してみては?



(C)1984 Universal Studios. All Rights Reserved. 



最後に


今回初公開から実に34年振りに鑑賞して、改めて「あ、こんな内容だったのか」と、気付かされる点が多かった本作。

今回見直して思い出したのが、敵のボンバーズの本拠地が結構遠くにあるので、救出よりも無事に自分たちの地元に帰るまでの逃走劇がメインで描かれていた、ということ。

正直、OPとEDのライブシーンのスゴさだけが記憶に残っていて、エレンを助けてからのストーリーが全く頭に残っていなかったのだが、今見るとストーリーは完全に西部劇であり、その基本設定は『マッドマックス怒りのデスロード』を思い出させる。

更に本作で興味深いのは、男の世界やアクションの名手であるウォルター・ヒル監督によるラブストーリーだということだ。雨の中のキスシーンやエレンをめぐる三角関係など、今となってはウオルター・ヒル監督の職人監督としての手腕が楽しめる本作。ただ、本編の見せ場であるカーチェイスは『ザ・ドライバー』、ラストの素手の殴り合いやタイマン勝負は『ストリート・ファイター』、そして敵のチームのキャラクターや敵地から自分達の町まで帰る展開は『ウォリアーズ』など、実はウオルター・ヒル監督のそれまでの作品のエッセンス満載の内容となっている点にも、是非注目して頂きたい。

しかも、ライブシーンで曲をたっぷり聞かせるにも関わらず、何と上映時間を94分に納めるという職人監督っぷりは見事!

まだこの素晴らしい世界に触れていない若い観客も、当時見てその後はビデオやDVDで見返していたというオールドファンも、是非劇場に足を運んで頂いて、主人公トム・コーディの活躍とロックの名曲に酔いしれて頂ければと思う。

時代を越えて全く色褪せないエンタメ映画の傑作『ストリート・オブ・ファイヤー』、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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