一体これは映画か否か⁉ 『内村さま~ず THE MOVIE エンジェル』

■「キネマニア共和国」

このところTVのドラマのみならずバラエティやコント番組の劇場映画化というケースが増えてきている感があります。
その中でこれはちょっとオススメ⁉ というか……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.25》

『内村さま~ず THE MOVIE エンジェル』が、何だか妙にヘンで面白い!

ポスター

本番中笑ってOKのアドリブ連発!

そもそも『内村さま~ず」は今年で番組開始10年目に突入する人気長寿TVバラエティ番組。
内容は毎回ゲストMCが持ってくる企画に対し、三村マサカズ、内村光良、大竹一樹の3人がゆる~く挑んでいくといったものですが、ではそれを今回どうやって映画化したのか?

映画版は依頼主のお悩みに応じてシナリオを作り、メンバーが架空のキャラを演じながら依頼を解決していく劇団系探偵事務所の活躍を描くという内容。

サブ1

なるほど、“内さま~”の映画版として、違和感のない設定が組まれていますし、コメディとしても大いに興味をそそらせるものがあります。

ただしこの作品、通常の映画とは大きく異なるところがあります。

それはアドリブ満載ということ。

いや、アドリブなんて映画の撮影ではよくあることなのですが、驚きべきことに、そのアドリブに対してキャストの誰かが思わず本番中に笑ったりしてもNGにならず、そういった光景がまんま銀幕に映し出されているのです……って、ほえ⁉
(というか、撮影現場では「どんどん笑ってね」と指示が出ていたとか⁉)

こういった趣向はTVのバラエティ番組なら普通に成立しますが、映画の場合だと観客はどうしても「ドラマを見る」という意識で接しがちですので、大方おふざけがすぎるかのようなマイナスのイメージしかもたらさないものです。

しかし、本作は奇跡的といってもいいほどに、それが成功しているのです。

思うにこの作品、TVバラエティのノリをどこまで銀幕で披露できるかを、かなり考えながら作られている節があります。

たとえば内村光良は横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)出身で、既に『ピーナッツ』(06)『ボクたちの交換日記』(13)で映画監督としても評価を得ていますが、今回は彼の映画に対する目くばせがかなりの部分で大きく反映されているように思えます。

工藤浩之監督はじめスタッフもほぼTV原作のチームなので、気心も知れている分、今回何をやるべきかといったものをきちんと把握していたことでしょう。

いわばTVと映画のギャグを共存させながら、どちらともつかない新感覚の面白い作品を生み出そうという意識がフル稼働していることで、本作は何とも形容しがたい、しかし妙に笑えて面白い、そんな作品にきちんと仕上がっているのです。

映画はもっと自由になれることを教えてくれる作品

おそらく「映画とはこうあらねば!」みたいなお堅い映画評論家諸氏からは激昂されるかもしれませんが、今やさまざまなメディアで映像が氾濫している世の中において、映画もまた必然的に変貌していくものではあるでしょう。
そもそも映画もその黎明期は、邪道として演劇界から忌み嫌われていた、そんな時代もあったのですから。

映画に限らず映像メディアは、技術とともにどんどん進化していく。
あとは見る側がどうチョイスしていくか?それだけのことです。

メイン

本作はアドリブもさながら、海外TVコメディ番組みたいに、まるでライヴを見ているかのような観客の笑い声がところどころ挿入されたり、カンペが出てきたりとか、とにかくやりたい放題です。

その中で“内さま~”レギュラーのほんわかした個性が生かされると同時に、若手事務員として彼らと妙に歯車があっている久保田悠来や、女優志望がひょんなことから事務所入りさせられてしまう藤原令子と、若手俳優も通常の芝居とは異なるテイストに戸惑いつつ、いつしかその世界観にはまっている感が、見る側にひしひしと伝わってきます。

極めつけは落語界の大御所・笑福亭鶴瓶の登場で、数々の映画出演で受賞歴も多数の名優でもある彼、実は喜劇映画に出たことがなかった!
そんな彼がこの作品の中でいったいどんなすさまじい扱いを受けているか、直に見てお楽しみください⁉

お楽しみはさらに、今回は何と総勢56名のお笑い芸人が画面のあちこちに登場。まるで『ウォーリーを探せ!』的な見方もできます。
(実際、1回の鑑賞で全員を把握するのは難しいかも。その意味ではリピーターも増えそう)

あらゆるところに仕掛けがちりばめられた“THE MOVIE”、「映画を見る」といったガチガチの構えではなく、何となく楽しいものに接するゆる~い気分で、ご覧になってみてください。

クライマックスでは、なぜか意外と感動してしまっている自分に驚いてしまうはずです⁉

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(文:増當竜也)

『内村さま~ず THE MOVIE エンジェル』は、2015年9月11日(金)より絶賛公開中!
公式サイト http://uchisama-movie.com/

(C) 2015「内村さまぁ~ず THE MOVIE エンジェル」製作委員会


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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