『アンクル・ドリュー』スポーツ映画の新たな名作誕生の瞬間を見逃すな!

Motion Picture Artwork (C) 2018 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

そのキャリアの絶頂期にバスケットボール界から姿を消し、長年消息不明のままだった伝説のスーパースター、アンクル・ドリュー。ところが、偶然の出会いが彼をコートに呼び戻し、過去のチームメイトたちと再会した彼が、バスケの聖地“ラッカー・パーク”での大会に挑む!

この設定を聞いた時点ですでに面白そうな新作映画『アンクル・ドリュー』が11月9日から日本でも公開された。予告編やポスターからは、やはりコメディ色の強い作品との印象を受けた本作。きっと、バスケやNBAについての知識が無いと楽しめないのでは? そんな不安を胸に今回鑑賞に臨んだのだが、果たしてその内容と出来はどうだったのか?

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ストーリー

マイケル・ジョーダンに憧れバスケットボールを始めた青年ダックス(リルレル・ハウリー)は、あるトラウマから選手の夢を諦め、現在はストリートバスケチームのコーチをし、大会での優勝を目指していた。しかし、ある日突然、チームの主力選手をライバルチームに引き抜かれてしまう。失意の中ダックスは、伝説の選手だったお爺さん、アンクル・ドリュー(カイリー・アービング)と出会う。二人はかつての仲間を集め、伝説のチームを復活させ、バスケの聖地“ラッカー・パーク”で開催される大会に挑むことに…。果たしてダックスの夢はかなうのか!? そして、ドリューたちはかつての輝きを取り戻すことができるのか!?
公式サイトより)

予告編

コメディと思わせて、実は愛と笑いの感動ドラマが展開する!

冒頭でも述べた通り、予告編やポスターの印象からは、白髪のお爺さんが何故か華麗なプレイでバスケの試合に連勝するドタバタコメディ、そんな内容を予想していた本作。

確かに序盤の30分は観客の予想通り、伝説の名プレイヤーだったアンクル・ドリューが昔のチームメイトを勧誘する旅に出るまでが、コメディタッチで描かれることになる。

更に、今では家族を持ったり、それぞれの生活の中で暮らしている昔のチームメイトを、アンクル・ドリューとダックスが説得に回る部分は、往年の名作コメディ映画『ブルース・ブラザース』を思わせて、実に楽しいものがあり、果たして無事にチームが集まるのか? 観客の期待も次第に高まるのだが…。

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ところが映画はこの辺りから、ドリューとダックスを苦しめていた未精算の過去への決着や、彼らチームの面々の人生への再挑戦の物語へと、大きくシフトすることになるのだ。

そう、そこに展開するのは、文字通り愛と笑いの感動ドラマ!

過去の失敗や過ちから目を逸らさず、時には自身のプライドよりも素直に謝ることが大事。すれ違ったままの長い年月を越えて、ついにこの真理に辿り着いたアンクル・ドリュー率いるドリームチームが見せる、華麗なプレイと見事なチームワークは、必見です!

特殊メイクによる老けっぷりと、華麗なテクニックが見事!

映画『アンクル・ドリュー』誕生のきっかけとなったのは、実は2012年に制作されたペプシのCMだった。

見た目は白髪の老人なのに華麗なバスケのプレイを披露して、対戦相手の若者たちを唖然とさせるアンクル・ドリューのキャラクターは、すぐにネットを中心に大人気となり、今回の映画版製作が決まったというわけだ。

現在26歳のNBAのスター選手、カイリー・アービングが特殊メイクで演じるアンクル・ドリューの老けっぷりも見事だが、何と言っても本作の魅力は、次々に登場するNBAのレジェンド選手たちによる、華麗なバスケのテクニックにある。特に老人ホームで廃人同様の状態だったブーツが、昔のチームメイトとの再会により、一気に生気を取り戻して復活していく様子は、予想外に胸に来た! と言っておこう。

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自身のチームと彼女まで乗っ取られたダックスが、優勝賞金目当てでスカウトしたアンクル・ドリューたち。

年齢や外見からは到底信じられないほどの華麗なプレイをみせたチームの面々だったが、やはり実践のカンとスタミナには問題があり、途中、女子のバスケチームとの練習試合では、見事に完敗してしまうという始末…。

だが、ここから始まる華麗な復活と怒濤の快進撃に、次第に観客も声援を贈らずにはいられなくなることは確実な本作。

アンクル・ドリュー率いるドリームチームの活躍と意外な試合展開、そして感動のラストは、是非劇場で!

今誕生する、新たなスポーツ映画の傑作!

ストリートバスケの聖地“ラッカー・パーク”で開催されるトーナメント、“ラッカー・クラシック”。アンクル・ドリューたちが挑むこの大会の優勝賞金総額が、日本人には想像もつかない桁外れの金額だったり、試合の模様がテレビ中継されているなど、文字通りアマチュア選手たちの晴れ舞台であるこの大会。実は本作の舞台に、この“ラッカー・クラシック”が選ばれたのには、深い理由がある。

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何故なら、白人や黒人の区別もなく、更に年齢や性別も関係なく参加出来るこの伝統的大会こそ、まさに人種のるつぼであるアメリカの理想を体現するものだからだ。

そこで試されるのは、バスケに対する情熱と磨き上げた技術のみ! 年齢や過去の失敗など関係なく、今の自分の持てる力を全て出し尽くして闘った選手達の間に生まれる連帯感と、お互いへのリスペクトがラストに爽やかな感動を生む本作こそ、新たなスポーツ映画の傑作と呼べる作品なのだ!

最後に

何といっても本作の見所は、チーム全員が老人の集まりだとナメてかかった若いプレイヤーを、完全に子供扱いする華麗な技の数々!

この意外性とギャップが完全に観客の心を掴んでしまうおかげで、本作はバスケに興味の無い観客でも充分に楽しめる作品となっているのだ。

そのキャリアの絶頂期に謎の失踪を遂げたまま、バスケ界の伝説と化していた名選手、アンクル・ドリュー。再起を賭けて“ラッカー・クラシック”に挑むために、昔のチームメイトを訪ねて回る中で、次第に明らかになる彼らの過去の因縁。そして、未精算の過去が、未だに彼の現在の生活に影を落としていることが描かれていく。更には、過去の失敗からバスケ選手の道を断念したダックスのトラウマも絡んでくる中、ついに“ラッカー・パーク”の晴れ舞台にたどり着いた彼らを待つ運命とは?

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年齢が問題なのではなく、単に決意があるかどうかの問題。そして、過去はやりなおせるという本作のテーマは、現在の生活に満たされないものを感じていたり、自身の夢を一度は諦めてしまった全ての人々に、もう一度チャレンジする勇気を与えてくれるものだった。

そう、実は本作は単なるコメディではなく、夢を追う全ての人々に対する優しい視点と、彼らに暖かい応援の声を届ける作品に他ならない。

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とは言え、長い間現役を離れていた老人が、いきなり若者や現役プレイヤーのチームと互角に戦えるのはおかしいのでは?

確かにその指摘も分かる! だが、その根本的な部分にさえ目をつぶれば、後はラストまで文字通り観客にとっての至福の時が味わえる本作。

人生の幸運から見放されたまま、辛い日々を過ごしてきた負け犬たちが、ついに人生を立て直すチャンスを得て、再び晴れの舞台に挑戦する心を取り戻す、その姿は必見!

更に、アメリカ人にとって共通の文化であるバスケットボールが、いかに人々の心の支えや絆となっているかが描かれるその内容は、バスケに興味や知識の無い人でも十分に笑って楽しめるものとなっている。

世代や男女を問わず楽しめる、この『アンクル・ドリュー』。スポーツ映画の新たな傑作なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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