『ヴェノム』はアメコミ知識無しで楽しめる傑作!あなたもヴェノムが好きになる!

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マーベルコミックスを代表する人気コミックス「スパイダーマン」に登場する悪役“ヴェノム”が、ついに単体の映画となってスクリーンに登場する!

全世界のアメコミファンを期待させたこのニュースに、「これは見に行かねば!」、そう思われた方も多かったのでは? そんなファンの期待の中、ついに映画『ヴェノム』が11月2日から日本公開された。

ただ、ひと足先に公開されたアメリカでは、一般観客と評論家との間で評価が正反対になってしまっただけに、今回は多少の不安を抱えての鑑賞となったのも事実。果たして、その出来と内容はどの様なものだったのか?

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ストーリー

敏腕記者エディ・ブロック(トム・ハーディ)は、人体実験で死者をだしているという<ライフ財団>の真相を追う中、ある“最悪な”ものを発見し、接触してしまう。それは<シンビオート>と呼ばれる地球外生命体だった。
この意思を持った生命体との接触により、エディの体は寄生され、その声が聞こえるようになる。「一つになれば、俺たちはなんだってできる」とシンビオートはエディの体を蝕み、一体化し、ヴェノムとして名乗りを上げる。ヴェノムはそのグロテスクな体で容赦なく人を襲い、そして喰らう。相手を恐怖に陥れ、目玉、肺、そしてすい臓…体のどの部位も喰い尽くす。
エディは自分自身をコントロールできなくなる危機感を覚える一方、少しずつその力に魅了されていく――。
公式サイトより)

予告編

悪のヒーロー“ヴェノム”は、果たして本作でどう描かれたか?

思えば、映画『アイアンマン』の公開からすでに10年が経過し、今や各キャラクターの作品同士が複雑に絡み合って、巨大な一つの物語となっている“マーベル・シネマティック・ユニバース”。

それだけに、過去作を観ていない観客やアメコミ初心者にはハードルが高く、やはりアメコミ映画は原作を未読だったり、アメコミ知識が少ないと十分に楽しめないのでは? そんな印象が一般観客の間で強くなっていたのも事実。

実際今回のヴェノムも、原作での初登場から既に30年以上の歴史を持つキャラクターであり、その間に悪役から正義の側に移行するなど、本来のヴィラン(悪役)から大きくその性格を変貌させた経緯を持つ。

それだけに、正直アメコミに馴染みの無い観客には100%楽しめない内容になっているのでは? そんな予想で今回は鑑賞に臨んだのだが…。

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結論から言おう、今回そんな心配は一切無用!

実は、スーパーヒーロー物やアメコミ映画というよりも、むしろ口ではいがみ合っていても仲の良い名コンビが活躍する“バディ物映画”として作られている本作は、アメコミ初心者の観客にも無条件で楽しめる作品となっているのだ。

原作コミックスでは様々な人物に寄生し、その度に新たなヴェノムや派生キャラクターが誕生するなど、非常に複雑な経緯を持つこのキャラクターを、一本の映画に収めて観客に理解させるのは、極めて難しい。それだけに、今回スパイダーマンとの繋がりを思い切って切り捨て、一般観客にも受け入れ易くした決断は、正に大正解だったと言えるだろう。実際、今回の映画でのヴェノムのキャラクターには、原作に登場する“トキシン”の設定を思わせる部分が大きく、この凶悪なキャラクターをヒーローとして観客に認識させる上で、かなりの配慮と苦労があったことが伺えるのだ。

実は、既に2007年公開の映画『スパイダーマン3』で登場している、今回の主人公エディとヴェノム。

スパイダーマン3 (字幕版)

『スパイダーマン3』では、原作通りの悪役キャラクターとして登場したヴェノムだったが、本作ではスパイダーマンとは関係のない、独立した一人のダークヒーローとしての誕生に観客が立ち会えるのも、実に興味深いところだ。

謎の液状生命体“シンビオート”との最悪の出会いによって誕生した最高のコンビが、果たして地球的規模の危機にどう立ち向かうのか? 見事に悪のヒーローとしてスクリーンに登場したヴェノムの勇姿は、是非劇場でご確認を!

鑑賞後、きっとあなたもヴェノムを好きになる!

劇場のポスターやチラシで強烈な印象を残す、このヘビに似た凶悪な生物が、人間に乗り移って殺戮を繰り広げる映画。そう予想して鑑賞を躊躇されている女性の方も多いのでは?

確かに、その狂暴すぎる外見だけでなく、善悪の見境無く人間を攻撃するその姿は、正に映画ティザーポスターのキャッチコピーである“最悪”そのものに見えるのだが…。

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でも、ご心配なく。実は、そんな女性観客にこそ是非観て頂きたいのが、この『ヴェノム』なのだ!

本来、ヴェノム自身が生きるためには人間を捕食しなければならず、人間にとっては本能のままに殺戮を繰り返す悪の存在でありながら、そこにエディの正義の意思が加わることでダークヒーローと化す展開は、正に『デビルマン』!

そう、当初は狂暴に殺戮を繰り返していたヴェノムが、エディに寄生したことで次第に意識を変化させていく部分には、人間の善の部分が悪を打ち負かすという普遍的なテーマが秘められているのだ。

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狂暴過ぎるその外見と、意外に素直な性格とのギャップが魅力的なこのヴェノム。

“最悪”どころか実に頼りになる最高のバディにして、どこか憎めないこのキャラクターに観客が好意を持つことは確実なので、自信を持ってオススメします!

最後に

今回ネットでの感想には、日本の漫画「寄生獣」を思い出したとの声も上がっていた本作。

だが、成り行き上仕方なくコンビを組むことになり、お互いの利害関係や目的が一致して行動を共にするうちに、次第に友情や理解が芽生えてくるという展開は、日本人にも馴染みの深い王道の展開であり、本作で描かれる主人公エディとヴェノムとの関係性は「寄生獣」よりも、むしろ藤田和日郎の人気漫画「うしおととら」での主人公・潮と、妖怪“とら”との関係性に近いものがある。

更に、今回のヴェノムの過去設定が、そのままエディの現在の境遇に重なるなど、実は観客が共感出来る部分が非常に多い本作。凶暴な外見に反して、意外と情に厚いヴェノムのキャラ設定には、きっと多くの観客がこの凶暴な怪物を好きになってしまうはずだ。

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今回の大ヒットの大きな要因は、やはりスパイダーマンとの繋がりを極力排除し、アメコミ初心者にも入り込みやすい内容にした点だと言える。実際、ここまで一般の観客に広く門戸を広げたアメコミ映画は、非常に珍しいのではないだろうか?

ただ、寄生した人間を自分の影響下において、ついには支配しようとする原作通りの“悪のヴェノム”を期待して観にいった観客層には、本作での変更は少なからず不満を抱かせる結果となってしまい、アメコミファンには“生ぬるい”と思われてしまったのも事実。

しかし、恒例のエンドクレジット後のお楽しみ部分では、コアなアメコミファンも「おお、そう来たか!」と、期待せざるを得ない展開が待っているなど、実はちゃんと全ての観客層に配慮して作られている作品なのは間違いない。

個人的にも「早く続編が観たい!」、そう思わずにはいられなかった本作。続編の展開では原作との関わりが強くなりそうなだけに、今回大いに楽しんだアメコミ初心者の方も、続編をより楽しむために今から予習をしてその時を待つのが、オススメです!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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