大金に囲まれた現場で「これだけあったら…」映画『ゼニガタ』大谷亮平インタビュー

居酒屋「銭形」には、くすぶるキャバクラ嬢やキャバクラの支払いでパンクしたサラリーマン、農業に一念発起した元OLなど、金に困った人々が訪れる。表向きはその居酒屋の経営者ながら、裏では10日で3割の超暴利で金を貸しつけ、苛烈な取り立てで債務者を追い込む闇金屋の姿を、地方都市の閉塞感の中で描く映画『ゼニガタ』。

(C)2018「ゼニガタ」製作委員会

本作の主人公・銭形富男を演じるのは、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でブレイクを果たした大谷亮平さん。シネマズby松竹では、本作が映画初主演となる大谷さんに、作品の魅力や役どころなど、幅広くお話を伺いました。

──闇金屋という役どころへの思いや脚本を読んだときの感想をお聞かせください。

大谷亮平(以下、大谷):“闇金”という単語を聞いただけで、シリアスでダークな闇の世界を想像しました。でも、この作品は設定がぶっ飛んでいるので、脚本を読んだときは滑稽に感じる部分もありました。

お金に困ってどん底にいる人たちが足掻いてる姿の描き方もそうですし、個々にお金を借りにくる人たちが、実はみんな横の線で繋がっているというのも面白い。客が客を連れてきて借金をなすりつけあう姿や、命をかけてまで「お金をどうにかしよう」という倒錯している感じが滑稽に感じられると思います。

10日で3割の利子というのは、まぁ普通はあり得ないですし、誰が借りにくるんだ、と。そんなところにお金を借りにくる人はもう、ほかでは借りることができない、返すあてもなく最後の救いを求めて「銭形」へやってくるわけです。どん底の人たちが登場するからこそ、そこにドラマがある。そういう面白さがある映画だと思います。

なので、最初にイメージした闇金モノの世界よりも、エンターテイメント性を感じました。

──闇金という職業も特徴的ですが、富男のアウトローな生き方というのもやっぱり、この作品のキモだと思います。富男という人間をどのように捉えて演じられたんでしょうか?

大谷:綾部真弥監督からは一切ブレないでほしい、という要求が最初からありました。「富男ではなく、鉄男だったかな?」と自分の役名を勘違いしそうなるくらい、「鉄の男」というワードが監督から出て来たんです。それを富男のベースとして演じました。

──ブレない、というのは具体的にどういった部分ですか?

大谷:作品の中心にいる絶対的な存在として、お金を借りにくる人たち、ひとりひとりを判断して、希望がある人、こいつは拉致があかんなぁという人をしっかり見極めて金を貸していく、という立場ですね。

富男は作品の柱となる人物としてカウンターの中で金を貸していて、カウンターの外にいる人たちが暴れまくる作品なので、その対比がしっかりできないと、整理がつかなくなってしまうので。

(C)2018「ゼニガタ」製作委員会

ただ、“鉄の男”で最後まで貫いてしまうと、心のない、全く人間味のない主役になってしまうので、弟に対する思いがポロっと出るような感情が見え隠れするシーンを作ってもらったり、やりながら思わずそれが出てしまったシーンもあったりします。

それはアーケードで弟と話す場面で、本当は心を動かされるつもりではなかったシーンなんですけど、弟に対しての思いをちゃんと持っているという部分がちょっと出てしまった。意図せず出たものではありますが、監督が生かしてくれたということはそれでよかったのかなと思っています。

──作品を見終わったあとも、富男は謎が多い人物だなという印象でした。

大谷:富男は、お金には困っていない。でも、執着はしてるんです。お金を貸した相手の人生が再生されるのか、どうなのか、というところをどこか楽しんでるように思います。そういう意味では、見せないだけで情のような気持ちを持ってるし、実際にそれを行動に起こしている人。だから、より、面白みのある役なんじゃないかと思います。

例えば、安達祐実さんの演じる真田留美は、「このままではいけない」と自分を再生する意味で新しいことを始めたくて、そのためにお金を貸してほしい、とやってくる。そこは瞬時に匂いを嗅ぎ取って、「じゃあ、やってみろよ」と、投資のようなお金の使い方もしています。お金の使い方を熟知してるからこそ、いろんな使い方ができるということですよね。

──留美は負けたくないという思いで畑に向き合う、野心がありながらもまっすぐな性格の女性だと思います。一方で佐津川愛美さん演じる早乙女珠は、ヤクザ相手にもひよらない男前な性格のキャラクターですが、大谷さん的には、どちらがタイプですか?

大谷:(笑)。珠ちゃんはぶっ飛んでるじゃないですか! 落ちるところまで落ちてる人間ですよね。それはもう、真面目に頑張ろうとしてる留美の一択です(笑)。

──個人的には、珠ちゃんの思いきりのよさも見ていて気持ちがよかったです(笑)。ちなみに、たくさんのお金に囲まれた現場で撮影するというのはどういう気持ちなのかな、と思ったのですが…。

大谷:札束などは、見える部分だけ本物を使っていて、目につくところはすべて本物の現金でした。スタッフさんたちのポケットマネーが出されてたんで、カットがかかった瞬間に回収しているのが面白かったですね。「はい、はい、はい!」って。冗談で一枚抜いたとしても、すぐバレるくらい必死な雰囲気でした(笑)。

(C)2018「ゼニガタ」製作委員会

でも、全部が本物ではないとはいえ、束で見てしまうと想像はしますよね。お金があろうがなかろうが、口座に入れていたら現物として見ることはない訳で。「これだけあったら…」って、それはみんな思ったんじゃないですか(笑)? 居酒屋のカウンターの下に、札束が積まれている状態だったので、「不動産だったら…」とか、色々な計算をしてしまいましたね。

──やるかどうかは別として、やっぱり欲が出ちゃいます(笑)?

大谷:別に悪い気持ちは出ないですよ(笑)。ただ、この映画にしても、そのお金の主人は誰なのか、っていうところはありますよね。何かコトを起こすには基本お金が必要じゃないですか。いい方向に使うこともできれば、人によって、使い方によって、真逆のこともできる。それは、いろんなキャラクターを見ながら、お金を前に演じてちょっと思ったことではありますね。

──お金に人を変えてしまう力があるというのを改めて感じる作品でもあると思います。

大谷:お金に翻弄されることから抜け出せない、富男を含めて、みんな抜け出せない人物なので。歯止めがきかないというか。

──みんな暴走してますもんね。

大谷:富男自身も、抜け出せないことをわかってるんですけどね。ただ、それを客観視して、冷静に分析できているから、1人だけ立ち位置が変わってきたんだろうな、と思います。お金を使う方、操る方に変われた。それができない人は、そこから落ちていくしかなかったというか。カウンター越しでこうも立場の違いが表現されていることが面白いです。

──田舎ならではの空気感が作品を際立てていたと感じました。沼津ロケということでしたが、思い出はありますか?

大谷:毎日家から現場へ通うのと違って、キャスト、スタッフ、みんなが同じところに宿泊して、そこから現場に向かうというのが、僕は気分的にやっぱり違いましたね。ナイトロケが多かったから余計そう感じたのかもしれないですけど、沼津は懐かしさを感じる土地で、合宿をしているような気分でした。

──同じ場所で一緒にいる時間が長い方が、芝居の話もしやすかったりします?

大谷:宿舎に戻ってから、みんなで集まるという訳でもなかったので、そこまで演技について話し合うということはなかったですが、ひとつのところで生活して現場を往復することで、一体感が生まれた気はします。

──そんな撮影現場の中で初主演を務められた訳ですが、気持ち的に違うところはありましたか?

大谷:正直、主演を任されたから全体を引っ張っていこう、みたいな気持ちはなかったんです。なので、座長として特別なことは何もしていません。この作品に関しては、僕がしっかり軸を持ってブレずに演じないと、作品全体に影響が出てくるので、与えられた役に徹しました。

──与えられた役をまっとうすることで、座長としてみんなの軸にもなっていたという感じでしょうか。

大谷:後付けですけどね(笑)。みなさん、ベテランの方たちばっかりだったので、まずは僕がしっかりしないと、と。

──最後に、映画『ゼニガタ』の見どころを教えてください。


「銭の匂い」

大谷:劇中にも出てくる言葉ですが、“銭の匂い”がする映画です。銭のしがらみから抜け出せない、登場人物たちの滑稽な姿を楽しんでください。

映画『ゼニガタ』は、5月26日(土)シネマート新宿ほか全国ロードショー。初日舞台あいさつも開催される。
http://www.cinemart.co.jp/theater/shinjuku/topics/20180510_15054.html

(写真:HITOMI KAMATA、文:大谷和美)

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    ライタープロフィール

    大谷和美

    大谷和美

    高校2年の時に観た「バトルロワイアルⅡ」に衝撃を受け、映画の道を志すも、縁あって雑誌編集者に。特撮誌、若手俳優グラビア誌等の編集・ライター、WEB編集者を経て、現在はフリーランスで活動中。人間の感情や社会の闇を描いた邦画が好きで、気づけばR指定のDVDばかり借りていることも。一方、元々好きだったライダー・戦隊などの特撮作品やコメディ映画も好んで観ます。他、元上司のバカタール加藤が主催するニコ生番組「崖の上の生放送」に準レギュラーで出演中。

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