今年は芸歴55年主演映画も公開!永遠の清純派女優・松原智恵子

写真家『早田雄二』が撮影した銀幕のスターたちvol.34

現在、昭和を代表する名カメラマン早田雄二氏(16~95)が撮り続けてきた銀幕スターたちの写真の数々が、本サイトに『特集 写真家・早田雄二』として掲載されています。
日々、国内外のスターなどを撮影し、特に女優陣から絶大な信頼を得ていた早田氏の素晴らしきフォト・ワールドとリンクしながら、ここでは彼が撮り続けたスターたちの経歴や魅力などを振り返ってみたいと思います。

松原 智恵子さん

 どんなに時が過ぎようとも、印象がまったく変わることのない俳優とは確実にいるもので、私自身、幼い頃からテレビや映画で見る松原智恵子の印象は常に清楚で美しく上品な、いわゆる清純派といったものでしたが、しかしこちらがどんどん年齢を重ねていくにつれて、彼女のそういった魅力に何ら変化が起きないのは奇跡的なほどです。

 いつまでたっても清純派として美しく映え続け、その上で人生の厳しさなどの年輪をそこはかとなく漂わせていく彼女の自然体の演技と存在感は、年を経るごとにますます輝いているように思えてなりません。

60年代日活映画を駆け抜けた
ヒロインとして

 松原智恵子は1945年1月6日、岐阜県の生まれ。戦争が終わり、家族で名古屋に移り住み、高校に進学した60年、日活が浅丘ルリ子主演『16歳』公開記念に催されたミス16歳コンテストに応募したところ中部代表となり、それを機にカメラテストを受けて翌61年にニューフェイスとして日活に入社し、上京します。

 同年『夜の挑戦者』に端役で出演し、映画デビュー。以後、日活は吉永小百合、和泉雅子とともに“日活三人娘”として売り出していき、『明日に向って突っ走れ』(61)や『北上夜曲』(61)で早くもヒロインに抜擢。

  その後も『学園広場』(63)『何処へ』(64)などの青春映画や、小林旭主演『さすらい』(62)『関東無宿』(63)、宍戸錠主演『燃える南十字星』(62)『拳銃残酷物語』(64)など多数のアクション映画の相手役を務め、64年度の製作者協会新人賞を受賞しました。

 日活時代の彼女の転機は、翌65年、渡哲也が日活に入社して『あばれ騎士道』(65)でデビューした際、彼の恋人役を務めたことを機に、その後も『真紅な海が呼んでるぜ』(65)『東京流れ者』(66)『君は恋人』(67)などなど多数共演していったことで、その頂点が68年『無頼より・大幹部』に始まる無頼シリーズで主人公の一匹狼のやくざ藤川五郎の恋人・雪子を健気に好演し続けていきました。

 この時期の松原智恵子は、それこそ67年度の女優ブロマイド売り上げトップ1になるほどの人気で、その清純可憐な魅力は多くの男性ファンを虜にしていきました。

 67年の石坂洋二郎原作の主演テレビドラマ『ある日わたしは』も好評で、今もCSで再放送されるほどの人気作品です。

 デビューして9年目の69年、『恋のつむじ風』で念願の単独映画主演も果たしています。

 しかし、70年代に入って日活がロマンポルノ路線に転身したことを機に退社し、以後はテレビを中心にした活動を始めます。

 下町の銭湯の若妻を演じたTBS『時間ですよ』(70~73)はこの時期の代表作ともいえるでしょう。

ここ数年は毎年のように映画出演!
そして主演映画『ゆずの葉ゆれて』

 正直なところ、清純派ではあれ強烈な個性には乏しく思える松原智恵子は、個性派俳優が闊歩する70~80年代においては、映画よりもTVのホームドラマや時代劇のゲスト、2時間ドラマなどのほうが無難ではあったのかもしれません。

 しかし彼女のすごいところは、その清純な美しさを湛えたまま年齢を重ねていったことで、それはやがて彼女ならではのかけがえのない魅力として、90年代に入ってから再び映画やドラマで映え始めていきます。

 その事実を痛感させられたのが、北野武監督の『Dolls』(02)で、ここで彼女は毎週土曜日、公園のベンチで昔の恋人を待ち続けるうち、いつしかヤクザの老親分と心惹かれあっていく貴婦人・良子を、持ち前の清純な魅力もさながら、人生の年輪を感じさせる“女”の深みまでをも見事に醸し出していました。

 2004年の『死に花』でも、山崎努や宇津井健、青島幸男、谷啓などベテラン男優陣ら地下から穴を掘って銀行の金庫を狙う老強盗団と共闘する大学教授未亡人を好演しています。

 この後も『釣りバカ日誌17 あとは能登なれハマとなれ!』(06)『グーグーだって猫である』(08)『黄金花 秘すれば花、死すれば蝶』(09)『サヨナライツカ』(10)『小川の辺』(11)『MADE IN JAPAN こらッ!』(11)『私の叔父さん』(12)『トテチータ・チキチータ』(12)『「わたし」の人生 我が命のタンゴ』(12)『きいろいゾウ』(13)『ピカ★☆ンチ LIFE IS HARD たぶんHAPPY』(14)『いつかの玄関たちと、』(14)『鏡の中の笑顔たち』(15)『ぼくが命をいただいた3日間』(16)と、ほぼ毎年映画出演を果たしています。

 規模は小さくても志ある作品へ進んで参加している印象と同時に、ここに至って映画に出るのが楽しくて仕方がないとでもいった想いまで感じてならないのですが、そのあたりご本人に聞いてみたいものです。

 そして今年は、松原智恵子芸歴55周年記念主演映画『ゆずの葉ゆれて』が8月20日から有楽町スバル座ほかで公開されます。

 これは鹿児島の海と山に囲まれた小さな町を舞台に、半世紀以上連れ添ってきた夫婦の絆と別れを描くヒューマン映画で、共演はやはり日活出身の津川雅彦。
「いただいた台本をとにかく声を出して何度も読むこと」をモットーとしている彼女、今回は鹿児島独特の方言に苦労したとのことですが、地元の人々の指導で助けられたとのことです。

 このように、清純な魅力はそのまま、年齢を重ねるごとに映画に愛されていくかのような松原智恵子の最新映画、公開が楽しみです。

 ちなみに彼女、その後も『Anniversary アニバーサリー』(10月22日公開予定)、そして『僕らのごはんは明日で待ってる』(17年公開予定)にも出演しているのでした!

(文:増當竜也)

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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