頼りになる男・江口洋介の笑顔|『線は、僕を描く』公開記念!
(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
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2022年の晩夏から秋冬に渡って3本の出演作が公開される江口洋介。
『アキラとあきら』で確実性を重視するクールな上司を、『七人の秘書THEMOVIE』で秘書軍団のまとめ役、そして『線は、僕を描く』では主人公を優しく導く水墨画家役を好演しています。
さらには2021年春に放映されたドラマ「ネメシス」の劇場版『映画ネメシス黄金螺旋の謎』が2023年公開待機中です。
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トレンディの顔から頼りになる男へ
江口洋介は1987年の映画『湘南爆走族』の主役・江口洋“助”で映画初主演を飾ります。江口洋介の名前は本名ですが、このキャラクターの名前との出会いは全くの偶然だそうです。ちなみに本作は、織田裕二のデビュー作でもあります。
1990年代に入ると「東京ラブストーリー」「愛という名のもとに」「101回目のプロポーズ」とフジテレビ月9史上に名前を残すヒットドラマにメインキャストとして出演、一気に人気と知名度を上げていきます。
最近『線は、僕を描く』のイベントで江口洋介は当時を振り返って、「自分は俳優だと言っていていいのだろうか?」という疑問を抱えながらやっていたと語っており、少し意外な感じがします。この悩みはデビューから10年ぐらい続いたとのことで、外から見ているだけでは計り知れない事情があったと考えさせられる事柄です。
大ヒットドラマの2~3番手で着実にキャリアを積んだ江口洋介は、1993年に代表作となる「ひとつ屋根の下」で主演を務めます。本作でキザな2枚目キャラから、ベタで熱苦しい兄貴キャラにキャラ変。ちょっと近寄りがたいタイプから、頼りたくなるタイプに見事にスライドして見せ、俳優としての幅を広げることに。この頃、江口洋介は30歳を前にした頃でした。
歌手の森高千里と結婚を発表した1999年から約10年間に渡って出演し続けることになるのが、医療ドラマの大ヒット作「救命病棟24時」シリーズ。本作は新たな代表作となりました。
同じ医療ものでは2003年の「白い巨塔」での好演も忘れがたいでしょう。以降は大河・月9・日曜劇場などヒット枠で主演から脇役まで何でもやってくれる頼もしい存在です。
一方の映画出演作品では、岩井俊二・石井竜也・飯田譲治・阪本順治・紀里谷和明など個性派監督の名前が並びます。深川栄洋や吉田大八と言った監督ともブレイク前夜のコラボになっています。
50本近い出演映画の中で「文句なしの大作」「満を持しての大作」のメインキャストと言えるのは2012年から5作続く『るろうに剣心』辺りからではないでしょうか。
変化球の続く出演映画のチョイスは、ドラマでメインストリームを歩み続けることとバランスをとるというような意図も思わせます。それでも、2010年代になると映画でも“大規模の話題作”が続くようになります。
先述の『るろうに剣心』シリーズ以外でも、2015年の『天空の蜂』、2018年からの『孤狼の血』シリーズ、2019年からの『コンフィデンスマンJP』シリーズと文句なしの大ヒット作に出演し続けています。
どの作品でも非常に印象深い演技を見せてくれていますが、実は『天空の蜂』以外は全部脇役です。
それでも“どの映画の江口洋介“も頼りがいがあり、忘れられない役であることも、また事実でもあります。
『線は、僕を描く』青春映画の新マスターピース!
そんな江口洋介の映画最新作が10月21日(金)公開の『線は、僕を描く』です。
『線は、僕を描く』は、砥上裕將の同題小説を『ちはやふる』三部作の小泉徳宏監督が映画化した“喪失と再生”を描いた青春劇です。
小泉監督が競技かるたに続いて選んだ題材が“水墨画”。本作ははっきり言って『ちはやふる』に続く“青春映画の新たなマスターピース“と言っていい最高の映画でした。
横浜流星が演じる青山霜介は大きな喪失感を抱えながら生きている大学生で、ふとしたことがきっかけで水墨画の巨匠・篠田湖山(演:三浦友和)の内弟子になることに。湖山の弟子の西濱湖峰や孫娘の千瑛(演:清原果耶)と関わっていく中で、霜介は水墨画の “線だけで描かれる命”に魅了されていきます。
1年以上もかけて水墨画に挑み続けてきたという横浜流星や清原果耶の筆致は、その鍛錬がしっかりと伝わってくるもので、『ちはやふる』でも魅せた小泉監督の“静と動”のメリハリの効いた演出もあって、びっくりするほど躍動感にあふれた場面が続きます。
『線は、僕を描く』では、横浜流星&清原果耶のフレッシュな主演コンビももちろんのこと、何より2人を温かく、時に厳しく見守る三浦友和と江口洋介の湖山と湖峰の素敵なおじさま子弟コンビが実に魅力的です。
(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
霜介(横浜流星)と千瑛(清原果耶)の2人は色々と思い詰めている部分もあって“人生に余白がない”タイミングです。(メタ的な視点から見れば主演コンビの2人は水墨画に挑むシーンも多く、そのような意味でも余裕がない状態だったと思われます)
そんな2人とは対照的なのが、湖山(三浦友和)と湖峰(江口洋介)の2人。2人のキャリアがなせる技でもあるのでしょうが、実に余裕を感じさせる人生の持ち主を軽やかに演じていて、このオジサマ2人がとにかく最高です。
『ちはやふる』以上にメインキャストを絞った本作は、実質的に霜介・千瑛・湖山・湖峰の4人の物語であるといえ、対照的な二組が見事に機能し小泉監督の手腕にも唸ります。
(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
三浦友和演じる湖山は人生に起きる全てを受け入れて、そのうえで筆を走らせる達人。その一番弟子的な存在の西濱湖峰(江口洋介)は内弟子的な存在で、料理や庭木の手入れなど家事全般を担い、なかなか筆を取らない男ですが、いざとなると誰もが唸る実力者というという男。年長の湖山と若い2人の間を取り持つ形になる湖峰を江口洋介が実に魅力的に演じ切っています。
(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会
思えば、『るろうに剣心』シリーズの斎藤一にしても、『天空の蜂』にしても、『孤狼の血』にしても、コメディ的な『コンフィデンスマンJP』シリーズにしても……近年の映画の江口洋介は眉間に皺を寄せた“強面な役柄”が続いていました。(『アキラとあきら』でもそうでした)
(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
そんな中での『線は、僕を描く』の湖峰の江口洋介は常にリラックスした感覚を漂わせて、自然な笑顔を見せてくれます。
ドラマに視界を広げても、ここまで笑顔が素敵な江口洋介は最近の出演作では珍しく、とても新鮮でやられました。意外にも『線は、僕を描く』で青春劇として爽やかさを引き出しているのは彼だったかもしれません。
江口洋介のこれからは?
江口洋介の次回作は、すでに告知されている『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』です。
ドラマ「ネメシス」は賛否がありましたが、江口洋介の軽やかな先輩探偵ぶりは非常に魅力的でした。
『線は、僕を描く』に続いて『映画ネメシス黄金螺旋の謎』でも主人公の2人組(櫻井翔と広瀬すず)をうまくサポートしてくれると思うので、こちらも期待大です。
(文:村松健太郎)
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