『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア①

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スター・ウォーズ トリビア 豆知識

いよいよ公開間近となった世界的人気シリーズ第7弾『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』ですが、そこに至るまでのマコトかウソかの噂も含めたトリビア(というほどでもない小ネタ)のいくつかをご紹介……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.77》

おヒマつぶしにどーぞ。

『フラッシュ・ゴードン』のリメイク企画から『スター・ウォーズ』へ

ヴェトナム戦争を背景とする青春映画『アメリカン・グラフィティ』(73)で成功を収めたジョージ・ルーカス監督は、往年のアメリカ映画が備えていたエンタテインメント性の復権を目指し、1930年代から40年代にかけて人気を博した新聞連載コミックを原作とするSF冒険活劇シリーズ『フラッシュ・ゴードン』シリーズ(36~40)のリメイクを企画しました。

しかし、既に映画化権をイタリアの大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスに押さえられていたことで断念。代わって書いたオリジナル脚本が『スター・ウォーズ』でした(77/後に『エピソード4/新たなる希望』とサブタイトルがつけられます)。

『スター・ウォーズ』の冒頭、ドラマの概要を記した巨大な文章が画面の奥のほうへと流れていきますが、あれは30年代の『フラッシュ・ゴードン』シリーズで用いていた手法であり、それに倣いつつオマージュを捧げたものでもありました。

ちなみに、ディノ・デ・ラウレンティス製作の『フラッシュ・ゴードン』自体は80年に製作費70億円を投じた超大作として完成したものの、評価は芳しくなく、久しく忘れられた映画になっていましたが、2012年の『テッド』でユニークなリスペクトがなされたことでり再び注目されるようになり、今では映画ファンから愛される(?)微笑ましい映画として存在しております。

さらに『スター・ウォーズ』公開以前の74年、『フラッシュ・ゴードン』のパロディ・ポルノ映画『フレッシュ・ゴードン』が制作されており、日本でも『スター・ウォーズ』公開直前の78年GWに公開され、こちらも大いに話題になりました。

実現しなかった三船敏郎のオビ=ワン・ケノービ

『スター・ウォーズ』には西部劇や戦争映画、海賊映画、さらには日本の時代劇などなど、古今東西あらゆるエンタテインメント映画の要素が詰め込まれていますが、その中で黒澤明監督作品を愛してやまないジョージ・ルーカスは、『隠し砦の三悪人』(58)の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)をモデルに、劇中を賑わすロボット(ドロイド)コンビ、C3-POとR2-D2を設定しています。

また、劇中『用心棒』(61)や『椿三十郎』(62)にオマージュを捧げたシーンも存在しています。

さらにオビ=ワン・ケノービは黒澤映画の象徴でもある三船敏郎をイメージして作られた役で、当然三船に出演依頼しましたが、彼はこれを辞退。

それでも諦めきれないルーカスは『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83/初公開時のサブタイトルは『ジェダイの復讐』)の際、ダース・ベイダー=アナキン・スカイウォーカー役をオファーしましたが、これも叶いませんでした。

出演辞退の理由は「子ども向けの映画だと思ったから」とか言われていますが、実際は単にスケジュールが合わなかったからというのが真相のようです(ちなみに彼は『ゲンと不動明王』などの子供向け映画にもちゃんと出ています)。

当時三船プロ社長を兼任していた彼の立場として、長い日数を拘束されるような映画出演、特に海外作品は慎重にならざるを得ない状況にあったようです(そう考えると、スティーヴン・スピルバーグ監督に乞われて出演した『1941』(79)などは奇跡だったのかも)。

もし三船が出演していたら、ライトセーバーの殺陣は日本のチャンバラのようになっていたかもしれませんね。

キャスティングといえば、当時レイア姫のオーディションでジョディ・フォスターが最終選考まで残っていたとのことで、結局はキャリー・フィッシャーが見事に役を射止めたわけですが、もし彼女が抜擢されていたら、その後の女優人生はどう変わっていたことでしょうか?

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–{東洋、日本、そして黒澤映画へのリスペクト}–

東洋、日本、そして黒澤映画へのリスペクト

総じて『スター・ウォーズ』には東洋的世界観がそれとなく盛り込まれていて、ジェダイの衣裳も柔道着や着物をモチーフにデザインされており、ダース・ベイダーのヘルメットも伊達政宗の兜(仙台市博物館所蔵の黒漆五枚胴具足)を参考に作られています。

また『スター・ウォーズ』で斬新だったのは歴史感を出すためにメカや建物などを汚して撮影していたことで、これは黒澤明監督が時代劇などで率先して行う手法でもあり、事実、黒澤監督は本作の“汚し”に感心したとききます。

マーク・ハミル扮する主人公ルーク・スカイウォーカーは、当初ルーク・スカイキラーという名前でしたが、撮影開始直後に今のものに替えられました(ルークの名はルーカスから採られています)。

しかし、後に『エピソード3/シスの復讐』(05)と『エピソード4/新たなる希望』の間を繋ぐTVゲーム『スター・ウォーズ フォース・アンリーシュド』(08)の主人公は、ダースベイダーの弟子でスカイキラーという名前なのでした。

ハン・ソロの相棒チューバッカは、当初はヒューマノイドという設定だったようですが、あるときルーカスが愛犬インディアナ(アラミスカンマラミュート犬)が車の助手席にちょこんと乗っている姿を見て、毛むくじゃらの巨漢にしようとひらめいたとのことです。
(ちなみに、このときのインディアナという名前が、のちの『レイダース 失われたアーク』の主人公インディアナ・ジョーンズへと繫がっていきました)

なお、チューバッカの声はクマとアザラスとオットセイ、アナグマの声を混ぜて作られているそうです。

探してみよう「1138」の数字そして「否な予感がする」の台詞

ジョージ・ルーカス監督の商業映画デビュー作は『THX-1138』(70)ですが、これを意識してか、これまでの『スター・ウォーズ』シリーズ全作には、どこかに1138の数字が登場しています。

もうひとつ、このシリーズでは必ず誰かが“I have a bad feeling about this.”「嫌な予感がする(作品ごとに訳し方は微妙に異なります)」という台詞を言い放ちます。

『スター・ウォーズ』が全米公開される頃、ジョージ・ルーカスはオーストラリアにいました。これは『THX-1138』がこけて製作サイドから責められたトラウマから初日恐怖症に陥ってしまい、このときも映画がこけるのではないかと恐怖心にかられてハリウッドから逃げていたのです。

しかし『スター・ウォーズ』が全米で大ヒットしていることを友人のスティーヴン・スピルバーグから知らされた彼は喜び勇んでハリウッドに凱旋し(?)、本来9部作の構想であったことを公表し、シリーズ化が決定します。

現に『スター・ウォーズ』シナリオ最終稿には『THE NEW HOPE(新たなる希望)』とサブタイトルが入っていたとのことですが、実際のところ彼はルーク・スカイウォーカーらの時代を描くエピソード4~6、その親たちの時代を描く1~3までは具体的な構想があったものの、7~9に関してはルークらの次世代を舞台にするといったところまでしか考えてなかったようで、『エピソード3/シスの復讐』を完成させた後、ルーカスは「当時は9部作と情報が広まってしまったが、もともと6部作としての構想だった」とも発言しています。

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–{カルト化していったイタリアの便乗映画『スター・クラッシュ』}–

カルト化していったイタリアの便乗映画『スター・クラッシュ』

『スター・ウォーズ』が日本公開される前に、漁夫の利を狙って『惑星大戦争』(77/本当はこのタイトルが『スター・ウォーズ』の邦題になる予定でしたが、ルーカスが“STAR WARS”を世界共通のタイトルにするよう求めたことで、急きょ変更されたのです)、『宇宙からのメッセージ』(78)といったSF邦画が作られたことは以前にも記しましたが、イタリアでも『スター・クラッシュ』(78)なるSF映画が作られました。

こちらは日本でも大ヒットした難病ラブストーリー映画『ラスト・コンサート』(76)のルイジ・コッツィ監督がルイス・コーツ名義で監督したもので、『007私を愛したスパイ』(77)のボンドガール、キャロライン・マンロー扮する宇宙海賊ステラ・スターたちが銀河皇帝の命を受けてく悪の首領の陣地に乗り込むといったスペース・オペラで、ルーカスがこよなく愛する『アルゴ探検隊の大冒険』(63)宇宙版といった声もあります。

日本では劇場未公開のまま、79年に『銀河戦争・宇宙巨大戦艦スターシップSOS』の邦題でTBS系列『月曜ロードショー』にてTV放映され、『スター・ウォーズ』ブ-ムの熱狂冷めやらぬ頃だけに映画ファンは勇んでチャンネルを合わせました。
が、いかにもB級という表記がふさわしい特撮や演出に脱力しながらも、キャロライン・マンローのお色気コスプレ大会とでもいったテイストや(最近は彼女のフィギュアまで発売されています!)、ブルース・リー主演映画『死亡遊戯』(78)そっくりの音楽(どちらも作曲は巨匠ジョン・バリー⁉)が秀逸という、不可思議な映画として当時の映画ファンの心に刻み込まれてしまい、今ではカルト映画と化し、実はシリーズ化もされています。

その『スター・クラッシュ』が2016年陽春、まさかのブルーレイ化が決定!(詳細は以下まで)

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人気ロボットR2-D2のカメオ出演

シリーズの人気ロボットR2-D2の名前の由来は、ジョージ・ルーカスが『アメリカン・グラフィティ』撮影中、”Reel 2,Dialogue Track 2”という掛け声の短縮形”R2-D2”の響きを妙に気に入っていて、何気なく書き留めていたものを名前として用いたのだそうです。

ちなみにこのR2-D2、映画出演は『スター・ウォーズ』シリーズだけではなく、実は『未知との遭遇』(77)や『スター・トレック』(80)『レイダース 失われたアーク』(81)にもカメオ出演しています。探してみてください。

『スター・ウォーズ』シリーズのジョン・ウィリアムスの音楽は今や映画音楽のスタンダードですが、あのテーマ曲に日本語の歌詞をつけ、アニメソングの名手・子門真人が歌ったレコードが当時発売されています。

ただし、これはきちんと許諾を取っていなかったため、ルーカス・サイドからクレームがつき、レコードは回収されました。

これを幸運にも当時購入し、今も持っている方は、今後決して手放さないほうがいいでしょう⁉

『スター・ウォーズ』日本初公開時の翻訳は、今と少し違っていて、たとえばフォース=理力、レトセーバー=電光剣(もしくは光線剣)、ジェダイ=共和騎士といった感じです。

これはまだシリーズの世界観が見えづらかった時期に訳されたからであり、私などもずっと”May the force be with you”を「理力の守りあれ」と覚えていたくらいです。

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–{大不評だったTV初放送時の日本語吹替版}–

大不評だったTV初放送時の日本語吹替版

『スター・ウォーズ』は日本公開と同時期に英語&日本語のダイジェスト・ドラマ版LPが発売され、そのときの日本語吹替キャストはルーク(神谷明)、レイア(藩恵子)、ハン・ソロ(羽佐間道夫)というキャスティングでした。
続いてリバイバル日本語吹替版が劇場公開されたときはルーク(奥田瑛二)、レイア(森田理恵)、ハン・ソロ(森本レオ)。ここまではまっとうでした。

しかし、1983年10月5日、日本テレビ『水曜ロードショー』枠で、夜8時から3時間特別編成で『スター・ウォーズ』がテレビ初放送された際、その吹替キャストはルーク(渡辺徹)、レイア(大場久美子)、ハン・ソロ(松崎しげる)といった面々で、これが大不評。

しかも夜8時になってもタモリや研ナオコらがずっと登場するバラエティ番組的な構成がなされていてなかなか映画が始まらず、テレビ局には苦情が殺到。

これを反省してか日本テレビは85年10月11日、2度目のテレビ放映(金曜ロードショー)の際、キャストをルーク(水島裕)、レイア(島本須美)、ハンソロ(村井国夫)に改め、また映画評論家・水野晴郎の通常解説以外の余計な仕掛けなどは一切やめて放映しました。

以後、VHS&DVD&ブルーレイはまた異なるキャスティングがなされていて、02年の『金曜ロードショー』ではまた別キャストと、さまざまなバージョンが存在します。

個人的には85年吹替版が好みですが、久々に83年版も見直してみたいと思うことも、実はあったりしています⁉

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(文:増當竜也)

『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア②
『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア③

映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は2015年12月12月18日(金)18時30分、全国一斉公開。

スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒

予告編

公式サイト
http://starwars.disney.co.jp/movie/force.html

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C) 2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

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