「おむすび」北村有起哉と新納慎也のエア指切り【113回】

続・朝ドライフ

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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第113回を紐解いていく。

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居酒屋きよしのお弁当がおいしそう

今日のアヴァンは最高でした。聖人(北村有起哉)若林(新納慎也)の芝居がじつにすばらしかった。

緊急事態宣言によって街から人がいなくなります。お休みを余儀なくされた店舗も多いなか、ヘアサロンヨネダは一応開けていますが、心配になった聖人は市役所の若林を店に呼びつけます。歩(仲里依紗)リサポン(田村芽実)を呼び出したのと同じく、米田家は何かあると自分が出向かず人を呼びつける癖があるようです。

お店を開けていいのか聞くだけなら電話でいいでしょう。とくに緊急事態宣言下ですし。でもあえてヘアサロンヨネダに聖人と若林がいることに意味があります。それは距離の芝居です。

ふたりの距離が微妙に遠いのです。あんなに密だったヘアサロンヨネダに、聖人しかいなくて、若林が来てもふたりは離れて話します。基本、若林が用心して距離をとっていて、聖人も気を使いながら、つい、若林に寄ってしまう。そのたび、若林がやや距離をとるのです。会話しながら、北村有起哉さんと新納慎也さんは、会話と別の意識を見事に演じています。さすがやわ〜。昔流行った静かな演劇みたいです。舞台の仕事の多いふたりですから、ミザンスを熟知しています。ミザンスとは立ち位置のことです。セリフがなくても、立ち位置によって関係性や役割がわかるようにできるのです。

若林はいったん帰りかけ、もう1回戻ってきて、そのたびに消毒しています(芝居が細かい)。そして、帰りに聖人と指切りをしようとしますが、それはエア指切り。このときのふたりの笑顔が良かった。距離をとりながら、若林は神戸のことをとても愛していることや、距離はとっているけれど、心ではみんなで乗り越えようと思っていることが感じられました。そして、聖人は自分から何かするタイプではないけれど、たぶん、このみんなが集いやすい場をつくりだす、なにか穏やかなものをもった人物であることが北村さんのたたずまいで感じられます。

ちなみに若林のマスクがやや小さいのは、やっぱりお役所だから、あのマスクを使用しているのかなと想像しました。

このすばらしい芝居が、前座のようなアヴァンだったとは。これで今日はおわりでいいと思うほど充実のちょっと長めのアヴァンでした。でも、このふたりの距離感がこの回全体に通底しています。

結は家に帰っても、マスクをしています。聖人に聞かれると「ねんのため」と答えます。病院に勤務しているから、自分がウイルスを持ち帰ってもいけないし、家庭で感染してもいけないし、けっこうピリピリしているでしょう。おむすびも、ラップで握るようになりました。おコメと手の間に透明な壁ができたのです。

こうして、隔たれていく人間関係。そのなかで、なんとかしようと、結(橋本環奈)たちは石田(吉田剛明)の提案で、日々の食事に短いお手紙をつけることにします。会話のない、味気ない、体調悪くて、不安な日々。そこに食事についた小さなメモ。献立の説明と、「しっかり食べて早く元気になりましょう」の励ましのメッセージ。これは素直に、いい話だなあと感じました。

コロナ禍で営業自粛に追い込まれた居酒屋きよしの女将・富枝(八田麻住)と料理人さぶ(藤木力)からの差し入れの美味しそうなお弁当は、最前線で働いている森下(馬場徹)桑原(姫海風)に食べてもらおうと塚本(濱田マリ)。このお弁当がすごく美味しそうで、結たちが考案した高齢者向けお弁当より断然美味しそうで。もちろん予算度外視のお弁当だからなのでしょうけれど。でもきよし、売上激減で大変そう。きよしのふたりが女将と料理人とか板前とか役割ではなく、名前がちゃんとついているのもいいですね(またひとこと余計なことを書く)。

ところが、せっかくの心づくしのお弁当も、食欲のない人もいるし、みんなひとりひと席、向き合わないように、同じ方向を見て食事です。まるで全体主義化した社会のようです。いつ食べられるかわからないから無理しても食べようと鼓舞する森下と、うつむいて暗い顔の桑原たちに状況の深刻さが伝わってきました。

配膳係が2名、濃厚接触者になり、結と石田が代わります。ここで、グリーンゾーン、イエローゾーンとレッドゾーンに院内が分かれていることがまざまざと見せつけられます。人と人とが数段階に分けて隔てられているのです。透明な壁によって。口数が極力少ない静かななかで、ビニールカーテンが閉められます。その奥ではコロナの患者さんが苦しんでいるのです。

コロナ禍、免疫をあげることが大事でした。食事も人と人との交流も免疫には大事な要素です。ひそかに視聴者から人気の柿沼(しまずい香奈)が、この機会に全館の献立を見直しを提案して考えたのも良かった。ドラマというものも免疫があがる一助なのだとしみじみ思います。

(文:木俣冬)

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–{「おむすび」第22週あらすじ}–

「おむすび」第23週あらすじ

第23週「離れとってもつながっとうけん」3/10-3/14


結がコンビニ会社からスカウトされた頃、横浜でコロナの感染が確認されるが、結の病院ではまだNST が精力的に巡回をしていた。

歩もファッションイベントの準備を着々と進め、気力を取り戻した聖人(北村有起哉)は理容の競技大会に参加する意思を固める。

ところが、日に日に全国で感染者が増え、大規模イベントの中止が要請されて歩や聖人はがっかり。

さらに愛子(麻生久美子)は佳代(宮崎美子)を心配して糸島に滞在することに。一方、結の病院でも感染者を受け入れることになり、結は患者との接触の減少で仕事のやりづらさを感じていく。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

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