インタビュー
新米ライター・ナオの突撃取材! 映画『白ゆき姫殺人事件』中村義洋監督インタビュー♪
新米ライター・ナオの突撃取材! 映画『白ゆき姫殺人事件』中村義洋監督インタビュー♪
中村監督に独占インタビュー!
原作は湊かなえさんの同名小説ですが、本作を映画化するきっかけを教えてください。
(中村監督)松竹のプロデューサーから「読んでみてよ」と原作を渡された事がきっかけです。
しばらくミステリーやサスペンスといった題材から離れていたのですが、読み始めたらアッという間に読み終わってしまって。いやぁ面白かった!それで、すぐに「やります!」と返事したんです。
本作では、Twitterで拡がる“ネット上の噂”を軸に物語が展開していきますが、演出する上で意識された事はありますか?
(中村監督)実は、僕はTwitterとかやらないんですよ!
今回は「SNSサイト」専属の助監督を配置して僕自身も色々調べました。
編集作業をしているうちに、ネット独特の“得体の知れない怖ろしさ”を出すため、台本には無かった事をどんどん増やしていったんです。
例えば、Twitter上のつぶやきを男性と女性の声を被せて表現してみたり。本当にTwitter 上で4~5人のグループを作ってつぶやいてもらい、これは実際に本編でも使用しているんです。
真央ちゃん、本当にありがとう!
井上真央さん演じる主人公・城野美姫は“地味でつまらない女”として描かれています。
井上さんといえば、天真爛漫で、はつらつとしたイメージを私は持っていたんですが、キャスティングの決め手は何でしょうか?
(中村監督)最初にキャスティングしたのが、真央ちゃんだったんです。
映画では実際キャスティングをするときに、名刺大ぐらいの写真を探してきて参考にしています。用意されていた色々な女優さんの写真の中に、パッと「誰?こんな地味なの!」って思った1枚があって・・・それが真央ちゃんだったんですよ。
多分、プロデューサーは“戦略”として、これぞ!っていう雰囲気の写真をワザと選んできたと思うけどね(笑)。
オファーした時の、井上さんの反応はどうだったんでしょうか?
(中村監督)実際その場にいたわけじゃないので、分からないけど…初めて顔合わせした時は、苦笑してましたけどね(笑)。
実は「よし!真央ちゃんでいこう」と決めてオファーも済んだ後、たまたま本人と廊下ですれ違ったんですよ。それまで僕は真央ちゃんに会った事がなくて、話した事もなかったんだけど…いやぁ、もう眩いばかりの可愛さだった(笑)!
やっぱり本物はキレイだし、すごいオーラを放っていて。だから、これは真央ちゃんがオファーを受けてくれるはずがない…って思ったんですよ。
受けてくれて、本当にありがとう(笑)!
撮影現場では、役柄同様に“地味な井上さん”が垣間見られたのでしょうか?
(中村監督)この作品は、主人公の“地味なOL”と同僚の“美人OL”を中心に物語が展開していくんだけど。
クランクインして、ほぼ最初の撮影が、真央ちゃんと“美人OL”役の菜々緒ちゃんとのツーショットだったんです。2人が並んだ時に、どれだけ真央ちゃんが“地味”になれるかが、この作品の肝だと思っていたのでドキドキしましたね。
でも、そんな心配はいらなかった!ちょっとした表情や目線とか…色々な要素があると思うんだけど、すでに彼女の中で“城野美姫”ができ上がっていて、僕らが知ってる“井上真央”はそこにはいなかったんです。
そのカットを見て、これは「できたな!」って安心しましたね。
冒頭から、画として井上さんが実際に登場するまで少し時間がありますよね。だから最初にスクリーンに映った場面の井上さんは、とても印象的でした!
メイクや衣装で、“地味なOL”役の雰囲気づくりはされたのでしょうか?
(中村監督)衣装合わせも3回くらいしましたね。主人公は“地味で面白みがない女の人”なんだけど“ダサい”って感じにまでなっても良いのか…すごく悩んで。
はじめ僕は“ちょっとダサくてセンスが無い”くらいの方が面白いんじゃないかな、と思っていたんです。だけど、真央ちゃんから「そうじゃない」って言ってくれてキャラクターが作られていったんです。
(中村監督)この物語って、ひとつの場面における出来事を、それぞれのキャラクターが各々の“主観”で証言しながら進んでいくんです。
なるほど。同一人物について証言していますが、あくまで、それぞれのイメージに過ぎないんですね。
(中村監督)そう。だから、周囲が持っている“地味なOL”というイメージに合わせるのではなくて、美姫自身にキャラクターを合わせた方がいいんじゃないか、って真央ちゃんの方から色々と意見をもらったんです。
でき上がりをみて、その選択が正しかったと確信しました。
「何が真実か分からない、この作品の真実」とは?
「何が真実か分からない」ということが、この作品の鍵となるように思いますが、監督が思う「この作品の真実」は何でしょうか?
(中村監督)そうそう、真実はないんだよ!美姫自身が回想するシーンもあるけど、それだって本人の“主観”だから、それが“真実”か分からないんです。
原作における「美姫の独白」が、映画では「美姫の回想シーン」として描かれているんですね。
(中村監督)ネットで拡がっていくのは“憶測”の世界。
ニュースだって言わば“一種の噂”だと思っていて。例えばノンフィクション作品でも、これまで知られていた事件を“別の視点”から描いたり、容疑者からの目線に光を当てたりすると、それまで“真実”と報道されていた物語と全く異なっていく事ってありますよね。
昔から、そんな題材を作品として撮ってみたかったんです。
ラストの井上さんの表情・・・私はあれで、さらに謎が深まりました(笑)
(中村監督)そうだよね、あの表情は絶妙(笑)。ラストシーンは肝だよね~!
さらに中村監督ご自身の映画観に迫ります!
お好きな映画をひとつ教えてください。
(中村監督)コーエン兄弟制作の『ファーゴ』(1996)ですね!これは劇場で観たときから大好きで、もう15年くらいずっとお気に入りですね。
特におススメのシーンは?
(中村監督)う~ん・・・全部好きなんだよね!実際に「こんな事が起こったらどうなるんだろうな」って思わせてくれるトコロがとても好きなんです。
映画監督になろうと思ったきっかけ、もしくは影響を受けた方は?
(中村監督)それは伊丹十三 監督の『マルサの女』(1987)ですね!ちょうど僕が高校生の時に、テレビ放送を録画して、繰り返し何度も観ていました。
この作品と出会う前は、卒業後の進路はまだボンヤリしていたんだけど…観終わったら志望が全て芸術学科系に変わってしまったくらい、強い影響を受けましたね。
それまでは映像業界には全く興味がなかったのですか?
(中村監督)全然なかったです。それをきっかけに「映画を創る」っていう仕事があるんだ、と気づいたんです。
ずばり中村監督にとって「映画」とは?
(中村監督)う~ん…もう色々考えすぎていて。今、思っているのは“面白い事をやるしかない”というコト。
2011年に東日本大震災があって。やっぱり、その頃は「人を元気にする・応援する作品」とかも、たくさん考えたりしたんです。
でも、人は“面白い・楽しいから元気になる”のであって、ただ「頑張れ!」って言っても頑張れないじゃないですか。それに、もともと僕ら映画監督の仕事では「人を楽しませる」事に精力を注ぐ事しかできないから…。
震災は、中村監督にとっても大きな影響があったんですね。
(中村監督)色々考えましたね、本当に。ちょうど僕は『映画 怪物くん』(2011)の編集作業をやってる頃で、「映画どころじゃない!」って思って被災地にも行ったりしたんだけど…。
その中で伊坂幸太郎さん(中村監督作品『ポテチ』(2012)、『ゴールデンスランバー』(2010)他 原作者)ともお互い色々と話をする中で「僕たちはこれまでやってきた事を、やるしかない」って言っていただいたんです。
それを聞いて、やっと「やっぱり、そうだよな」と思う事ができて、東京に戻って編集作業を粛々と再開しました…今でも覚えています。
私自身も、それまで“当たり前だと思っていた日々”の大切さを再認識しました。
(中村監督)そうだよね~。
最初に『白ゆき姫殺人事件』の企画をもらったのも、ちょうどその頃。
震災で被害を受けた方たちだけじゃなくて、なにか“つらい目に遭っている人”に、まずは「これ面白いな!」って思ってもらえる作品を撮りたかったんです、こちらから「元気にさせよう」じゃなくてね。
普段からミステリーやサスペンス作品が好きな僕も、原作を読み終わった後の衝撃はすごかった!このおもしろさを「映画にしたい」と強く思いましたね。
ここでシネマズから、恒例の“ムチャぶり”質問を!
もしハリウッドから監督にオファーがきたら、どんな作品を撮りたいですか?
(中村監督)何撮ってもいいってこと(笑)?!
もちろんです!製作費はハリウッドが負担します(笑)
(中村監督)だったら“日本の時代劇”しか考えられない!
日本の文化を伝えたい、という事でしょうか?
(中村監督)そうそう。日本人って昔から本当に面白いですよ!
こんなに真面目な人たちは世界を探しても他にいないんじゃないですかね(笑)?!そのDNAが僕たちにも引き継がれているから、今の日本があると思うんです。
最後に、シネマズ・ファンの皆さまに一言!
(中村監督)この映画を観終っても、まだTwitterに“つぶやける”か…ぜひご覧ください!
ありがとうございました!
インタビューを終えて
中村監督は非常に気さくな方で、終始笑いが耐えないインタビューとなりました。
作品の事はもちろんですが、東日本大震災で監督自身が感じられたことや、もし映画監督にならなかったら?という質問に対しても「実は俳優になりたかった」など、ご自身についても色々包み隠さずお話くださった姿が印象的でした。
『白ゆき姫殺人事件』は、この数年「ミステリーやサスペンスから離れていた」と仰る中村監督の皆さま待望のミステリー作品!現代ネット社会を軸に繰り広げられる先の読めない展開は、本当にハラハラしっぱなしです!ぜひ、皆さまもこの衝撃を劇場で体感してください~。
作品紹介
噂話や妄想がいつのまにか本当の話になっていく-。誰もが呑み込まれる“ゴシップエンターテイメント”!!
湊かなえ原作のサスペンス小説を、井上真央 主演で映画化。美人OLが何者かに惨殺される事件が発生、関係者の証言から彼女と同期入社で地味な存在の女性社員に疑惑の目が向けられるが…やがてネットの噂は“炎上”し、何が真実なのか誰もが疑惑の渦に呑み込まれていく。
映画『白ゆき姫殺人事件』は2014年3月29日(土)公開!
中村義洋監督
崔洋一監督、伊丹十三監督らの助監督を経て『ローカルニュース』(99)で劇場映画デビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』(07)の大ヒットで一躍注目され、『チーム・バチスタの栄光』(08)、『ジェネラル・ルージュの凱旋』(09)、『ゴールデンスランバー』『ちょんまげぷりん』(10)、『映画 怪物くん』(11)、『ポテチ』(12)、『みなさん、さようなら』『奇跡のリンゴ』(13)などコンスタントに作品を発表。
その力強い演出と人間を見すえる眼差しは高く評価されている。
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