オダギリジョー主演『Present for You』臺佳彦監督スペシャル対談・前編
はじめての方もそうでない方もこんにちは。
八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ Vol.6
今回は、スペシャル対談。
「いま、八雲ふみねが会いたい人」と、映画にまつわるアレコレ…をお届けします。
記念すべきスペシャル対談 第1弾のゲストは、臺佳彦さん。
あの「The World of GOLDEN EGGS」の生みの親。
CM「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズの企画演出も手がけてらっしゃる気鋭のクリエイター。
2015年2月7日に劇場公開した映画『Present for You』について、アレコレ伺いました。
東京・新橋。
古い雑居ビルの最上階にある怪しい会社「Present for You」。
ここで健康食品を売る梶原(オダギリジョー)のもとに不定期に届く、大きな荷物。
その中身は、社長(夏八木勲)の気まぐれで選ばれ、 袋詰めにされた人間。
梶原の本業は、彼らを “消す” ことだった。
ある日、大物政治家がオフィスに届けられて事態は思わぬ方向へと動き出す…。
映画『Present for You』は、パペットのクレイアニメーションと実写映像が融合した3D映画。
ひとりの登場人物を役者とパペットが演じ、ひとつのシーンの中に人間と人形とが入り混じる。
そして、観る者を摩訶不思議な世界へと誘っていく新感覚の映像体験が楽しめる一作です。
主演は、オダギリジョー。
ほか、風吹ジュン、青木崇高、佐藤江梨子、夏八木勲、柄本明と、日本映画界を代表する面々が顔を揃えています。
観終わった後、心の中にヘンなものが残ってくれたらそれでいい。
八雲ふみね(以下、八雲):私が最初にこの映画を拝見したのは、約2年前。当時は作品の持つ世界観にただただ圧倒されるばかりでしたが、今回改めて観て、とても熟成された映画だなと感じました。
臺佳彦監督(以下、臺):全部が全部一括りには出来ないけど、いまの映画って、同じようなものが多くて、観る側もそれに慣れてしまってるように感じるんですよ。昔は、もっといろんなタイプの作品があったと思う。
観終わった後で「なんだかよく分からないけど、なんか心の中がザワザワするな」って映画とかあったよね。いまもあると思いますよ、僕が気付いていないだけで。
でもいまの日本は「みんなが同じ方向を向いて、同じように感じることに安心している」ような気がして…。
だから、この映画みたいに新橋のビルの上から街を俯瞰で見ていると、いつの間にか自分もその中に入ってる…みたいな、不思議な手触りの作品があってもいいのかなと思って。
八雲:映画を見ていると、 “パラレルワールド” に身を置いたような感覚になるんですよね。
臺:いままでどおりの「映画の記号」を読み取ろうとしても、何も入ってなかったりはぐらかしたりしてるからね。
見覚えのある「記号」を探そうとする人からすると、この映画は「なんだこれ。つまんねえな」ってなるかもしれない。でも映画の見方は、人それぞれだから。観終わった後、ストーリーなんて覚えてなくてもいいんですよ。
心の中に何かヘンなものが残ってくれたら、それでいいんです。
出演俳優たちが僕の背中を押し続けてくれた
八雲:製作期間5年ということですが、最初に脚本を完成させてからスタートしたんですか?
臺:ううん。イメージ先行で、まずは撮影のシミュレーションをやったりキャラクターを作ったり…。2010年の終わり頃にようやく脚本が出来てきて、パイロット版を作って。
それから俳優さん、ひとりひとりに出演オファーをしました。まずマネージャーさんがうちのオフィスに来てくれて、パイロット版を見せながら説明すると、みんな口を揃えて「面白いですね」と。
そして、やっぱりみんな口を揃えて「うまく説明出来ないので、本人を連れてきます」って。
で、ご本人が来て、同じく説明してパイロット版を見てもらって。
オフィスまで来て下さった俳優さんは皆さん、即決で出演を決めて下さいました。
八雲:「これは参加してみたい!」と、俳優さんの本能を掻き立てるものがあったんでしょうね。
臺:夏八木勲さんにいたっては、うちのオフィスに現れたとき、すでに出演を決めて下さってたみたい。作品について説明してる最中、「君は何故、こんなに大変なことをやろうとしているの?」「どうしてこんなコトを思いついたの?」と、質問の嵐で…。
「こんな無茶を成し遂げようとしている君を応援するよ」とも、最初に会った時に言って下さった。心強い一言でしたね。
その言葉どおり、撮影中もずっと僕の後ろに座って、自分の出番じゃない時もずっと傍に付いててくれたの。
八雲:控え室に戻らないで、ですか?
臺:うん。カットが変わる毎に「ねぇダイちゃん、次はどうなるの? 教えてくれよ、君の頭の中にしかないんだから」って話しかけてきて。純粋に興味があったんでしょうね。
その傍らでは、風吹ジュンさんが「風吹カフェ」を開いて、みんなにお茶入れてくれて。
オダギリさんもほかの出演者も、そのカフェで寛いで…。
八雲:へぇ〜。なんとも和やかな撮影現場ですね。
臺:オダギリさんなんて、休みの日も自転車で撮影所に来てたんだから。
スタンドイン(代役)を使ってオダギリさんのバックショットを撮影する日があったんだけど、その日はオフのオダギリさんが撮影所にやって来て「僕、立ちますよ」って。アフロヘア被って衣装着てポジションに立ったら、今度は「(カメラ)回してもいいですよ」って言うもんだから、「あ、いい?」って回したら、助監督が飛んできたの。「オフの日に勝手にオダギリさんを撮ったら、あとで大変なコトになりますよ!」って叱られた(笑)。
でもそれだけ、この作品に積極的に参加してくれてたって思うと、ありがたいですよね。
八雲:オダギリジョーさんとは、第18回釜山国際映画祭(2013年)にも一緒に参加されましたね。
臺:大河ドラマの撮影中なのに、合間を縫って参加して下さって。しかも「僕、劇中のアフロヘア被りますから。持ってきてくれますか」って、連絡をくれて。
実際、アフロに黒のジャケットという梶原役のスタイルでレッドカーペットを歩いて下さいました。でも僕の方は、レッドカーペットなんて初めてだからさ。緊張して、頭の中が真っ白になっちゃって…。
ほら、カーペットの途中で立ち止まらなきゃいけないんでしょ。
八雲:プレス向けのフォトセッションですね。
臺:そんなこと、誰も説明してくれないから知らなくてさ。緊張のあまり、とにかくすごいスピードで歩いていく僕とは対照的に、普段はクールなオダギリさんが、ゆっくり歩いて周囲に手を振って笑顔を振りまいて…(笑)。
八雲:(笑)。臺さんの分も作品のアピールをして下さったと…。
臺:レッドカーペットは、パペットも一緒に歩いたんですよ。
ほかの作品は綺麗なドレス姿の女優さんとか歩いてるのに、うちはオダギリさんも僕も黒ずくめで、パペットをエスコート。プレスが集まる記者会見も、オダギリさんと僕とパペットでやって…。
黒いアタッシュケース持って会見場に入って、みんなの目の前でおもむろにアタッシュケースをカチャッと開けて。すると、中からパペットが出てくるの(笑)。
八雲:(笑)。釜山国際映画祭の中でもひときわ異彩を放つ、シュールな光景だったでしょうね。
臺:オダギリさんは「こういう番組に出るんですけど、作品のことに触れていいですか?」とか「今度、インタビューを受けていいですか?」とか、その都度連絡をくれて、自ら映画の宣伝に動いて下さって。
オダギリさんや夏八木さんをはじめ、俳優の方々が僕の背中を押し続けてくれた。そうして映画の公開を迎えることになって、ありがたい限りです。
後編に、つづく
スペシャル対談:『Present for You』臺佳彦監督スペシャル対談・後編
次回[後編]は、実写とクレイアニメーションが混在する本作の撮影秘話についてのアレコレ。
どうぞお楽しみに。
臺佳彦
1960年生。鳥取県立米子東高等学校卒。横浜国立大学建築学科設計意匠卒。広告代理店ADK在職中はCMプランナー・プロデューサー・CMディレク ター。フリーランスを経て、2001年株式会社プラスヘッズ設立。ドラゴンクエストシリーズやファイナル・ファンタジーシリーズのTV-CMの企画演出。
2004年からPLUSheadsオリジナルコンテンツの企画制作をスタートし、クリエイティブディレクター・プロデューサーとして、アニメ「The World of GOLDEN EGGS」シーズン1&2 を制作。2009年、スーダン ダルフール紛争をテーマにしたスペイン・オランダ合作映画「SING FOR DARFUR」を日本国内で配給し、全国の大学でリレー試写会を開催。2010/2011「大阪創造取引所」アワード審査委員長。2012~「ナレッジ キャピタル うめだきた グランフロント大阪 キュレーションコミッティ」メンバーを勤める。2009年から映画「PRESENT FOR YOU」の制作をスタート。3Dでのストップモーション撮影スタジオも同時に設立。
Present For You
2015年2月7日から新宿バルト9ほか全国3Dロードショー
監督・脚本・プロデューサー・ステレオグラファー・撮影監督(パペットアニメーションパート):臺佳彦
キャスト:オダギリジョー、風吹ジュン、青木崇高、佐藤江梨子、藤木勇人、永島暎子、山田麻衣子、石丸謙二郎、夏八木勲、柄本明 ほか
©2013 PLUSheads inc.
「Present For You」公式サイト
八雲ふみね fumine yakumo
大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
「シネマズ by 松竹」では、ティーチイン試写会シリーズのナビゲーターも務めている。
八雲ふみね公式サイト yakumox.com
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