音楽そのものが主人公の映画。
さそうあきら作の漫画「マエストラ」が原作とのこと。
原作漫画を読んだことはないが、2次元で音をどのように表現しているのか興味深い。
その点、映画なら音楽を付加して価値を上げることが可能。
狙い通り音楽そのものが主人公と言える映画に仕上がっていた。
音楽の世界でマエストロといえば指揮者、音楽監督、作曲家、師匠のこと。
この映画で指揮者天童を演じたのは名優西田敏行。
いくら名優といえどそれらしく指揮者を演じるのには相当苦労しただろう。
香坂を演じた松坂桃李もヴァイオリンの特訓を行って臨んだとのこと。
楽器演奏の素養がないためどのくらい本物にせまれているのかわからないのは残念。
指揮に関しては佐渡豊監修といううたい文句を信じるほかない。
プロの忌憚ない意見がききたいところ。
映画は、香坂真一がコンサートマスターをつとめていた中央交響楽団が資金難のため解散。
ミュンヘン楽団のトライアルをうけるも不採用。
うつうつとしているところに、楽団再結成の話が持ち込まれるところから始まる。
謎の指揮者天童による落ちこぼれ楽団再生ストーリーが物語の軸。
お話は、二つのミステリーによって牽引される。
ひとつめは、天童がいったい何者で香坂とどういう関係なのか。
もうひとつはそもそも天童がいったい何を目的に楽団を再結成したのか。
さらに各楽団員の思惑や謎のフルート奏者の話とてんこ盛り。
色々な話が盛り込まれていた。
が、印象に残ったのはやはり音楽に関することだった。
香坂がみるという「音だけの夢」。
「音のない音」「天籟の音」音に関する数々のセリフ。
音痴にはちと難しい。
イメージだけでわかった気になってはいけないのだろう。
音楽テーマ面では香坂の閾値突破の話が興味深かった。
彼はもうひとつ壁が破れずにいた。
そのためミュンヘン楽団も不採用になってしまった。
閾値をかるがると突破する人もいるが少数。
彼だって集中的に練習して高度のレベルに達している。
マエストロとの出会いが彼に閾値突破のきっかけを与える。
その瞬間を活写した映画を見たことなかったので感心した。
ラストでは天童の目的が一応解明されたようにみえた。
が本当はどうでも良かったのではないか?
病気の妻に聴かせるのはただの口実。
天童は、ただ好きなことをしていただけ。
「音楽は一瞬で消えてしまう。その一瞬の音を皆で共有すると永遠になる」
そんなに音楽が好きなら、何で好きな音楽をやらずに何十年も過ごしていたのだろう?
好きなことがあるなら、寄り道せずにその道を極めるべき。
天童自身にもマエストロが必要だった。(笑)
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