大泉洋主演・映画『駆込み女と駆出し男』鑑賞前に読みたい書籍4冊


『東慶寺と駆込女』(著・井上禅定/夕隣新書)


東慶寺と駆込み女



東慶寺の住職を40年も勤められた方の書籍です。先の2書籍が原作や漫画などエンターテイメント色が強い作品でしたが、本書はもっと歴史に重点を置きつつも、著者の過去の書籍や講演内容をミックスさせて現代語で分かりやすく解説してくれている書籍です。

お寺の法律(寺法)や駆込み案件の記録にとどまらず、東慶寺にまつわる江戸時代の川柳や駆込み女の、寺内での生活、各種記録がまんべんなく集まっています。それらの内容が分かりやすく説明されているため、難しく考えることなく頭にすぅっと入ってくる感覚がありました。

東慶寺の門前には御用宿というものが実在し、その中の1つが柏屋といい、代々『源兵衛』という名前の人が当主だったということも書かれています。これは映画の設定にも生かされており、映画では樹木希林さんが好演しています。

とりわけ東慶寺に関する川柳の解説は面白いものでした。そもそも駆込み寺という存在は男女の人情・感情に絡むことです。そして川柳は人情をうまく歌い上げるものですから、駆込む女性や追いかける男性の気持ちが大変上手にあらわされているのですね。

著者がそれを平易に説明してくださっているため、当時の男女の気持ちが手に取るようにわかる気がしました。

ある程度歴史や江戸時代の知識がある方で、東慶寺や縁切り寺の実態を学びたい、という方には最適なのではないでしょうか。

駆込寺陰始末(著・隆慶一郎/光文社文庫)


駆込寺陰始末



人気漫画『花の慶次』の原作であり柴田錬三郎賞受賞作である『一夢庵風流記』の作者・隆慶一郎さんが鎌倉・東慶寺を舞台に描いた小説がありました。作者の死去もあって短編4作しかありませんが、隆慶一郎ワールドが堪能できる作品と言えるでしょう。

時代は徳川吉宗(時代劇・暴れん坊将軍のモデル)が将軍であった享保のころ。同じ江戸時代とはいえ映画の中の設定から100年くらい前です。東慶寺は鎌倉時代からの縁切り寺ですから、享保の時代も当然存在していまいた。

このころ入山して住持となった玉渕尼(ぎょくえんに)に降りかかる難問を門前の煎餅屋さんの居候・麿がかげひなたになって助けるストーリーです(この『煎餅屋さん』も『東慶寺と駆込女』に登場します)。

ストーリー上、駆込み寺に来る女性がそれまでに受けている迫害がきつく、女性視点で読むと若干辛いかもしれません。ただし隆慶一郎さんファンであれば随所に"らしさ"を感じることができるのではないでしょうか。

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