インタビュー

2015年06月09日

「人魚になりたかった」、「この身体すべてを燃やし尽くしたい」トイレのピエタ完成初日舞台挨拶書き起こし!

「人魚になりたかった」、「この身体すべてを燃やし尽くしたい」トイレのピエタ完成初日舞台挨拶書き起こし!

2015年6月6日、新宿ピカデリーにて映画『トイレのピエタ』初日舞台挨拶がおこなわれました。登壇したのは、主役の宏を演じるRADWIMPSの野田洋次郎さん、ヒロインの真衣を演じる杉咲花さん、そして松永大司監督の三名です。

シネマズではこの舞台挨拶の模様を書き起こしでお届けします。

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最初に挨拶したのは主演の野田洋次郎さん

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野田洋次郎さん(以下、野田):「こんにちは、野田洋次郎です。今日は本当に来てくれてありがとうございます。監督と出会ったのが2年前で、撮影に入ってから1年ぐらい経ちました。半年前、3ヶ月前と、『もうすぐ公開だね』と言いながら、この日が来たことを本当に心から嬉しく思います。僕の人生にとっても凄くかけがえの無い体験をさせてもらった監督と杉咲花、共演者のみんなとスタッフに心から感謝しています。そして今日、観てくれた皆さん、本当にありがとうございます。幸せいっぱいです。」

杉咲花さん(以下、杉崎):「こんにちは、杉咲花です。今日は本当にありがとうございました。みんなの顔を見ていると泣きそうです。本当に松永さんは素晴らしい監督で、凄く演技指導が厳しかったのは間違いなかったのですが、こんなに愛情を持って最後まで信じてくれた監督は初めてで、松永さんと出会えただけでも本当に大きな財産です。

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洋次郎さんは、ちょっと生意気で申し訳ないんですけど、ホントにホントにがんばっていたんです。ホントにがんばってたから、だからスタッフのみんなが洋次郎さんのこと大好きだったし、ピエタのチームは素晴らしかったので今日こうやって無事に皆さんのもとに届いたんだと思います。本当に今日、来てくださってありがとうございました。」

杉咲花さんのお褒めの言葉にお礼をする野田洋次郎さん。
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松永大司監督(以下、松永):「はじめまして、監督の松永です。顔ばっかりだなぁと思うぐらい座席が埋まっていて嬉しいです。さんざん今まで杉崎には怖い怖いとかひどいひどいと言われ続けていたら、いまこんな言葉を貰って涙ぐんでしまいました。

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ここに立っている3人を含め、キャスト、スタッフ含め一生懸命作りました。この中(観客)の一人でも二人でも、この映画が心の本当の奥底まで届いていたらいいなぁと思います。今日はありがとうございました。」

司会:「野田さん、こうして観終わったお客様の前に舞台挨拶に立つというのは初めてですか?」

野田:「初めてです。恥ずかしいですね。みんなが俺のお尻を観たんだなと思うと(笑)でもこの日が待ち遠しかったのでほんとうに嬉しいです。」

司会:「撮影中、監督から演技指導やお芝居に関するリクエストは無かったと伺っているのですが、窓拭きだけは練習をされたという話をお聞きしましたが?」

野田:「この映画をやることが決まってから撮影まで1年ほどあって、僕も合間合間で演技のレッスンをそろそろやった方がいいんじゃないでしょうかと進言していたんです。でもことごとく丁寧に断られて、『そんなことする必要はないよ』と。8月から撮影開始だったんですが、1月のとある日に窓ふきの用具一式を(松永監督が)僕の家に持ってきて『洋次郎、これだけはやってくれ』って。」

松永:「そこで練習を。」

野田:「僕の家の風呂場とかを、ひたすら野郎二人が風呂場でこう(笑)それもまた厳しいんですよ。『あ、洋次郎、それは違うんだよ』と、淡々とやってました。」

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松永:「本当に手取り足取りやっていましたね。」

野田:「半年以上に渡って僕はコツコツと、家のありとあらゆる窓を拭いていましたね。僕も凝り性なので、やってくと気持ちよくなってくるし、どうやったら綺麗にうまく拭けるんだろうとコツコツ分かってくる感じもあって。あっ、宏ってこんな気持ちだったのかなと思いながらやっていると、だんだん近づけていけるような気がして。そういう狙いもあったんですよね。」

松永:「撮影中に、窓拭きだけは嘘は付けないと思って、それさえできれば洋次郎は完璧だと本当に思っていたんです。結構、こまめにメールしてたよね。」

野田:「用があってメールが来ると、本題の後に『ところで窓は拭いていますか?』って必ず(笑)。撮影前日も拭いていましたしね。」

司会:「それだけ宏を映し出す上では、大切な行動だったんですよね。」

松永:「そうだと思います。観てもらった人もそう思うかもしれないですが、洋次郎の窓拭きが身体に馴染んでいるのを見たとき、やっぱり凄いなぁと。上手いなぁと本当に思っていました。仮に、万が一、職を全部失っても窓拭きになれるよと。」

野田:「ありがとうございます!(ガッツポーズ)」

司会:「杉崎さんはプールのシーンが素敵で、泳ぎがとっても上手だと思いましたが、練習はされたんですか。」

杉崎:「してないですね。真衣は水が好きなので、現場に入る一ヶ月前ぐらいからプールには通ったんですが、泳ぐ練習はしてなかったです。

(私は)小さいころ、人魚になりたかったんです。友達とも人魚になろうと言ってたりしてて・・・。だからですかね。」

野田:「大丈夫、『人魚になりたかった』って(記事の)見出しになるから(笑)」

杉崎:「監督からは、どうやって泳げとは言われなかったので自由に。」

司会:「自由に泳ぐとあんな感じになるんですね。このシーンは何回かテイクを重ねたんですか?」

松永:「テイクを重ねてるんではなくて、ずーっと泳いでもらってたんです。金魚は本物なので、金魚だけはいくら僕がどんなに厳しくても演出できないので。金魚投げました入れましたって。それで助監督が『金魚は一箇所に集まる習性があるらしいです』と。じゃあ、それでやってみよう。そこに入ってもらい、とにかく泳いでもらうのをずーっと撮り続けていました。」

野田:「監督もカメラチームもみんなプールの中にいたので、楽しそうだなと・・・。」

杉崎:「落ち葉拾いしてましたよね!落ち葉拾い!!」

野田:「テンションのギャップがよくわからない(笑)。そう、周りに木があるので・・・、なんで俺がフォローしているのかよく分からないですけど、木って言っても誰も分からないので説明すると、風が強くて木が周りにあるのでプールにどんどんどんどん落ち葉が溜まるんですね。それを僕はひたすらすくってたっていう。」

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松永:「洋次郎は服を濡らすことができないので、ずっとプールサイドで羨ましそうに見てたよね。」

野田:「あと、離れすぎた金魚をまたすくって・・・。」

松永:「完全にスタッフとして支えてくれてましたね。」

野田:「やれることはみんなでやろうと。そんな現場でしたね。」

杉崎:「でもプールの中で泳いでいたとき、金魚が居ると思って行ったら落ち葉だったんです。だからちょっと拾い忘れてました。」

(会場爆笑)

野田:「絶対おかしいでしょ、この場で言うのは。一番、言わなくていいやつでしょ(笑)」

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司会:「今までご存じなかったんですか、このお話?」

野田:「今はじめて聞きました。一年越しに落ち葉の苦情をもらいました。」

司会:「長い時間泳ぐのは疲れませんでしたか?」

杉崎:「大丈夫でした。泳ぐことに必死だったので、でも、泳ぎ終わってから結構泳いだなぁと感じました。50分ぐらい泳いでいたので。」

司会:今日の登壇者のみなさんにとって、宏と真衣のような魂の触れ合い、出会いという経験をされたことはありますか。」

野田:「ありますあります。あります・・・。あります・・・・?うーん、ありますか!?

宏と真衣のようかは分かりませんが、僕はそういう人を求めています。せっかく生まれてきたからには、自分の中がどうしようもなく震える瞬間になるべくたくさん出会いたくて、人との出会いも、今日のこの出会いもそうですけど、揺さぶられたい気持ちがいつでもあって。一番は今のバンドメンバー、RADWIMPSの3人と出会えたのは奇跡のようなものだと思っています。家族より、恋人より長い時間一緒に居ながら、わがままなことを言って、醜いところを見せ合って、それでも一緒に居られる関係というのは奇跡だと思います。」

杉崎:「母ですかね。母が居なかったら、私はここに居ないので。」

松永:「その時その時で、そういう人たちと出会える瞬間というのはあると思います。この映画自体もそうだと思っていて、これ(トイレのピエタ)をやりたいと思ってから野田洋次郎という人に出会い、男女の関係じゃないところで、深いところで繋がっていると思っています。杉咲花ともそうで、そうじゃないとこの作品は作れなかったと思います。」

会場質問1:「親孝行について考えたことはありますか。」

野田:「あります。いま一番思う親孝行は、お父さんお母さんより長生きすることだと思います。これは間違いないことで、宏を見てもわかる通り、お父さんお母さんの気持ちは、自分の子供は、どんな次元で、どんなベクトルで、どんな大きさであれ愛しい存在だし、血の繋がりというのはそれだけでどれだけ憎みあったって途切れるものではないから、あなたが長生きするというのがなによりの親孝行。僕も褒められた生き方を特にしてこなかったので申し訳ない思いでいっぱいだけど、一つのことをやり続けてこういう場所に立てたりとか、自分の好きなことをやり続けて一つなにか形にできたりする瞬間に、一つずつ親孝行できたなと感じています。まっすぐにやりたいことをやるというのが、何よりの親孝行なのではないかと思います。」

会場質問2:「この作品の中で監督が一番伝えたかったこと、苦慮したことはなんですか?」

松永:「物語の内容とは別のところで大切にしたところは、いま横に立っている二人(野田洋次郎と杉咲花)の関係性というか空気感です。ドキュメンタリーとはいかないまでも、嘘のない感情でカメラの前に立ってもらって、それをぶつけあってもらって、二人の化学反応、爆発してく瞬間を撮れたらいいなと思って、それは大切に現場でも考えていました。役なのか自分なのか、演じている二人は本当に苦しかったと思うんですが、それを引き出したい、カメラに焼き付けてスクリーンに写したいということに配慮しました。」

会場質問3:「トイレのピエタを通して、作品を作る前と後での気持ちの変化があれば教えてください。」

野田:「初めてあんなにリアルに死んでいくという気持ち、恐怖を味わったことです。今まで、死ぬだ生きるだということを散々歌ってきた気がしていたんですが、初めてあそこまで僕の中で真に迫る体験ができて。本当に僕はラッキーだと思っています。宏は死んじゃったけど、俺はまだ生きていて、俺はやれることがあってやりたいことがあって、それを形にできるこの身体があって、その喜びを撮影前から何千倍と噛み締めながら毎日生きています。いつ死んじゃうから分からないから、なおさら僕はいま、この身体のすべてを、細胞を使い切りたい、燃やし尽くしたいと思っています。宏の分まで、こんな一瞬の命だし、こんなちっぽけなたった一つの存在だから、別にこんなちっちゃいんだったら本当に使いきってやろうと心から思っています。それがこの作品にであえての一番の喜びです。」

司会:「最後に本日お越しいただいたお客様に向けてメッセージをお願いします。」

野田:「本当に観ていただいた方々の顔を見れて幸せいっぱいです。どうでしたか、おもしろかったですか?」

(会場拍手)

野田:「僕はこの映画を観たとき思ったのは、100人居て100人に届く映画ではないと思っています。それで僕はいいと思っています。僕が自分で曲を作るときも、100人居て100人に届けようとするとどうしても薄まる何かがあるんです。僕はそういう歌じゃない歌をうたおうといつも思っていて、この映画の企画をもらった時も僕は同じことを感じたんです。100人居て、何十人かには届かないかもしれないけど、残りの人たちに奥奥深くまで届く作品だと本当に思ったんです。僕はそういう作品が好きだし、そういうものであって欲しいと心から思いました。

あなたの明日からがちょっとでも変わればいいと思っています。今まで言えなかった一言が言えるようになったり、仏頂面でただ終わっていたところを一歩踏み出してみたり、学校や仕事に行く時に思いとどまっていた気持ちが開けたら、この上ない幸せです。監督もこれからあなたの力になる作品を撮り続けると思いますし、杉咲花も日本を背負って立つ女優になるだろうし、僕も負けないぐらい音楽で伝え続けたいと思っています。今日は僕たちの大事な大事な作品を目撃していただきありがとうございました。」

松永:「本当に映画を観ていただいてありがとうございます。映画は観てもらってはじめて完成すると思っています。いろいろな人の力でここまで来ましたが、公開後は皆さんの力を借りてこの映画を広げさせてください。これ以上のことは僕らの力ではなかなかできないです。観ていただいて良かったと思ったら周りの友だちに薦めてください。Twitterやブログなどに書いて、ひとりでも多くの人に届けるのは皆さんの力を借りないとできないです。本当にありがとうございます。よろしくお願いします。」

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なお、新宿ピカデリーにはトイレのピエタで使われていた衣装やグッズの展示も行われています。新宿に立ち寄った際はぜひご覧になってください。

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あなたの魂が震える映画「トイレのピエタ」は全国の映画館で絶賛公開中です。

(取材:染谷昌利)



(C) 2015「トイレのピエタ」製作委員会

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