塚本監督:人間はむしろちっぽけな存在―『野火』終戦記念日トークショーレポ
本作で描かれたリアルな当時の時代背景について聞かれた森優作さんは「戦争といっても、日本映画の戦争が自分の中でスタンダードだったので『野火』は自分にとって衝撃的だった。実際にこういうことがあったんだという事実を知れただけでも、自分の中で考え方が変わったので、すごい経験になった」とコメント。
大自然のものすごい美しさと、人間だけが泥んこになっていく
また、塚本晋也監督も「森くんが実感がないという以前に、30歳上の僕の世代でも、僕が生まれた時は高度成長の真っ只中で、戦争の面影はまったくなかったんで、僕も全く戦争のことよくわかりませんでした。『野火』を作るって思ってからもよほど意識的に勉強しないと戦争が実際にどういう時系列でどうなったかというのは全然わかんない」と戦争について語られました。
本作で監督でありながら主演をつとめたことに関して「実は自分が演じるというのは最後の手段だったんで、これは自分が出ないで作りたかったんですけど、何十年も考えていた企画だったんで、一心同体みたいになっていた。意識の底にある『野火』への想いが、作り手と演じ手として一心同体にした」と、演じる上では無意識な状態で演じていたと、観客からの質問に対して答えた。
市川崑監督作の『野火』を意識したかとの質問には「市川崑監督は大尊敬して、監督作の『野火』も観ているんですが、あくまでも原作の影響が強かった」と語り「ひたすら原作に近寄りたいと思っただけだった。大自然のものすごい美しさと、人間だけが泥んこになっていく、自分は人間はむしろちっぽけな存在として、自然との対比を描きたいと思った」と語られました。
その後も時間いっぱいまで観客からの質問に答え、拍手の中トークショーが終了となりました。
映画『野火』は渋谷・ユーロスペース、立川シネマシティほか全国順次公開。
(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
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