若手女優たちの魅力を引き出すための ホラー映画『劇場霊』
今回はホラー映画の紹介なので、ネタバレは避けたいところなのですが……(あ、だから気になる方は鑑賞後に読んでくださいね)。
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~ vol.65》
『劇場霊』ってタイトル、ちょっと違っちゃいませんかね?
ホラー映画版『ガラスの仮面』?
『劇場霊』のストーリーは、なかなか役に恵まれない若手女優・水木沙羅(島崎遥香)が、気鋭の演出家(小市慢太郎)の新作舞台『鮮血の呼び声』のオーディションを受け、実は主役の座こそ同じ事務所のスター篠原葵(高田里穂)に内定してはいたのですが、そこで知り合った同じ境遇の女優・野村香織(足立梨花)ともども端役を勝ち取りました。
しかし、その後、劇場の中で謎の殺人事件が起こります。しかも、その死体は死蝋化(長期間空気との接触を断つことで、遺体の脂肪が蝋状化すること)していたのです……。
ここまで記すと、本作が『ガラスの仮面』のごとき世界観の中で繰り広げられるホラー映画であることがおわかりいただけるかと思います。
一方で、おそらく予備知識なしでこの映画に接する方々のほとんどは、劇場に棲みついた霊の恐怖が描かれるものと思われているのではないでしょうか。
違うんだなあ、これが……。
(はい、以下ネタバレです)
この映画に登場する劇場に、霊なんか棲みついていません。
舞台の小道具として劇場に運ばれてきた等身大の人形に、霊が棲みついているのです。
もっとも、その事実はオープニングの段階であらかた匂わせているので、さほどネタバレというほどのものではないのかも。
で、当然ながら、この人形が人を襲い始めるわけなので、『劇場霊』というよりは『人形霊』のほうがふさわしいのではないかという気もしないではありません(同じ邦題の韓国ホラー映画もありますが)。
おそらく今回は、映画撮影所に霊が棲みついているという設定の『女優霊』(96)で映画監督デビューを果たし、その名を高めた中田秀夫監督による最新ホラー映画ということで、こういうタイトルにしてみたのでしょうが、逆に『女優霊』のノリを期待して見に行くと肩透かしを食らうことにもなるでしょう。
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