『ズートピア』監督が語った、この世界観を思いついた「きっかけ」とは?

INTERVIEW

4月23日(土)に全国公開されるアニメーション映画『ズートピア』の来日記者会見が行われました。

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『ズートピア』は批評サイトRotten Tomatoesで99%を記録する超高評価。全米では3週連続1位を記録する大ヒット。評価面でも興行面でも『アナと雪の女王』を超えるほどの作品となっています。

記者は一足先に本作観賞させていただいたのですが、これがもう2015年ベストどころか、オールタイム(生涯)ベスト級の大傑作でした! とくに “差別に根付いている問題”を描ききった作品としては完璧である、と思えたほどです。

ここでは、本作の監督であるパイロン・ハワード氏とリッチ・ムーア氏、そしてプロデューサーであるクラーク・スペンサー氏によるトークの模様をお届けします。なお、以下のインタビューにはネタバレはいっさいないので、安心してお読みください。

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水飲み場を見て思いついた“共存ができる世界”

——『ズートピア』の作品を手がけたきっかけを教えてください。

パイロン・ハワード氏(以下、バイロン) 5年前に『塔の上のラプンツェル』という作品を仕上げた後、ジョン・ラセターに「言葉を話す、2本足で歩く動物が出てくる映画を作りたい」と申し出たんです。そのとき、ジョンは「ディズニーでは、長い間そうした“動物もの”はなかったんだよ!素晴らしい案だ!」と大興奮して、僕を抱きしめるどころか両手で持ち上げてくれたんです(笑)。ジョンはそれくらい力持ちなんですよ。

——『ズートピア』の世界はさまざまな動物がいっしょに暮らすことができる、誰もが夢を叶えられる、とてもユニークな場所になっています。この世界は、どのようにして思いつかれたのでしょうか。

バイロン 私たちはフロリダのディズニー・アニマルキングダムへ出かけるなどして、1年以上かけて動物の調査を行いました。ケニアに訪問したときは、水飲み場でライオンとガゼルとシマウマがそばにいて、いっしょ水を飲んでいるという光景を目の当たりにしました。“捕食する側”と“捕食される側”が共存できる社会がそこにあったんです。そこから、“意見が合わなかったとしても、いっしょにいることができる世界とはどういうものか”と考えて、この『ズートピア』の世界が出来上がりました。

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——ネズミがとても小さかったり、ライオンが大きかったりなど、動物たちが実際の縮尺そのままであることに驚きました。なぜこのような描きかたになったのでしょうか。

リッチ・ムーア氏(以下、リッチ) この映画に出てくる動物を“人間のコスチュームを被ったようなもの”にはしたくなかったんです。そこで、私たちは小さい動物、大きな動物、それぞれの見た目やしぐさのひとつひとつを丁寧に創っていくことにこだわりました。
『ズートピア』は、“まるで人間のような感情を持つ動物”と、“自然界のありのままの動物の姿”というふたつを描いているという意味でも、とても野心的な作品であると思います。

03

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–{日本人が共感できる要素も!?}–

大ヒットとなった3つの大きな理由とは?

——本作は世界中ですでに大ヒットを記録しています。ここまで世界の人に受け入れられたのには、どのような理由があると思いますか。

クラーク・スペンサー氏(以下、クラーク) 大きな3つの理由があると思います。
ひとつ目は“世界観”です。非常に複雑かつ、ディテールもしっかりしているので、そこに惹かれる方はきっと多いでしょう。そのスケールの大きさは、ディズニー史上もっとも大きいものと言ってもいいでしょう。
ふたつ目は“観ていて楽しい”ことです。本作にはディズニーでは珍しい“事件の捜査”というミステリーとしてのおもしろさがあるのです。主人公のジュディとニックの関係などを描いた多層構造の物語も、高く評価していただいた理由のひとつでしょう。
3つ目は“できることは、世界から押し付けられるものではなく、自分で見つけるものである”というメッセージにあると思います。このメッセージが多くの方に響いたのではないでしょうか。

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日本人スタッフが実現した夢とは?

——ウサギのジュディと、キツネのニックのキャラクターがとても魅力的でした。ふたりがどのように誕生したのか、教えてください。

バイロン ジュディは純真で、正義感に溢れた女性です。一方で、力強さや運動神経のよさも表現しなければならなかったので、けっこう苦労したところがありますね。彼女は、出会った瞬間から好きになれるキャラクターになったと思います。
ニックは世の中を冷めた目で見ているような “皮肉屋”なのですが、カリスマ性がなくてはいけないというプレッシャーがありました。彼はずる賢いところがあるのですが、ジュディによっては良いパートナーになれる、というキャラにしたかったんです。
一見正反対のようなふたりですが、じつはある共通点もあったりします。映画では、ふたりの友情、タッグを組んで夢を叶えていく様子が描かれていますので、ぜひ楽しみにしてみてください。

——ジュディが“親元から離れてひとり立ちをする”様子など、多くの方が共感できるシーンがたくさんありましたね。

バイロン 映画の素晴らしさには、自身をキャラクターに投影して、“まるで自分のようだ”と思うことができることにもあります。この物語がたくさんの日本人に共感していただけるのであれば、これほど作り手としてうれしいことはありません。
また、ディズニーには宮崎県出身の女性スタッフがいます。彼女は小さい頃からずっとディズニーで働くことを夢見ていましたが、周囲からは「そんなのできっこない」と言われていました。その彼女が決して諦めずにアメリカに渡り、ジュディと同じように夢を実現させたことは、本当に素晴らしいことです。

リッチ そういえば、日本では『ズートピア』が新入学、新生活を始められる春に公開されるんですね。ジュディのように故郷を離れてひとり暮らしをすること、第一歩を踏み出すということは、多くの日本人に共感していただけると思います。
また、本作では“世の中はそんなに甘くない”、“厳しい現実に直面する”ということも描いています。それでもジュディはがんばるのですが、やがて自分の弱さにも向き合って行きます。いままでのディズニーヒロインにはなかった、 “自己発見の旅”を見届けてほしいですね。

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–{上戸彩とサバンナ高橋が登壇!}–

『ズートピア』の吹き替え版では、女優の上戸彩さんが主人公のジュディを、お笑い芸人のサバンナの高橋茂雄さんがチーターのクロウハウザー役を務めています。記者会見で登壇したふたりは、役が決まったときの喜びを語りました。

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——役が決まったときの喜びを教えてください。

上戸彩さん 今回の吹き替えのお話をいただいたのは昨年の夏ごろでした。ちょうど新しい家族が増えたころだったので、家族に自慢できる、と思ってすごくありがたい気持ちになれました。

高橋茂雄さん 職業がら、「ドッキリだな、いつネタばらしされてもリアクションとれるようにしよう」と思っていたのですが、いまでは「本当にディズニー作品に関われるんだ」という実感が湧いてうれしいですね。姪っ子、甥っ子、相方もとても喜んでくれました。

——本作では主人公のジュディが夢を叶えていく様子が描かれています。おふたりは、いま叶えたい夢はありますか。

上戸彩さん この映画が大ヒットすることが夢です。

高橋茂雄さん 僕が演じるチーターのように、みんなにドーナッツをもらったりして、愛される存在になるのが夢ですね。

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バイロン氏は上戸彩さんの演技について「アニメでは声はとても大切な要素です。上戸さんにはさまざまな感情を込めていただきました。すばらしい役者である上戸さんに演じていただいてうれしいです。」と賞賛しました。
また、リッチ氏によると、チーターのクロウハウザーは“警察署で初めに出会う、愛されている親しみやすい人物”であったため、“大の友だち好き”という噂の高橋さんがぴったりということでキャスティングされたのだそうです。

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最後に、動物に扮した“ズーラシアンブラス”のメンバーが、本作の主題歌“トライ・エブリシング”を演奏してくれました。演奏を聴いたリッチ氏は「最高だ!僕はこういう音楽を聴いてきて育ったんだよ!」と賞賛しました。

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『ズートピア』は4月23日(土)より全国ロードショーとなります。

余談ですが、本作ではキツネのニックに森川智之さん、ズートピア市長のライオンハート役に玄田哲章さん、スイギュウでズートピア警察署長のボゴ役に三宅健太さん、ヒツジのベルウェザー副市長役に竹内順子さんと、実力と人気を兼ね備えた方々が吹き替え声優に名を連ねているとのことです。吹き替え版も大いに期待しましょう!

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(文:ヒナタカ)

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