映画コラム

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2016年03月30日

『リップヴァンウィンクルの花嫁』感想&観る前に知ってほしい「10」のこと

『リップヴァンウィンクルの花嫁』感想&観る前に知ってほしい「10」のこと


6.『機動戦士ガンダム』を知っているとよりおもしろい?


本作に登場する“なんでも屋の男”の名前は、カタカナで書くと“アムロユキマス”です。『機動戦士ガンダム』の有名なセリフ“アムロ、行きまーす”をモジっているわけです(笑)。

このほか、SNS上に登場する“ランバラル”は、これまた“ザクとは違うのだよ、ザクとは!”という名言を残した“ランバ・ラル”というキャラクターが元ネタです。これはガンダム好きには笑ってしまうところでしょう。

そのほか、主人公の女性が使っているハンドールネーム“クラムボン”と“カムパネルラ”は、宮沢賢治の作品に登場する名前です。こうしたフィクションの要素が作中に登場するのも、魅力のひとつです。

7.主人公の女性は“いままで男性に縁がなかった”人間である


『リップヴァンウィンクルの花嫁』の原作小説において、主人公の女性は男女の付き合いや性行為という“男女の一線を越えること”にとても抵抗感を覚えている人物である、と描かれています。

これを知っておくと、黒木華演じる彼女が冒頭でSNSに書き込む文章の意味を、より深いものに感じられるのではないでしょうか。

8.原作小説を読むと、より理解が深まります


原作小説には、童話の『泣いた赤鬼』や、石川啄木の歌などが引用されています。主人公の設定だけでなく、これらの作品の引用も映画では描かれなかった要素であるので、鑑賞後に読むとさらに理解が深まるでしょう。

『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、映画では“映画でしかできない”表現、小説では“小説ではできない”表現がたっぷりと使われていました。
映画と小説それぞれで、表現方法がまったく異なっているシーンがひとつあります。それがどこであるかはネタバレになってしまうので書けませんが、その感動を味わうだけでも、原作小説を読む価値があるはずです。

9.タイトルの『リップヴァンウィンクル』の意味とは?


『リップ・ヴァン・ウィンクル』とは、アメリカの小説家ワシントン・アーヴィングによる短編小説、および主人公の名前です。

その物語は、“主人公が森の中に迷い込んで、見知らぬ人と酒を飲み交わしているうちに眠ってしまい、目を醒ますとあたりに周りに誰もいなくなっていた。主人公が家に帰ると、20年もの時が経っていた”というもの。“アメリカ版浦島太郎”とも呼ばれる作品なのです。

なぜこのタイトルがついているのか? また、“花嫁”の意味とは何か? それは映画を観終われば、きっとわかるはずです。

10.ホラーでもあり、人間ドラマでもある


本作はよい意味で辛辣な物語であり、多少なりとも好き嫌いの分かれる内容です。
主人公は“優柔不断で周りに流されてばかり”な女性なので拒否感を覚える方もいるでしょうし、あまりの出来事に精神的にまいってしまう方もいるかもしれません。

ホラー映画かと思うほどの描写もあります。
たとえば、綾野剛演じる何でも屋の本業は“役者”であると説明されていますが、劇中ではあくまで何でも屋としての仕事のみをしているようにも思えます。
しかし、どこかで何でも屋が“演技をしている”シーンはなかったでしょうか。
具体的にそれがどのシーンであるかは言えませんが、“ゾッと”してしまうかもしれません。

しかし後半では、最初に挙げた“岩井俊二監督の二面性”がこれ以上なく表れた、卓越した人間ドラマであると感じていただけると思います。
Coccoが告げた言葉のひと言ひと言が鮮明に思い出せる、美しい物語がそこにはありました。

本作は岩井俊二監督の最高傑作であり、2016年を代表する日本映画となるでしょう。ぜひ、多くの方に観ていただきたいです。

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(文:ヒナタカ)

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