映画コラム

REGULAR

2016年07月29日

相模原の殺傷事件に衝撃を受けた方、観て欲しい映画があります

相模原の殺傷事件に衝撃を受けた方、観て欲しい映画があります


3.決して犯人に同調せずに、『くちびるに歌を』を見てほしい


心の底から嫌悪感を覚えたのが、犯人が「障がい者は生きていても意味がない」「安楽死させた方がいい」と発言していたことでした。
もし、ほんの少しでも、そのようなことを考えてしまうのであれば、『くちびるに歌を』を観てみてください。

『くちびるに歌を』では、自閉症の兄を持つ中学生の男の子が登場するのですが、彼は兄のことをとても大切に思っている一方で、「ほんの少しだけ、兄をうとましく思うときがあります」と、“未来の自分に宛てる手紙”に書き記しています。

しかし、それでも彼は兄がいたことを深く感謝し、とある尊いことも、この手紙に残しているのです。

障がいのある人が身内にいるというのは、とても大変なことです。綺麗事を並べたり、精神論を口にするだけではどうにもできない悩みも、たくさんあります。障がいが重度であればあるほど、その悩みが強くなってしまうことも、否定はできません。

『くちびるに歌を』は、そんな障がいのある人を家族に持つ人の“後ろめたさ” “弱さ”を描き、それでも家族でよかったと肯定する希望にあふれる、やさしい作品なのです。

そのほかにも、さまざまな障がいを欠点ととらえず、個性として尊重した映画には『アイ・アム・サム』『ふたりにクギづけ』『ファインディング・ドリー』などがあります。
こうした作品で訴えられていることのひとつは、障がいのある人者でも健常者の人たちと同じく、当たり前の幸福が与えられるべきであるという価値観です。
犯人が勝手な主観で、(いかに障がいが重度でも)そのすべての可能性を否定することが、いかに幼稚で、身勝手なことであるかが、作品を観ることでよりわかるのではないでしょうか。

4. “全国手をつなぐ育成会連合会”の言葉に寄せて


知的障がい者と家族で作る“全国手をつなぐ育成会連合会”の会長である久保厚子さんは、事件を受け、障がいのある人に向けて以下の緊急声明を出しています(一部抜粋)。
「みなさんの中には、そのこと(犯人の「障がい者はいなくなればいい」という発言)で不安に感じる人もたくさんいると思います。そんなときは、身近な人に不安な気持ちを話しましょう。みなさんの家族や友達、仕事の仲間、支援者は、きっと話を聞いてくれます。そして、いつもと同じように毎日を過ごしましょう。不安だからといって、生活の仕方を変える必要はありません。

障がいのある人もない人も、私たちは一人ひとりが大切な存在です。障がいがあるからといって誰かに傷つけられたりすることは、あってはなりません。もし誰かが「障がい者はいなくなればいい」なんて言っても、私たち家族は全力でみなさんのことを守ります。ですから、安心して、堂々と生きてください。」

この“身近な人に不安な気持ちを話しましょう”、“家族が全力でみなさんのことを守ります”という言葉は、とてつもない助けになるのではないでしょうか。それは、このような事件の再発の予防にもつながるはずです。
(注:『葛城事件』は障がいのある人を扱った映画ではありませんが、劇中では面と向かって、家族で本音をぶつけ合う会話がなかったからこそ、悲劇が起きたことが示されています)

この事件は、実際に亡くなった方だけでなく、世界中にいる障がいのある皆さん、障がいのある人を支える人たちをも、深く苦しめたことでしょう。

被害者、ご遺族の方の悲しみに寄り添うと共に、少しでもこのような残虐な事件が減ることを願っております。

(文:ヒナタカ)

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