俳優・映画人コラム

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2016年09月18日

美しさはそのままに魅惑と貫録を伴わせる、夏樹陽子、芸能生活40周年!

美しさはそのままに魅惑と貫録を伴わせる、夏樹陽子、芸能生活40周年!

■「キネマニア共和国」

写真家『早田雄二』が撮影した銀幕のスターたちvol.42


現在、昭和を代表する名カメラマン早田雄二氏(16~95)が撮り続けてきた銀幕スターたちの写真の数々が、本サイトに『特集 写真家・早田雄二』として掲載されています。
日々、国内外のスターなどを撮影し、特に女優陣から絶大な信頼を得ていた早田氏の素晴らしきフォト・ワールドとリンクしながら、ここでは彼が撮り続けたスターたちの経歴や魅力などを振り返ってみたいと思います。

夏樹 陽子



1976年に本格映画デビューを果たした夏樹陽子の出演作品は、自分の映画観賞キャリアとも重なりながら、ずっと見続けてきましたが、どこかしら峰不二子のようにセクシーな魅力を常に感じていたものです。

それから40年、美しさは今も変わることなく、インディペンデント映画に積極的に出演しながら若手映画人に魅惑と貫録を示し続ける姿勢など、長年のファンとして嬉しい限りなのです。

モデルから女優へ
70年代後半の躍進


夏樹陽子は1954年10月24日、三重県伊勢市の生まれ。73年に上京して杉野女子短期大学被服科に在学中、スカウトされてファッション・モデルとなり、卒業後もそのままトップモデルとして活躍しました。

76年秋、知人の紹介で小平裕監督『新女囚さそり・701号』にキャメラ・テスト的な扱いで出演し、東映と契約。翌77年、山口和彦監督による千葉真一主演『空手バカ一代』の相手役に抜擢されて正式デビュー。続いて小平監督の『新女囚さそり・特殊房Ⅹ』で梶芽衣子、多岐川裕美に続く“3代目さそり”として映画初主演を果たします。

77年はさらに鈴木則文監督『トラック野郎・度胸一番星』や寺山修司監督『ボクサー』で菅原文太と共演するなど、順風満帆の活躍ぶりで、同年度の製作者協会新人賞を受賞しました。

78年には松竹の『カラテ大戦争』で初めて他社出演し、東映でも鈴木監督『多羅尾伴内』、深作欣二監督『赤穂城断絶』長谷部安春監督『皮ジャン反抗族』と出演作品を重ねていきますが、79年の村川透監督『白昼の死角』の後、『ザ・ハングマン』『大江戸捜査網』など活動の場をテレビに移していきます。

80年代の映画出演は那須博之監督の『紳士同盟』(86)のみでした。

90年代カムバックから
現在の頼もしい姿勢


90年代に入り、夏樹陽子の第2のブレイクが始まります。
東映Ⅴシネマのバイオレンス&エロティック・アクションシリーズ『XX(ダブルエックス)』第3弾、黒沢直輔監督の『美しき標的(ターゲット)』(95)で、彼女は猟奇殺人事件に挑む検視官・水木恭子に扮し、大胆なヌードを披露するとともにレズ・シーンなどにも挑み、見事にカムバック。好評につき、この後も『Another XX赤い殺人者』(96)『Another XX 黒い追跡者』(97)で水木恭子を演じています。

また97年から2002年にかけて『借王(シャッキング)』全9作に主演。これはエリート銀行マン(哀川翔)と警部補(志賀勝)、そして高級クラブのママ(夏樹陽子)が手を組んで、悪質な仕事をしている会社や人をだましては金を巻き上げ、3人合わせて数十億にも及ぶ巨額の借金を返済していこうという痛快金融エンタテインメントでした。

これと並行して、『借王』シリーズのメイン監督を務めた和泉聖治監督の『平成金融道 裁き人』(99)『Nile ナイル』(99)にも出演しています。

ここ数年は、あきるの市が制作した『五日市物語』(11)、映画評論家・樋口尚文が初監督した映画館へのオマージュ映画『インターミッション』(13)、そして東日本大震災に伴う福島原発事故を背景に、戦時中から親子三代で原子力エネルギーに関わってきた人々の悲劇を大河的に描いた『あいときぼうのまち』(13)といったインディペンデント作品に積極的に出演。つい最近も『函館珈琲』(16)でさまざまなアーティストが集い住む函館のアパート“翡翠館”のオーナーを魅惑と貫録の双方を伴いつつ好演しています。

冒頭にも書きましたが、これまでセクシーな魅力を前面に出しながら活動してきた彼女。ここに至り、若手映画作家などに胸を貸し続ける姿勢は実に気持よいものがありますが、これも長年芸能界の荒波を泳ぎ続けてきた中、たどり着いた一つの姿勢でもあるのでしょう。

今年は芸能生活40周年。それを記念して、歌手としても活動中の彼女が、27歳の頃にダウンタウンブギウギバンドから提供された幻の音源を、7月にCD『よこはまメランコリー』(全12曲)としてリリース。10月からは大阪、横浜、東京でバースディ・ライブを開催します(詳細は公式ホームページをご覧ください)。

彼女の歌声を活かした映画なども、いずれは見てみたいものですね。

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(文:増當竜也)

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