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<横浜流星>『流浪の月』で真っ直ぐに演じた“歪んだ愛”



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「怖くてキモかった」


映画を観たあとの感想として相当なパワーワードであるこの言葉は、5月13日公開の『流浪の月』で主人公の恋人である中瀬亮を演じた横浜流星に向けられたもの。筆者も同意だった。

本作で広瀬すず×松坂桃李による“許されない愛”がこんなに切実に伝わってくるのはメイン2人の実力によるところが大きいが、横浜流星の存在がそれを際立てているように感じられる。

今回は『流浪の月』を観る際にぜひ注目してほしい横浜流星の演技を、彼の過去作を振り返りって比較しながらお伝えしていきたい。

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横浜流星の“真っ直ぐさ”

幅広い役を務める横浜流星は、どの作品に出ていても目を奪う。理由は、彼がもつ真っ直ぐさではないだろうか。

『流浪の月』を観て思い出したのは、「初めて恋をした日に読む話」の由利匡平と「私たちはどうかしている」の高月椿だった。

■「初めて恋をした日に読む話」ユリユリの一途さ


(C)TBS

「初めて恋をした日に読む話」でピンク頭の不良高校生・ユリユリこと由利匡平は、その一途さで恋も仕事も上手くいかないアラサー塾講師である春見順子(深田恭子)をガラリと変えてしまった。

周囲からも下に見られるおバカ高校に通う彼は、東大受験を決意。「絶対ムリ」「普通じゃない」と言われながらも、順子への恋心だけで真っ直ぐ突き進み、一緒に東大合格を実現させる。

恋のライバルであり、自身の学校の担任教師である山下(中村倫也)に「引っ込んでろ!俺んだよ!」と不良高校生感Maxですごむ場面でのあの目。

「好きです。好きです。先生のことが、好きです」

法律で恋が許される18歳になった誕生日の、節分告白も忘れられない。絶対に。見つめがらストレートな言葉で飾らないで伝えられたら、30年以上恋してこなかった順子だって心が動いてしまうに決まっている。

手強い恋敵たちを押しのけ、周囲をみんな味方につけ、先生と生徒という関係性も年齢の壁も壊して東大合格と順子を手に入れたのは、確実に彼の一途さだ。

不器用ながらもぶれない彼の一途さが観る側の胸にも迫ってこなければ、成立しなかった作品だったはず。

>>>Paraviで「初めて恋をした日に読む話」を観る

■「私たちはどうかしている」芯の強さと恋愛への不器用さ


(C)日本テレビ

「私たちはどうかしている」ではクールな老舗和菓子屋の跡取り息子・高月椿を演じていた。
傍若無人な振る舞いをする人物だったが、横浜流星が演じると仕事や恋愛面への強い思いがあるからこその行動だと納得できてしまうから不思議だ。

伝統ある家の跡取り息子らしく和装での所作が、胸キュンシーンも一層美しく際立たせる。蛍が舞う夜の七桜(浜辺美波)とのキスシーンは、そこだけ切り取っても十分その世界観に浸れてしまう。
シンプルな「お前が好きだ」の言葉とキス。彼にかかれば、それだけで十分贅沢だ。


作品全体として丁寧な振る舞いが多い分、感情が露わになる場面も印象に残る。壁ドンしながら怒る場面が複数回あるが、光月庵の大旦那である祖父(佐野史郎)にまで掴みかかる迫力は流石だ。この身のこなしと目力には抗えない。


甘いシーンも激しいシーンも、思いがあるからこその行動だと感じられるのは、彼のもつ芯の強さが関係しているはず。

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横浜流星が“歪んだ愛”を真っ直ぐに演じた『流浪の月』



「初めて恋をした日に読む話」「私たちはどうかしている」は、いずれも恋愛要素もあるストーリー。物事を正面から受け止める誠実な人柄が、どんな役にも意思を感じさせる真っ直ぐな人格を与えるという正しい用法で使われている印象だった。

一方で『流浪の月』で見られる彼の愛は、これまで見たことのない形だったように思う。

映画の冒頭、亮は仕事もプライベートも充実しているありふれた若手サラリーマンとして登場する。恋人である家内更紗(広瀬すず)とはマンションで同棲中で、近い将来結婚することも考えている。甘えたがりで一方的な愛情表現が多めなところは気になるが、満たされている“普通の人”だ。



そんな亮は、更紗が松坂桃李演じる佐伯文と再会したのを機に少しずつ様子がおかしくなっていく。

恋人のバイトのシフトを店長に電話して尋ねたり、仕事終わりに寄り道しているところに突然現れたりと、束縛を通り越してストーカーのような行動をとる。最近更紗の様子が変わったのが心配だから、と。

普通の人が普通じゃない行動を取るのが、実は一番怖いのかもしれない。



「怖くてキモかった」の極みは、更紗に手をあげるシーンだろう。

自分よりも文を大切にするような更紗の言動にキレて、殴る・蹴るを繰り返す。私たちを全力で胸キュンさせてくれた俳優・横浜流星のあの真っ直ぐさは、DVシーンになると恐怖に変わってしまうと知った。

愛してほしくてたまらずに、好きな人を縛ったり手をあげたりすることでしか自分を保っていられない亮の心の中は、世間からおかしいと言われる文や更紗よりずっとおかしいのかもしれない。



パッと見は“普通の人”に見える亮。しかし彼の異様な愛し方からは、彼には彼の長年背負ってきた深い闇があることをうかがえる。このときの亮の振る舞いは、更紗が文をより強く求めるきっかけとしてこれ以上ない切実さを感じさせるものだった。

個人的に暴力シーンがとても苦手なので、観ている最中は逃げ出したい気持ちだったのだが、本作においては欠かせない場面だろう。

その後、恋人を失ってどんどん壊れていく亮の様子も見逃せない。メインの2人の展開とあわせて、亮の愛の終わりも自身で見届けてきてほしい。

歪んだ愛が“恐怖”になる横浜流星の演技力



恋人に甘える幸せいっぱいのところから、人としてどんどんダメになっていくのにそれでも更紗に執着してしまう亮の切実さを痛いほど感じられる本作。

“歪んだ愛”を演じるとまさか恐怖が生まれるとは思わなかったが、それも横浜流星が内面に抱えている真っ直ぐな人柄故だろう。

人は、自分の欠けているところを埋めてくれる人を求めてしまうものなのかもしれない。

欠けているところを満たしてくれる更紗と満月のように満ち足りた生活を送っていた亮が、更紗の心が離れていくのに伴って壊れていく様子は、月が欠けていく様に感じられてしまうのだ。あのお芝居は、忘れられない。

あまりに忘れられないから、タイトル『流浪の月』は中瀬亮を指しているのかもしれないとまで思ってしまっている。

(文:荒川ゆうこ)

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