「SCOOP!」とペアで観ると面白さ倍増!「グッドモーニングショー」
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
「踊る大走査線」シリーズの脚本家としても有名な君塚良一監督が、自らのオリジナル脚本で監督を務めた話題作「グッドモーニングショー」。非常に面白そうな印象の予告編だったので、さっそく公開二日目の朝9時の回、TOHOシネマズで鑑賞してきた。朝一番の上映にも関わらず、客席はほぼ満員状態。客層も、お年寄りから20代の若者まで、幅広い観客だったのが印象的な本作。果たして、その出来はどうだったのか?
ストーリー
かつて報道番組の人気キャスターだった澄田真吾は、災害現場からの中継でのある行動により報道番組を降板、現在は朝の人気情報番組「グッドモーニングショー」のメインキャスターとして、多忙な日々を過していた。
そんなある日、番組プロデューサーから澄田に告げられた、突然の番組打ち切り!しかもよりによってその直後、なんと放送局近くのカフェで人質立てこもり事件も発生!「グッドモーニングショー」も急遽事件をトップで扱うことになり、現場から生中継を開始する。
緊張感漂うスタジオ内で番組が進行する中、警察からテレビ局に入った一本の電話。それは犯人の要求が「グッドモーニングショーの澄田をここに呼べ!」だという連絡、そして澄田への協力要請だった。果たして澄田の運命は?そして、番組は最後まで無事に放送出来るのか?
君塚良一監督だから描けた、テレビの情報番組制作の舞台裏!
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
「踊る大走査線」シリーズで、警察の捜査活動の意外な裏側を描いた君塚良一監督が、今回題材に選んだのはテレビ局のワイドショー。正に自分の得意なジャンルと舞台だけに、映画の前半部分で描かれる番組制作の裏側=慌ただしい時間との戦い、刻一刻と変更される放送内容など、その描き方は事実に即しているだけに、非常に細かく面白い!
例えば、お天気キャスターが、外の中継に行く時に走りやすい靴に履き替えるとか、移動がロケ車でなくバイクであるなど、細かいディティールもいい加減にすることなく描いている点は、さすが君塚良一監督ならではの「こだわり」だ。
数多くの登場人物を混乱することなく紹介しながら、そこにテレビ番組が放送されるまでの、様々な段取りを盛り込んだ前半部分のテンポの良さに加え、番組開始後は映画もほぼリアルタイムで進行するので、観客側も実際に放送を見続けている様な臨場感が味わえる。そして事件の生中継が放送される中で明らかにされる、澄田の過去の失敗の真相と、犯人の動機と真の目的。そこには現代社会の抱える様々な問題が反映されていて、君塚監督の過去作「誰も守ってくれない」でも描かれてきた問題提議にブレが無いことが判って、個人的に非常に興味深かったと言っておく。
特に、君塚良一監督作品のトレードマークとも言える、「ネットの民」への不信感と漠然とした恐怖は、本作でも健在!ラストのある展開には、顔の見えない匿名の群衆心理の恐怖と、マスコミの情報操作への警鐘が盛り込まれており、単なるハッピーエンドでは終わらない作品に仕上げられているので、ここも是非劇場でチェックして頂きたい。
実は、福山雅治主演「SCOOP!」と良く似た構造を持つ映画だった!
先頃公開された福山雅治主演の映画「SCOOP!」の主人公も、過去の失敗によって報道の現場から外され、不本意ながら芸能スキャンダルを扱うメディアで多忙な日々を過している。こう要約すると判るように、本作の基本設定と主人公である澄田が抱える過去のトラウマ的エピソードは、非常に「SCOOP!」と通じる部分が多い。もしも時間に余裕があればこの2本をペアで鑑賞すると、互いに補完し合って楽しさが倍増するのは間違いないだろう。
でも、1点だけどうしても言いたい事が・・・
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
はい、それは銃です!立てこもり犯人が「猟銃」を所持しているという設定なので、ある程度どんな銃かの想像はしていたのだが・・・。
うーん、犯人が持ってた銃が、分かりやすく言うと「ターミネーター2」でバイクに乗ったシュワちゃんが持ってたライフル、そう言うとイメージしやすいだろうか?一応、犯人の叔父さんが所持していた猟銃を盗んだとの説明が劇中でされているのに、よりによって出てきたのがウィンチェスターライフル!しかも片手で扱えるように、ストック部分が短くカットされてる?一瞬、往年のテレビ西部劇「拳銃無宿」で、故スティーブ・マックイーンが持ってた「ランダル銃」か?と思ったくらいだ。
スクリーンで観ていて、どう見ても「おもちゃ」にしか見えないので、「あ、これは脅しで持ってるだけで、実はモデルガンという仕掛けなのか?」と、思っていたら・・・。どう見ても猟銃として日本で所持するのは難しそうな物が登場してきたので、そこだけはちょっと残念だったと言わせて頂く。
※これはあくまでも筆者個人の感想です。念のため
最後に
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
ネットのレビューなどでは、犯人の動機や行動に否定的な意見も見られるが、前述した様に本作は非常に現代の問題点を捉えた内容であり、何か悩みや挫折があった時に、友達や家族に相談するなどの、「セーフティーネット」が存在しない現代だからこそ、いきなりこの様な犯罪行動に走ってしまうのではないか?という、君塚監督のメッセージには、共感した方も多かったのではないだろうか。
主人公のキャスター側と犯人側。観客の年代や、どちらにより感情移入するかによって、作品の意味や味わいが変わってくるのも、本作の魅力の一つだと言える。
更に、アラフォー以上の観客にとっては、中井貴一と時任三郎が久々の共演!というだけで、つい「ふぞろいの林檎たち」を連想してしまうが、頭の中で柳沢慎吾の姿を補完しながら見ると、また新たな楽しみ方が出来るかもしれない。(個人の感想です。念のため)
とにかく、幅広い年代が楽しむことが出来る、この「グッドモーニングショー」。予告編の雰囲気から連想するような、軽薄なドタバタ喜劇では決してないので、是非劇場に足を運んで頂ければと思う。
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(文:滝口アキラ)
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