映画コラム
実はエンタメ度MEGA MAX!『スター・トレック BEYOND』激アツ5大ポイント
実はエンタメ度MEGA MAX!『スター・トレック BEYOND』激アツ5大ポイント
シリーズ50周年にふさわしい、
「スタートレック」が描く理想に挑戦する悪役
(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
前作『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013年)では、ベネディクト・カンバーバッチが悪役であるジョン・ハリソン(カーン)を印象的に演じました。彼が行う破壊行為は憎むべきですが、その動機は自身の仲間を救いたいという、敵対するカークも同じ立場ならばそうしてしまうのでは…と思うほど感情移入出来るものでした。
思えば、J・J・エイブラムス監督による第1作目の『スター・トレック』(2009年)の悪役であるネロ(エリック・バナ)もまた、愛する家族と故郷を失ったことで時空を揺るがす凶行に走る哀しい敵であり、悪役にも悪なりの理屈があることを描いてきました。
今作『スター・トレック BEYOND』の悪役であるクラールは、あっという間に主役機であるエンタープライズを撃沈に追い込むという圧倒的な強さを誇り、次々と犠牲者を増やしていく上に、終盤までその正体や目的がわからない不気味な存在。
しかし、彼もまた過去2作の悪役の通り、悪行を働くことに至った理由があって…
共同脚本のダグ・ユングによるとこのクラールは、「スタートレック」の生みの親であるジーン・ロッデンベリーが描いた、あらゆる異星人・人種が共に手を取り合って未知の世界を開拓していく明るい未来の世界観に挑戦する、「スタートレック」50周年のアニバーサリー作品にふさわしいキャラクターにしたとのこと。
つまり、「協調」や「多様性」とは正反対の「不寛容」こそが、主人公カークたちの敵ということになります。
興味深いのは、アメリカ大統領選の候補であるものの数々の差別的発言を残しているドナルド・トランプに反対する「Trek Against Trump」が9月末にSNSに立ちあがり、J・J・エイブラムス、ジャスティン・リン、クリス・パイン、ザッカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグといった映画のスタッフ・キャストがページにて支持を表明していること。
エンタープライズのクルーは、様々な人種や男女の別なく共に手を取り合って未来を切り拓く、人類の多様性を具現化したような存在。「スタートレック」の世界だけではなく、現実でもエンタープライズのクルーは不寛容との戦いを繰り広げているのです。
クラールを演じるのは、みんな大好き『パシフィック・リム』(2013年)のペントコスト司令官役でおなじみのイドリス・エルバ!本作では特殊メイクでその迫力も二倍増しだ!
製作中に亡くなった、2人のメインキャストを悼む
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『スター・トレック BEYOND』の製作期間中、メインキャラクターであるチェコフを演じたアントン・イェルチン、そしてオリジナルシリーズから新シリーズまで代表的なキャラクターであるスポックを演じたレナード・ニモイの2人が亡くなったことは、本作において特筆すべき出来事です。
全米公開直前の2016年6月に急逝してしまったアントン・イェルチンの元気な姿をスクリーンで見るだけで、感慨深い思いになります。チェコフとエンタープライズクルーの相変わらずのチームワークを見ていると、あることに気付かずにはいられません。
それは、これでこのメンバーでの宇宙を駆ける冒険は、もう見られないということ。本当に、悲劇が悔やまれて仕方ありません…
『スター・トレック BEYOND』の日本版ポスターには、「最後のミッションへーー。」という一文があり「いやいや、4作目の製作も決まっているから!」と思ったのですが、チェコフを含めたクルーでのミッションは確かに最後です。シリーズファンはもちろん、アントン・イェルチンのファンは見届けておくべきでしょう。
ちなみに、チェコフの代役は立てないことをJ・J・エイブラムスは明言しています。
そして、2015年に亡くなったレナード・ニモイにも本作は捧げられています。J・J・エイブラムスによる現行シリーズでも、レナード・ニモイが演じたスポックはストーリーの発端を作り、エンタープライズのクルーたちを導くという非常に大きな存在でした。
「スター・トレック」の代名詞ともいえる名キャラクターを演じたレナード・ニモイの逝去に対して、シリーズ50周年のアニバーサリーに公開される映画として何も触れないというのは不自然でしょう。
彼を悼む思いは、現実とストーリーがリンクするかのように『スター・トレック BEYOND』で描かれています。ファンは劇場であっとなり、そして涙することでしょう…
新シリーズ1作目だけ見れば楽しめる!
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「スタートレック」は、5作のTVシリーズと1作のアニメシリーズ、そして映画だけでも13本の作品がある長寿シリーズ。この点が、シリーズに入りにくい印象を与えてしまいやすいのですが、未見の方が『スター・トレック BEYOND』を楽しむには、新シリーズ1作目の『スター・トレック』だけ見ればOKです。
もちろん、出来れば新シリーズ2作目である『スター・トレック イントゥ・ダークネス』も面白いので見て欲しいですが、基本的なストーリーやキャラクターの原点が描かれているのは1作目なので、これだけ見れば大丈夫です。また、新シリーズ以前の作品は仕切り直されているので、とりあえず気にしなくても良し!映画1本だけ見れば追いつける!
もちろん、シリーズを見ていればさらに楽しめる要素も多々あります。今回は、TVシリーズ「スタートレック:エンタープライズ」とのつながりが…
すでに、続編となる4作目の製作も決定している『スター・トレック BEYOND』。トレッキーだけではなく、これまでちょっと敬遠してきた方にも気楽に見て欲しい1作です。
『スター・トレック BEYOND』は、10月21日(金)全国ロードショー。
(文:藤井隆史)
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