俳優・映画人コラム
トム・クルーズ新戦略へ「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」はマイルストーンに!!
トム・クルーズ新戦略へ「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」はマイルストーンに!!
(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
今でも高い人気を誇るトム・クルーズ。単独主演作でメガヒットとなった「トップガン」から30年。一度も落ち込むことなく第一線で居続けるということは、よくよく考えると異常なことです。
3度の離婚と結婚、新興宗教サイエントロジーへの熱心すぎる信仰ぶりなどなどゴシップ的なネタも多く抱えていているのですが…。
トムの海外戦略
そうはいっても、アメリカ(=北米)での彼の神通力は下降傾向にあります。ミッション・インポッシブルシリーズ以外はアメリカ国内ではビッグヒットと呼びにくい作品も多くなってきました。
例えばキャメロン・ディアスと共演した「ナイト&デイ」は二大スター共演の娯楽ラブコメアクションという映画でありながら、アメリカでは大苦戦となりました。ただ北米地区以外では堅調な数字を挙げてビジネス的にはちゃんと成功という形で成立させました。
このことで北米地区での神通力の低下と反比例するかのように海外ではトム・クルーズというブランドがブランド力の強いものとして確立されていることが明らかになりました。
そういう流れが一番極端だった作品があの「ラストサムライ」です。
日本が舞台で日本人俳優が大挙して出演。渡辺謙が映画賞レースを賑わしたので当然だろうという意見もあるかもしれませんが、日本で「ラストサムライ」は当時としても異例のロングラン公開となって大ヒットを記録しました(最近「君の名は」に抜かれました)。数字で見ると北米の興行収入を日本一国だけの興行収入で上回ってしまいました。
これを受けてトム自身の海外プロモーション、特に日本重視のプロモーションを重視していくようになり、新作があるたびに来日して大々的なファンサービス・プロモーションを展開しています。(「トロピック・サンダー」などは例外です(苦笑))
今回も「ラストサムライ」つながりで池松壮亮との2ショットを披露しました。
トムとエド、13年ぶりの再会
そのラストサムライでトムと組んだのがエドワード・ズウィック監督です。
この監督は社会性のあるテーマとエンタメのバランス感覚が抜群の人で、デンゼル・ワシントンがアカデミー賞を初受賞した「グローリー」、ブラット・ピットのブレイク作の一つ「レジェンド・オブ・フォール」、レオナルド・ディカプリオ主演の「ブラッド・ダイヤモンド」などを監督。
アカデミー賞受賞作の「恋におちたシェイクスピア」「トラフィック」日本でも大ヒットした「アイ・アム・サム」などをプロデュース。直近でもトビー・マグワイアがチェスに取り憑かれた男を演じた「完全なるチェックメイト」があります。
という具合にタイトルなら見たことがある、知っているという人が多いのではないでしょうか?
ただし、監督して極端なカラーやキャラがある人ではないのでなんとなく名前にフォーカスが集まらないまま長編デビューから30年が経っています。フィルモグラフィーを見ればいずれはアカデミー賞を獲ってもいいのではないだろうかな?と思っているぐらいなので、そろそろこの監督の名前を憶えてもいいのでないでしょうか?
そんな「ラストサムライ」コンビが13年ぶりにタッグを組んだのが「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」です。
(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
トム・クルーズのキャリアから見ると意外な気もしますが、実は彼は30年以上のハリウッドトップキャリをキープしている中で、同一キャラクターもの(=シリーズもの)に出ているのは不死身のスパイイーサン・ハントを演じる「ミッション・インポッシブル」シリーズだけです(ちなみ最初にイーサン・ハントを演じてからもう20年です!?)。
そんな彼が、二つ目のシリーズものに手を出したのがこの「ジャック・リーチャー」シリーズです。原作は世界的にベストセラーのハードボイルド小説で、海外で確立されたトム自身のブランド力に人気原作もの、シリーズものという箔をつけてさらに世界(北米地区以外)に通用しやすくなろうとしているようです。。
いつまでも無敵なヒーローイーサン・ハント。
ベテラン感を醸し出せるジャック・リーチャー。
それまで全く手を付けてこなかったシリーズものに手を付けたトム・クルーズ。
いつまでも若々しく見えますが、気が付けば彼も50代半ばです。
しかし、イーサンを筆頭に彼の演じるキャラクターはいつまでも無敵のヒーローです。ポスターの彼の顔の大きさ、名前のフォントサイズの大きさを見れば彼はまさしくヒーローの代名詞として存在しています。
ただ、繰り返しになりますが、彼も50代半ば。
そろそろベテラン感、老いとまではいわないまでも老獪さを漂わせたり、実年齢相応の弱さ(衰え感)を体現したりするキャラクターを考えていかなければいけなくなってきました。そんななかで「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」です。
ここではトムにとって実に珍しい父性を持ったキャラクターとなっています。これまで“夫(=男)”はあっても“父親”であることを表に出してくることはほとんどありませんでした。(「宇宙戦争」が例外的にそうなりますね?)
ヒーローはヒーローでやっていく一方で、年相応さも出していく“新トム・クルーズブランド”のマイルストーンとして「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」は見逃すことはできません!
(文:村松健太郎)
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