2016年の“いい意味で超イヤな気分になれる”映画ベスト10

2016年もそろそろ終わり!宝物のような傑作揃いであった今年は、“いい意味で超イヤな気分になれる”映画もたくさん生まれました。ここでは、2016年に公開された映画の中で、個人的に「本当に超イヤな気分にさせてくれてありがとう!」と感謝を告げたくなった10作品をランキングで紹介します!

10位『残穢【ざんえ】 住んではいけない部屋』


残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―


(C)2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会



怪談にまつわる“謎”を、さまざまな証言をもとに暴き出そうとする作品です。科学的に証明できないものの代表であるような怪談を、論理的な推理で追っていくというのが本作の大きな魅力。まるで“探偵もの”のようなおもしろさがあるのです。

何がイヤって、怪談がまるで病気のように“伝染”して伝わってきたことがわかること。“どこまでいってもキリがない”、“どうあっても逃げられない“というのがイヤでイヤで仕方がありませんでした。


9位『ディストラクション・ベイビーズ』


ディストラクション・ベイビーズ distraction_sub1


(C)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会



柳楽優弥演じる主人公が理由なしに強そうな人を殴りまくり、息を吸うように犯罪(万引き)をし、さらには同行する高校生(菅田将暉)とタッグを組んで暴走し、あまつさえ女性(小松奈)を拉致してしまうなど……とにかく暴力的かつインモラルなシーンが連続する内容で、いい意味で主人公にまったく感情移入できません。

でも、この凄惨な暴力描写も、あのラストシーンを顧みればしっかりした意味があると感じられるのではないでしょうか。タイトルに“ベイビーズ”とあるように、ただ「楽しいから」という理由で暴力を振るう者たちの狂気、その“幼児性”も魅力になっているのです。


8位『秘密 THE TOP SECRET』




(C)2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会



捜査官たちが2人の猟奇殺人犯に翻弄されているしまう様子がこれでもかと描かれた作品です。
不可解かつ精神を逆なでするような殺人鬼の言動や行動、美しく鬱々した美術、“誰もが悪に染まる可能性”を突きつけるメッセージ性、それを長い上映時間で、丸ごと感じられるようになっていました。

登場人物が苦しむ、辛いシーンが続くからこそ、ラストの感動があります。解釈が分かれるところもあるので、一緒に観た人とぜひ話し合ってみてください。


7位『クリーピー 偽りの隣人』


クリーピー 偽りの隣人


(C)2016「クリーピー」製作委員会



とにかく香川照之演じる“隣人”がイヤすぎます!真っ黒のシャツと半ズボン姿という見た目からヤバいのですが、その言動はどこかがおかしく、やがて常軌を逸するレベルになっていく……その“じわじわ”具合もいい意味で最悪でした。

本作で描かれていることのひとつに、ご近所づきあいをして“しまう”という人間の特性があります。たとえば、西島秀俊演じる主人公はこの隣人をしっかりと嫌っていたはずなのに、帰り道で目が合うと“笑ってしまう”のです。隣人そのものが怖いのはもちろんですが、“お隣さんと一定の関係性を保たなくてはならなくなる”という、普通の人間が持つ感情そのものにも恐怖を覚えるのではないでしょうか。

“影”が意図的に作られたシーンの1つに1つに“不穏さ”を感じることができることも大きな魅力。それでいて、明るい真昼のシーンでも「ひっ」と引きつった声をあげてしまいそうな怖さがあるのですから、たまりません。


6位『サウルの息子』


サウルの息子


(C)2015 Laokoon Filmgroup



無慈悲な虐殺が行われたアウシュビッツ強制収容所を擬似的に体験できる映画です。

カメラワークのほとんどが“主人公の後ろについて回る”というものになっており、ときおりチラッと映ってしまう(ピントが合っていない)死体の画は、主人公の「もう見たくない」という気持ちとシンクロするようで、辛くて辛くて仕方がありませんでした。

ヒーローもののようなカタルシスを排除し、ただただ主人公の“息子(と思しき少年)を埋葬したい”という想いを丹念に追った作品です。小難しい伝記物ではなく、“平凡な主人公(父親)とともに地獄の旅をする”という作品なので、どなたでも感情移入はしやすいでしょう。ぜひ、その結末を見届けてください。


5位『ザ・ギフト』


ザ・ギフト02


(C) 2015 STX Productions, LLC and Blumhouse Productions, LLC. All Rights Reserved.



主人公の高校時代のクラスメイトと名乗る男が、次々と“ギフト”を送り届けてくるというスリラーです。そして描かれるのは、誰もが経験したことがあるであろう“あの”問題。身に覚えがあればあるほど、イヤ〜な気分になれることでしょう。

これは予告編で観た印象をそのままに“騙されて”、何も情報を入れずに観てほしい作品です。「このことを描いた作品だったのか!”」「ラストにこう来るとは(これもいい意味で最悪!)」と思ってこそ、おもしろい内容なのですから。

4位『マジカル・ガール』


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Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados (C)



白血病で余命わずかな少女が日本のアニメの魔法少女に憧れたばっかりに、その父が高額なコスチュームを購入することを決意。そこから連鎖するように最悪の展開が訪れるというドラマです。

監督はインタビューで『新世紀エヴァンゲリオン』や『魔法少女まどか☆マギカ』などのアニメに影響を受けたと明言しており、確かに本作にはそうした“鬱になってしまいそうなアニメ”のような印象があります。『マジカル・ガール』というタイトルに相反するような“過酷な現実”をたっぷり教えてくれるので、ぜひ“覚悟”してご覧ください。


3位『ヒメアノ〜ル』




(C)2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会



暴力的なR15+指定の映画は、たとえ自分がおもしろいと思っても、人におすすめしにくいところがあります。しかし、この『ヒメアノ〜ル』は違いました。殺人場面は猟奇的で、性的な描写も直接的、R18+指定でもいいくらいに凶悪な演出まであったのに、それでも多くの人に観てほしい、と思ったのですから。

前半はクスクス笑えるコメディだったけど、中盤の“叩き落とすような”演出で一気に地獄に招待する様にはゾクゾクしました。
本作で殺人鬼を演じた森田剛の演技も圧巻。この“ヤバすぎるサイコキラーっぷりを見て、役者の印象そのものがかわってしまう”というのは、『冷たい熱帯魚』のでんでん、『凶悪』のピエール瀧と同等か、それを超えるレベルでした。

2位『淵に立つ』


「淵に立つ」メイン


(C)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMA



小さな金属加工工場を営む男とその家族のところに、最近まで服役していた知人が訪ねてきたことから始まる物語です。

主要登場人物はわずか5人、舞台もどこでもありそうな片田舎に限定、CGも特殊効果も何にもない低予算映画ですが、登場人物の内面はおそろしく揺れ動いていることが、これでもかと伝わる、並々ならぬ人間ドラマが生まれていました。

観終わってみれば、「あのセリフもあのセリフもこんなにも意味がある!」といくつも気付けるはず。ぜひ予備知識を入れずに、この地獄を体験してほしいです。

1位『葛城事件』


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(C)2016「葛城事件」製作委員会



ある一家の次男が起こした無差別殺人事件を描いた映画です。劇中では家族の中に何かしらの“悪循環”があったことをこれでもかと示していくのですが、それがいい意味で最悪。次から次へとキツくて辛い事実が露呈されるので、映画館から出て行きたいと思ったくらいです(もちろんそれもいい意味で)。

観た後は冗談抜きで体調を崩しました。もう二度と観たくはありません。でも、多くの人に、一度はこの映画を観てほしいです。

「わざわざイヤな気分になる映画なんて観たくないよ!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした“負”の感情を体験することで、現実に起こる不幸や問題への準備ができるかもしれませんし、何より人間が抱えた“業”や“毒々しさ”は、やはりおもしろいと思ってしまうものなのです。ぜひぜひ、そうした超イヤな気分になれる映画の魅力も、知ってみてください!

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(文:ヒナタカ)

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