これを観ておくと『ラ・ラ・ランド』がさらに楽しめる!10の映画
6:『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982)
変わり種(?)としてはこちらも紹介しておきましょう。本作が有名なのは、何よりも“大ゴケ”してしまったこと。ラスベガスの街や巨大な飛行機までをセットとして作ったにも関わらず、大手雑誌メディアからは酷評の嵐、製作スタジオが倒産するほどに興行的に失敗してしまったのです。
実際に観てみると、“カップルが別れてそれぞれで新しい恋人を作る”というプロットは良くも悪くも甘々としており、“ポンコツ車のワルツ”などの「この映画はいったいなんなんだ?」と思うしかないシュールなシーンがたっぷり出てきます。ラスベガスの道の奥をよく見ると、セットで作られたことが思いっきりわかる“壁”があることも見逃せません(笑)。監督は『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』のフランシス・フォード・コッポラなのですが、とても巨匠とは思えない珍妙な作風は、マニアにこそおすすめと言えるでしょう。
『ラ・ラ・ランド』とは、室内で怪しく赤い光が放たれていること、ネオンが輝く画、『カサブランカ』の引用があることなどが共通していますよ。
7:『ニューヨーク・ニューヨーク』(1977)
その名の通りニューヨークを舞台にしたラブストーリーで、監督は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『沈黙 サイレンス』のマーティン・スコセッシです。
本作と『ラ・ラ・ランド』が似ているのは、ストーリーそのもの。歌手を目指す女性と、ジャズの世界で生きようとする男性が心を通わせたり、時には自分の価値観を優先するがゆえに離れてしまったり……そんな関係が繊細に描かれていました。上映時間が2時間43分と長く、正直言って冗長さが否めないのですが、ロバート・デ・ニーロがしつこくナンパをして、イヤすぎる(褒め言葉)独善的な行動を取りまくる姿は一見の価値がありますよ。
ちなみに、映画の冒頭は第二次世界大戦の終結直後、地面には“日本人降伏”という一面が載った新聞が落ち、ニューヨーク中が歓喜に湧いている、というところから始まるので、日本人が観るとちょっと複雑な心境になってしまうかもしれませんね。
8:『理由なき反抗』(1955)
そのタイトル通り、反抗的な少年たちの青春を描いた作品です。これもミュージカル映画ではありませんが、『ラ・ラ・ランド』の劇中で少しだけ触れられているので、観ておくとさらに映画を奥深く理解できるでしょう。
特に注目してほしいのは、主人公たちが“グリフィス天文台”のプラネタリウムを観に行くシーン。『理由なき反抗』がその場所を世界に知らせたとして、天文台の館外にはジェームズ・ディーンの胸像が建てられており、ハリウッドに住む人のデートスポットとして親しまれているのだそうです。
『ラ・ラ・ランド』の主人公2人も、このグリフィス天文台に訪れるのですが……そこで何が起きるかは、秘密にしておきます。
9:『ロシュフォールの恋人たち』(1967)
『ラ・ラ・ランド』のオープニングは「こんなの観たことがない!」という高揚感でいっぱいなれるのですが、こちらも負けてはいません。詳しくは言えませんが、軽快な音楽は元より、その“舞台”に驚けるのではないでしょうか。
“カラフルな服”が強調されているのも大きな魅力。色づかいの鮮やかな画は“モノクロにはない映画の魅力を出したい!”という気概を存分に感じられました。カフェを中心に、美人の姉妹やその母親、水兵の男性などのさまざまな人物が交錯し、殺人事件の噂が届く(!)という物語も楽しいですよ。
なお、ジャック・ドゥミ監督はこの1つ前に『シェルブールの雨傘』(1964)
という映画も撮っており、そちらは劇中のセリフのほぼすべてが歌(ミュージカル)になっているというとんでもない作品でした。こちらも見た色とりどりの(上から見た傘の)画、男女がすれ違う物語などに『ラ・ラ・ランド』との共通点を見つけられますよ。
10:『グランドピアノ 狙われた黒鍵』(2013)
最後に紹介するのは、『ラ・ラ・ランド』および『セッション』の監督であるデイミアン・チャゼルが脚本を手がけたこの作品。あらすじは“超絶技巧のピアニストが本番中に「完璧な演奏をしなければ射殺するぞ」と脅される”というもの。「いやいや脅迫されないほうが正確に弾けるだろ」、「いくらなんでもそれは無理だろ!」とツッコミを入れられることも含めて、とっても楽しい映画でした。
本作と『セッション』では、本来楽しいはずの音楽に“完璧を強要されてします”ということが共通しています。デイミアン監督は実際に高校時代に超厳しいジャズバンドに所属しており、その時の苦しみが作品に反映されていると言っていいでしょう。
「デイミアン監督は音楽が嫌いなの?」と思ってしまうところですが……それは誤解でした。詳しくはネタバレになるので書けないのですが、『ラ・ラ・ランド』においては、デイミアン監督の「みんな俺が音楽嫌いとか思っているかもしれないけど、違うよ!大好きだよ!」というパッションがこれでもかと伝わるのです。『グランドピアノ』と『セッション』を観ておくと、デイミアンの葛藤や希望がどのようなことかが、よりわかりやすくなるかもしれませんよ。
まとめ
そのほかで『ラ・ラ・ランド』の前に観ておくといいのは、スウィング・ジャズの創始者の伝記映画『グレン・ミラー物語』(1954)、ハリウッドの光と影を描いた『サンセット大通り』(1950)、18分に渡るダンスシーンが圧巻の『巴里のアメリカ人』(1951)、有名ブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品である『ウエスト・サイド物語』(1961)、高校生たちの恋を描いた『グリース』(1978)、とあるプールのシーンが似ている『ブギー・ナイツ』(1997)、デイミアン監督自身が“隠れたオマージュがある”と語った日本映画『東京流れ者』(1966)でしょうか。
いやはや、ここまで多くの映画を連想させるとは、どれほどデイミアン監督が映画を、ジャズを、ミュージカルを、そして音楽を愛しているかがわかります。
こんなにたくさん観られないよ!という方は、『ムーラン・ルージュ』と『マルホランド・ドライブ』だけでも観てみるといいでしょう。
以上に挙げた作品のうち、『雨と唄えば』と『カサブランカ』はパブリックドメイン(著作権保護期間が過ぎた公共の財産)となっているため、ネットで無料視聴することもできますよ。
『ラ・ラ・ランド』の公開日である2月24日(金)まで後3週間……至高の映画体験をさらに極上のものにするべく、ぜひこれらの作品をご覧ください!
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(文:ヒナタカ)
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