映画コラム

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2017年02月04日

『王様のためのホログラム』を見て思う、やはりトム・ハンクスはコメディだよね!

『王様のためのホログラム』を見て思う、やはりトム・ハンクスはコメディだよね!

■「キネマニア共和国」

王様のためのホログラム メイン


(C) 2016 HOLOGRAM FOR THE KING LTD. ALL RIGHTS RESERVED.



トム・ハンクスといえば、昨年もクリント・イーストウッド監督の『ハドソン川の奇跡』やスティーヴン・スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』、ロン・ハワード監督『インフェルノ』と、誰もが認めるハリウッド・トップ・スターであり、その自然体の演技が喝采され、アカデミー賞に5回ノミネートされ、うち2回受賞している名優でもありますが、ただ実を言うと彼の若き日の作品群からずっと付き合い続けてきた側からすると、たまにはコメディ映画もやってよとお願いしたくなるものがあるのですが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.199》

『王様のためのホログラム』はトム・ハンクス主演ならではの、コミカルなロマンティック・ヒューマン映画です!

サウジアラビアへビジネスに赴いたアメリカ人のサプライズな日々!


『王様のためのホログラム』は、大手自動車メーカー取締役を解任され、家も妻も失くしてしまった主人公アラン(トム・ハンクス)が、愛娘の学費のためにIT業界に再就職。サウジアラビア国王に最先端の3Dホログラム装置を売り込むべく現地に乗り込むのだが……といった、他国の文化の違いにアメリカ人が戸惑うハリウッド映画お得意の物語。

現代アメリカ文学を語る上で欠かせないデイヴ・エガーズの小説を原作に、『ラン・ローラ・ラン』(98)や『ヘヴン』(02)『パフューム ある人殺しの物語』(06)などで知られ、またトム・ハンクスとは『クラウド・アトラス』(12)でも組んでいる才人トム・ティクヴァが監督しています。

トム・ハンクスは小説が出版された際に絶賛のツイートを投稿したそうで、その後4年の月日を経て映画化が実現。ただし、サウジアラビアでは撮影の許可が下りず、4800キロ離れたモロッコで撮影されることになりました。

今、トランプ大統領が出した中東・アフリカ7か国の国民の入国を制限する大統領令によって国内が二分してしまっているアメリカですが、イスラム教徒の国にアメリカ人がビジネスに赴くという設定からして、なかなか大胆不敵なことではあるでしょう。

またこの手の映画は主人公が慣れない異国文化に右往左往しながらも、現地の女性と恋に落ち、仕事なりトラブルなりを解決していくというのはひとつのパターンではありますが、本作も例外ではありません。

ただし、そこに西洋が異国を描くときにやってしまいがちな差別的色合いはさほど感じられず、むしろここではイスラム教をきちんと認めながら(主人公がうっかり聖なる都市メッカに入り込んでしまうシーンは圧巻!)、ドタバタではなく、いかに微笑ましい異文化衝突を描出していくかに腐心している感もあります。

王様のためのホログラム サブ


(C) 2016 HOLOGRAM FOR THE KING LTD. ALL RIGHTS RESERVED.



肩の力を抜いたトム・ハンクスの心地よき存在感



また今回のヒロインを務める女医役のサリタ・チョウドリーは齢50を越えたちょっと恰幅もある熟年女優ではありますが、そういった存在をごくごく自然にトム・ハンクスの相手役としてキャスティングするあたりもさすがだなと唸らされます。(これが日本映画だったら設定を変えて若い美人女優にオファーしていることでしょう)

本作ではクライマックスに美しいラブシーンも用意されています。

そして何といってもトム・ハンクス! 不慣れな地で右往左往しながらも、彼がそこにいるだけで中東であろうとどこであろうとロマンティックな佇まいが醸し出されていくあたりは、やはりこの名優ならではの持ち味といえるでしょう。

さすがに全米大ヒットTVコメディ番組「サタデーナイトライブ」時代を経ての「スプラッシュ」(84)や『マネー・ピット』(86)『ビッグ』(88)といった、まだコメディアン色が強かった80年代の彼とは雰囲気は違いますが、それでもどこかしら今回は久々に肩の力を抜いて異国のビジネスとバカンスを楽しんでいる風な、そんな心地よい面持ちの彼を見ることができます。

重厚な作品が続いた後での『王様のためのホログラム』のトム・ハンクス、ちょっと日本ロケした『ロスト・イン・トランスレーション』(03)のビル・マーレイを彷彿させるものもありました。

そういえばマーレィも『サタデー・ナイト・ライヴ』出身。どこか共通するものがきっとあるのでしょうね。

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(文:増當竜也)

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