映画コラム

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2017年02月19日

日活ロマンポルノ・リブートのベスト1!中田秀夫監督の『ホワイトリリー』

日活ロマンポルノ・リブートのベスト1!中田秀夫監督の『ホワイトリリー』

■「キネマニア共和国」

ホワイトリリー ロマンポルノ ポスター


(C)2016 日活


気鋭の監督5人を起用して、昨年末より連続公開されてきた日活ロマンポルノ・リブートですが、それぞれ個性を持った力作揃いで、好みもまた人それぞれかとは思われますが、私個人はこの作品が最も往年の日活ロマンポルノを彷彿させる傑作だと思いました……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.205》

中田秀夫監督『ホワイトリリー』です!

陶芸家の師匠と弟子の倒錯した愛の関係性


『ホワイトリリー』は、陶芸家の師匠(山口香緒里)と弟子(飛鳥凛)が織りなす、師弟の域を越えた女性二人の愛の物語で、男とも普通に寝ることのできる師匠に弟子は激しく嫉妬し、それを弄ぶかのように師匠は弟子を挑発していきます。

二人の関係性は単なるレズビアンというよりも、どこかSMチックで倒錯的で、そこが映画としての官能性を増幅させていきます。

監督の中田秀夫は『リング』などのホラー映画で名を挙げた鬼才ですが、もともとはロマンポルノを作りたくて日活に入社したという強固なこだわりの主でもあり、またSMものに才を発揮した小沼勝監督作品の助監督として就き、リスペクトしてきたこともあって、今回の題材はまさにどんぴしゃりでありますが、同時に女性ふたりの関係性はどこかぞっとさせられるほどの美しくもおぞましい怖さがみなぎっており、その意味ではホラー映画チックであるともいえるでしょうし、逆に中田監督のホラー映画は、内在するエロティシズムを恐怖に変換させたものと言い換えることもできるかもしれません。

あからさまなSEXシーンだけでなく、たとえば口で服の背中のジッパーを開いていくシーンなど、実に往年のロマンポルノ的で、こういった工夫を凝らした演出の数々こそが当時の映画ファンをときめかせてくれていたことを思い出させてくれます。

ホワイトリリー 中田秀夫監督 日活ロマンポルノ1


(C)2016 日活



往年のロマンポルノの雰囲気をもっとも継承している作品


今回の日活ロマンポルノ・リブートは、行定勲監督の『ジムノペディに乱れる』、塩田明彦監督の『風に濡れた女』、白石和彌監督の『牝猫たち』が、それぞれシネフィル的に往年のロマンポルノをリスペクトした作品作りに腐心し、園子温監督の『アンチポルノ』はその名のごとく「日活ロマンポルノ何するものぞ!」と言わんばかりに独自の世界観を発露させているように思えました。

対して中田監督の『ホワイトリリー』は、やはり往年の日活ロマンポルノの現場を知っているだけあって、そこで体得した空気感を今の時代に巧みによみがえらせることに見事成功しています。

それゆえに、リアルタイムで日活(80年代はにっかつ)ロマンポルノに接することができた世代としては、やはりこの『ホワイトリリー』がもっともしっくりくるとともに、ついに悲願を成し得た中田監督に心から祝福したい、そんな気持ちです。

なお、今回のリブートに際し、巷でよく「日活ロマンポルノは10分に1回絡みがあれば、基本的にあとは何をやってもいいという自由さがあった」などと語られがちですが、決して間違いではないものの、一方でそれはロマンポルノ以前の若松孝二監督などの60年代ピンク映画にもあてはまる事象であり、むしろ日活ロマンポルノのほうは10分に1回絡みがなければ成立し得ない人間の性の問題に踏み込んだ作品にこそ秀作が多く、神代辰巳も田中登も、中田監督の師匠・小沼勝もそういった作品こそを撮り続けたことで、ロマンポルノの名匠足り得ていたと個人的には思っています。

その意味では自由さよりも、なにがしかの不自由さといった縛りを巧みに利用したことから、日活ロマンポルノは秀作が続出していった。そう捉える方が賢明ではないか。そう思えてなりません。

今回の好評を受けてリブート第2弾が企画されるとしたら、次はその不自由さに立脚した作品も見てみたいものと思ったりしています。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

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