映画コラム
ディズニー・アニメーションがもたらした奇跡とは……『ぼくと魔法の言葉たち』
ディズニー・アニメーションがもたらした奇跡とは……『ぼくと魔法の言葉たち』
(C)2016 A&E Television Networks, LLC. All Rights Reserved.
こんにちは、八雲ふみねです。
今回ご紹介するのは、全国順次公開中の『ぼくと魔法の言葉たち』。
ディズニー・アニメーションを通じて奇跡を起こした家族の物語です。
八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.100
愛する息子を“取り戻す”。愛と希望のハートフル・ドキュメンタリー
サスカンド家の次男オーウェンは、2歳から言葉を失い、コミュニケーションが取れなくなってしまいました。失意の中で過ごす両親は、ある日、オーウェンが意味をなさない言葉をモゴモゴと口にしていることに気付きます。
それは、彼が毎日すり切れるほど観ていたディズニー・アニメーション『リトルマーメイド』に登場するセリフでした。
父は息子が大好きなディズニーキャラクター、オウムのイアーゴになりきって息子に語りかけてみます。
するとまるで魔法のように、オーウェンが言葉を返してきたのです!
その時、オーウェンは7歳。
彼は両親と兄によるサポートと愛情のもと、ディズニー・アニメーションを通じて言葉を取り戻していく……。
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自閉症により言葉を失った少年が、ディズニー・アニメを通じて徐々に会話を取り戻していく姿を追った本作は、サンダンス映画祭をはじめ世界中の映画祭で大喝采を浴び、今年度アカデミー賞でも長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた傑作ドキュメンタリーです。
監督は、アフリカ系アメリカ人監督として初めてオスカーを受賞した経歴を持つロジャー・ロス・ウィリアムズ。
オーウェンの父であるロンと長年にわたり友人関係だったウィリアムズ監督は、ロンがオーウェンについて記した著書「ディズニー・セラピー」を執筆中に、ドキュメンタリー化の権利を獲得。
孤独な世界に閉じ込められてしまった少年オーウェンが徐々に言葉を取り戻し、前向きに社会と向き合い自立を勝ち取るまでをユーモアたっぷりに描いています。
劇中にはディズニー社から異例ともいえる使用許諾を受けた、ディズニー・アニメーションの名作が数多く登場。『白雪姫』や『ダンボ』『美女と野獣』『ヘラクレス』、これら作品とオーウェンが織りなす世界観が愛情豊かに映し出されます。
好き!という気持ちが心を開き、奇跡を起こす!
自閉症をテーマにしたドキュメンタリー映画は、国内外を問わず以前から定期的に製作されていますが、アニメーションがきっかけで症状が回復した……というものは珍しいのではないでしょうか。
スクリーンを通じて知るオーウェンは、障害を抱えながらも底抜けに明るい青年。
大学ではディズニー映画や音楽を仲間たちと楽しむディズニー・クラブを主宰したり、自閉症をテーマにした国際的会合でスピーチしたりと、とても積極的な一面も。
ディズニー・アニメーションを教材に、言葉だけでなく社会の成り立ちを知り、恋をし、親元を離れて自立を目指すオーウェン。
「ディズニー・アニメーションが好き!」と真っすぐに突き進んでいく姿は、澱みがなくキラキラと眩しい限り。
彼は語ります。「僕たち自閉症の人は他人と関わりたくないと思われていますが、それは間違いです」。
確かに言われてみれば、精神的に落ち込んでいるとき、人と関わることが怖くて心を閉ざしてしまったり、自分が傷つくことを恐れたり……という経験、誰しもあるのではないでしょうか。
心のメカニズムには、実は大きな違いはないのかも……。
そう考えると、本作は自閉症という“個性”を通じて、人と人のつながり方を描いた映画。相手の“世界”を想像したり、相手の“言語”で語りかけたりすることで、コミュニケーションはグッとたやすくなるのかもしれませんね。
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大島美幸、初めて見せた“母の顔”
本作の公開初日には、森三中の大島美幸さんをゲストにお迎えしたトークイベントが行われました。
ママになって初めての映画イベント出演に先駆けて、ご主人の鈴木おさむさんと一緒に事前にご覧になった大島さんは、子育てという観点からも本作に感銘を受けたとのこと。
現在、コミュニティラジオ局でディズニー映画と音楽を紹介する番組のDJを務めている……というオーウェンの近況を耳にした大島さん、「私にオススメのディズニー・アニメを、オーウェンにセレクトしてほしい」と、笑顔。
ちなみに愛息の笑福くんは「機関車トーマス」の大ファン。
しかも推しキャラは主役のトーマスではなく、脇キャラに夢中なんだとか。
「脇役のキャラクターが好きなトコロは、オーウェンと似てますね」と、優しいママの表情を見せる大島さんでした。
作品情報
ぼくと魔法の言葉たち
2017年4月8日からシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
監督:ロジャー・ロス・ウィリアムズ
原作:「ディズニー・セラピー 自閉症のわが子が教えてくれたこと」(ビジネス社・刊)
出演:オーウェン・サスカインド、ロン・サスカインド、コーネリア・サスカインド・ウォルト・サスカインド
©2016 A&E Television Networks, LLC. All Rights Reserved.
http://www.transformer.co.jp/m/bokutomahou/
(文:八雲ふみね)
八雲ふみね fumine yakumo
大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
「シネマズ by 松竹」では、ティーチイン試写会シリーズのナビゲーターも務めている。
八雲ふみね公式サイト yakumox.com
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