映画コラム
『メッセージ』の答えは、あなた自身の中にある
『メッセージ』の答えは、あなた自身の中にある
こんにちは、八雲ふみねです。
今回ご紹介するのは、5月19日から公開の『メッセージ』。
これまでのSF映画にはない衝撃の展開を、あなたはどう受け止めますか?
八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.105
未知なる知的生命体と人類の交流を描く、感動のSF超大作
何もない野原に突如現れた、謎の黒い物体。
未知なる飛行物体を解明するよう、言語学者のルイーズが軍から指令を受けます。
物理学者のイアンとチームを組み、まるで絵画のような異質な言語の解読に没頭するうち、ルイーズは時間を逆行するような奇妙な感覚に捕らわれるように。
果たして、この“ヘプタポッド”と呼ばれる知的生命体は、人類にとって平和の使者なのか。それとも脅威なのか。
そして彼らが人類に伝えようとしていることとは……。
エイミー・アダムス主演、手がけるのはあの『ブレードランナー2049』に大抜擢されたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督!
優れたSF作品に贈られるネビュラ賞を受賞するなど、SFファンから絶大な支持を受けるテッド・チャンの短編小説「あなたの人生の贈り物」が原作となる映画『メッセージ』。
知的生命体が発する言語の謎が解けた瞬間、その真相に驚愕しつつ、人類に向けた美しく切ないメッセージに心打たれる感動作です。
メガホンを取ったのは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
SF映画の金字塔と言われているリドリー・スコット監督作『ブレードランナー』の続編『ブレードランナー2049』でも監督を務め、その独特の映像美で高い評価を受けているカナダ人監督です。
主人公のルイーズにエイミー・アダムス、イアンにジェレミー・レナー、さらに軍司令部のウェバー大佐にフォレスト・ウィテカーと、キャストにオスカー級の実力派たちがズラリと並ぶのも魅力的。
宇宙人とのコンタクトを神聖に描くためにたどりついた、“無音”の境地
本作は今年度アカデミー賞で8部門にノミネートされ、音響編集賞に輝きました。
寄せては返す波のように静かなBGM、鳥のさえずりや心臓の音を思わせる効果音、ヘプタポッドが発する音声言語。
どれも創造性があって素晴らしい中で、私が鮮烈な印象を受けたのが“沈黙”の力。
ヘプタポッドとのコンタクトを取るシーンは、神秘的かつ荘厳。
様々な音の表現を追求したうえで辿り着いた“沈黙”という音は、極限状況下の主人公の深層心理をも巧みに表現し、アカデミー賞音響編曲賞の受賞も納得せざるを得ません。
さらに特筆すべきは、ヴィルヌーヴ監督の卓越した演出力。
リアルな映像の質感にこだわり、SF映画でありながらCGは極力使用せずに撮影。
また主人公の心理を丁寧に描き出すことで、SFをテーマとした人生哲学へと作品を昇華させている手腕は驚き以外の何物でもありません。
映画史に残る作品であることは間違いないでしょう。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、明日の映像業界を支える日本の学生たちと映画談義。そして気になるアノ映画の現状は……
桜咲く4月。本作の試写会イベントにて、来日中のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督とスペシャルゲストの関根麻里さんをお迎えし、その司会を務めました。
観客は、将来映像関連の職業を目指して大学や専門学校で学んでいる、学生の皆さん。
上映後のトークイベントということで、ヴィルヌーヴ監督と学生さんによるディスカッション形式で進められました。
ヴィルヌーヴ監督は「ポジティブな意見もネガティブな意見も大歓迎」と、学生たちの反応に興味津々。
ヘプタポッドの造形にまつわる裏話から監督自身の制作準備中のモチベーションの上げ方まで、アツいトークが繰り広げられました。
『ブレードランナー2049』の仕上げ作業の合間を縫って、初来日を果たしたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
タイトな来日スケジュールの中、空港から都内へと向かう車中ではお花見も堪能出来たと、笑顔でお話して下さったのが印象的でした。
作品情報
メッセージ
2017年5月19日からTOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ、マーク・オブライエン ほか
公式サイト http://www.message-movie.jp/
(文:八雲ふみね)
八雲ふみね fumine yakumo
大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
「シネマズ by 松竹」では、ティーチイン試写会シリーズのナビゲーターも務めている。
八雲ふみね公式サイト yakumox.com
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