映画コラム

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2017年06月02日

マフィアの本当の姿を知りたければ『マフィアは夏にしか殺らない』を観るべし!

マフィアの本当の姿を知りたければ『マフィアは夏にしか殺らない』を観るべし!

イタリアのマフィアといえば『ゴッドファーザー』を思い浮かべる人が多いでしょう。現代のシチリアがフランシス・フォード・コッポラ監督が描いた世界そのままだと思い込んでいる人が少なくないはずです。

しかし、マフィアの本当の顔を観たければ、『ゴッドファーザー』よりもピエルフランチェスコ・ディリベルト監督の『マフィアは夏にしか殺らない』を観るべきです。




パレルモにおける大文字の歴史と一人の少年の恋愛


物語は、シチリアの州都・パレルモに設定されています。この街が1970年代からマフィア(コーザ・ノストラ)の組織化とそれに反する判事たちやジャーナリストの活動の舞台でした。『マフィアは夏にしか殺らない』では、大文字の歴史が小文字の歴史と絡み合って、少年のアルトゥーロの視点からマフィアが語られています。

パレルモで暮らす小学生のアルトゥーロは、毎日のように起こるマフィアの犯罪を見て見ぬふりをする大人たちに囲まれて育っていきます。

「マフィアが存在しないから大丈夫」「マフィアは夏にしか殺さないので、冬には心配しなくていい」と言い聞かされるアルトゥーロにとって、マフィアよりも大きな問題があります。つまり、彼はクラスメートのフローラを愛しているのですが、なかなか告白ができないということです。しかも、マフィアの犯罪が悪化してきたため、アルトゥーロの気持ちを知らずにフローラがスイスに引っ越してしまいます。

数年後、青年になったアルトゥーロは、キリスト教民主党の代議士リーマの秘書としてパレルモに戻ってきたフローラと再会します。理想主義者のフローラが、政治家とマフィアとの繋がりに気づいていないのに対して、ずっとパレルモにいたアルトゥーロにとってその密接な関係が当たり前なものです。そのため、二人の道がまた別れてしまいますが、…




歴史を学んでから映画を観ましょう


イタリアのアカデミー賞をはじめ、世界中の映画祭で受賞された『マフィアは夏にしか殺らない』は、非常に暗い歴史を語りながらも、ユーモアが溢れているおかげで大ヒットとなりました。マフィアを知りたい人にとっては、本作品が見逃してはいけません。

しかし、イタリアの政治や現代歴史を知らずに観賞すると、分かりにくい部分も少なくないかもしれません。というわけで、簡単に『マフィアは夏にしか殺らない』に登場する歴史的人物を紹介したいと思います。

ロッコ・キンニチ
反マフィア運動を展開していた判事。1983年7月29日にパレルモでコーザ・ノストラによって暗殺されました。

ボリス・ジュリアーノ
パレルモの警察次長。麻薬の取引や資金洗浄を捜査していたため、1979年7月21日にコーザ・ノストラによって暗殺されました。

カルロ・アルベルト・ダッラ・キエーザ
テロリスト「赤い旅団」の撲滅でも活躍した将軍。マフィアを戦うためにパレルモで活躍することになっていましたが、パレルモ入りしてから、たったの100日後、1982年9月3日にコーザ・ノストラによって暗殺されました。

ピオ・ラ・トッレ
反マフィアの政治家。1982年4月30日にコーザ・ノストラによって暗殺されました。

ジョヴァンニ・ファルコーネ
反マフィアの裁判官。1992年5月23日にコーザ・ノストラによって暗殺されました。

パオロ・ボルセリーノ
イタリアの裁判官。ジョヴァンニ・ファルコーネ治安判事と共にマフィア撲滅に向けて活動していましたが、ファルコーネが亡くなってから2ヶ月後、 1992年7月19日にボルセリーノも暗殺されました。

サルヴァトーレ(トト)リイナ
コーザ・ノストラ史上では最も長くマフィアの頂点に君臨した人物です。476人もの容疑者に対して行われた「マフィア大裁判」では、52人の殺人を行ったとして告発されました。ジュリオ・アンドレオッティ首相と深い関係をもっていたことが知られています。

ジュリオ・アンドレオッティ
1972年から1992年にかけて3回、合計7期にわたり首相を勤めた政治家。マフィアと親密な関係をもち、ボスのサルヴァトーレ・リイナと同志に行う所作である抱擁しキスをしている所を目撃されていました。

最後に


反マフィアの判事に「マフィア映画のベスト!」と絶賛された『マフィアが夏にしか殺さない』は、2014年のイタリア映画祭に上映されていましたが、6月3日からまた日本の映画館でも観賞できます。

また、本作品に続き、ピエルフランチェスコ・ディリベルト監督が『愛のために戦地へ』(2016年)においてもマフィアの問題をコメディーのタッチで語り続けています。マフィアの本当の姿を知りたい人は今後もこの監督の映画に注目すべきでしょう。

(文:グアリーニ・ レティツィア)

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