映画コラム

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2017年06月09日

夢と熱意と脱ぎ癖だけあるヘタレ主人公!?『日々ロック』

夢と熱意と脱ぎ癖だけあるヘタレ主人公!?『日々ロック』



(C)2014「日々ロック」製作委員会 (C)榎屋克優/集英社



昨今の日本映画界を語るとき、インディーズ出身の若手監督の存在を決して外してはならないものがあるかと思われますが、入江悠監督もその一人でしょう。

2009年に発表した『SRサイタマノラッパー』で注目されて以降、徐々に注目を集めるようになり、まもなく戦慄の最新作『22年目の告白 私が殺人犯です』が公開される入江監督ですが、年に発表した『日々ロック』もなかなかどうして、彼らしいとんがった快作となっています。

夢と熱意と脱ぎ癖だけは
持っているヘタレな主人公!?



『日々ロック』は榎屋克優による人気コミックを原作にした、ちょっと(いや、実はかなり⁉)オバカな青春ロック映画です。

主人公は高校3年の日々沼拓郎(野村周平)。勉強もスポーツもできないイジメられっ子の彼ですが、唯一、音楽だけが自己の感情を吐き出すことのできるものとして、やがてベースの草壁まもる(前野朋哉)、ドラムの依田明(本作の音楽も担当しているロックバンド“黒猫チェルシー”の岡本啓佑)とともにロックバンド「ザ・ロックンロールブラザーズ」を結成しました。

そして卒業後、上京した“ザ・ロックンロールブラザーズ”の面々は、伝説のライヴハウス“モンスターGOGO”に住み込みで働きながらライヴ活動を続けていきますが、そんなある日、拓郎たちのライヴ中に突如、しかも何とトップアイドルの宇田川咲(二階堂ふみ)が乱入してきたのでした!?

とにもかくにもヘタレでハチャメチャで、ライヴ中思わず脱ぐ癖があって、おまけに童貞で……と、何一つ長所のない主人公の、悲鳴ともただのバカ騒ぎともつかない青春の叫びを、なかば呆れつつも心のどこかでシンパシーを感じてしまう、そんな作品です。

どちらかというと優等生っぽい雰囲気のイケメン野村周平(入江監督の新作『22年目の告白』にも出演)が、ここではアホ丸出しの主人公を、おそらくは自分が一体何をやってるのかすらわからなくなっているかのように体当たりで演じているのも好感が持てるところで、この年彼は第10回おおさかシネマフェスティバル新人男優賞(『クジラのいた夏』と合わせて)および第7回TAMA映画賞最優秀新人男優賞を受賞しています。

『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)に続いて入江監督作品に出演した二階堂ふみも、この時期はエッジが利きすぎるほど利いていた時期なので、そのとんがり具合が多分に活かされた前半部と、後半のギャップの妙などが実に好もしく映えています。

題材がロックということでこだわりのある向きや、一方でそういったアナーキーなものを忌避する向きがこれをどう評価するかはわかりませんが、少なくとも自分たちが一体何をどうやったらいいのかわからないまま、でも夢に向かって突き進んでいきたいんだよ! とでもいった青春のオバカな暴走ぶりには大いに魅せられるものがありました。

クライマックスは意外にも(!!?)かなり感動させられますしね。




(C)2014「日々ロック」製作委員会 (C)榎屋克優/集英社




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今後も要注目の
入江悠監督



さて、本作の入江悠監督のキャリアを振り返ってみますと、1979年生まれで2002年に撮った『OBSESSION』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2003オフシアター部門に入選したのを機に、徐々にその名が知られるようになっていきます。

2006年『JAPONICA VIRUS ジャポニカ・ウィルス』で長編映画監督デビュー。2009年の『SRサイタマノラッパー』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009オフシアター・コンペティション部門グランプリや第13回富川国際ファンタスティック映画祭最優秀アジア映画賞を受賞したことから一気に若い映画ファンの注目を集めることになり、『SRサイタマノラッパー2☆傷だらけのライム』(10)『劇場版神聖かまってちゃん』『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)なども話題になり、2014年の『日々ロック』でメジャー進出を果たしました。

この後も『ジョーカー・ゲーム』(15)や『太陽』(16)『22年目の告白』(17)と順調に作品を撮り続けている入江監督ですが、これからもラップやロックの心意気を忘れず、日々邁進していってもらいたいものです。

(文:増當竜也)
 

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