映画ビジネスコラム
2017年夏休み映画、ヒットするのはどれだ!?外国映画 前篇「今や映画はキャラクターを見るためのメディアだ」
2017年夏休み映画、ヒットするのはどれだ!?外国映画 前篇「今や映画はキャラクターを見るためのメディアだ」
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「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」大ヒット!!だが・・。
女の後輩 あれ? 先輩は?
後輩 そういえば、いませんねえ。
爺 夏休みがどーのとか言ってたなあ、この間。
後輩 夏休みとったんですか? 夏休み映画が毎週公開されているというのに。
女の後輩 まあいたらいたで、色々とうるさいから、このまま進めましょうよ。
爺 そうだな。では夏休み公開の外国映画の興行見通しについて語ってみたいのじゃが・・。
後輩 と言いつつ、もう7月も中旬ですよ。1日から「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」も公開されていますし、その後「ライフ」「ジョン・ウィック:チャプター2」「カーズ/クロスロード」「パワーレンジャー」といった外国映画が続々と公開されています。
女の後輩 やはり「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」は強かったですね。オープニングで興収10億円を超えて、ぶっちぎりの大ヒットです。興収100億円も達成するのでは?
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爺 シネコンの人に聞いてみても、「老若男女、あらゆる層の人たちが来ています!!」とのことだから、確かに大ヒットだ。ただしこのシリーズは、毎作品ハイ・アベレージだからシリーズ中トップの成績というわけには行くまい。
女の後輩 そうなんですか?
後輩 オープニングの興収10億4827万1900円は、確かに大ヒットと言える出だしですが、このシリーズ全5作品の中では4番目なんですよ。
女の後輩 何それ? そんなに低いの?
爺 2006年7月公開の第2作「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」のオープニング興収は19億5487万8350円、翌2007年5月公開の第3作「ワールド・エンド」のそれも19億3869万7200円。2011年5月にスタートした「生命の泉」のオープニングは興収15億1843万3400円をあげておったからなあ。
後輩 参考までにそれぞれの興収を言いますと、「デッドマンズ・チェスト」100.6億円、「ワールド・エンド」109億円、「生命の泉」88.5億円となっています。
女の後輩 それと比べると今度の「最後の海賊」は今ひとつだって言うの?
爺 2003年8月に公開された第1作「呪われた海賊たち」がオープニング興収5億4515万4550円をあげ、最終的に68億円の大ヒットとなったことを含めて、それだけ凄い実績を持つシリーズだということだよ。また今回の「最後の海賊」だって、他の外国映画に対して有利であることは変わりない。
後輩 単純にオープニング数値だけを基準に考えると、100億円を超えた「デッドマンズ・チェスト」「ワールド・エンド」に対して興収が約半分。「生命の泉」対比7ガケってことですか。
女の後輩 興収100億円は・・・・。
爺 100億円なんていう大ヒットは、そう頻発するものじゃないよ。問題はこれからなんだ。「怪盗グルーのミニオン大脱走」「トランスフォーマー/最後の騎士王」「スパイダーマン:ホームカミング」「ワンダーウーマン」と、実績のあるシリーズものや注目作が、今後毎週のように登場する。日本映画も含めて、その中で「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」がどこまで優位性を保てるか。
後輩 幸いにして作品の評判は、すこぶる良いようですね。
女の後輩 「シリーズ最高傑作!」と言ってる人もいたわよ。この勢いを持続して、夏休み最大の稼ぎ時期であるお盆で、もうひと盛り上がり見せて欲しいわね。
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倍々ゲームの「怪盗グルーのミニオン大脱走」は100億円狙い?
爺 シリーズ作品という点では、「カーズ/クロスロード」も同じディズニーの配給で15日から公開されたけど、こちらはどうなんだろうね?
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後輩 第1作が2006年7月に公開されましたが、正直、今ひとつの成績で。興収22.2億円。当時のピクサー作品の勢いから考えると、物足りませんね。
爺 自動車のキャラクターというのは、日本とアメリカではギャップがあるだろうし、何と言っても第1作だからキャラの認知度も低い。むしろ2作目のほうがヒットしたんじゃないか?
後輩 その通りです。2011年7月に公開された「カーズ2」は興収30.1億円と前作対比約8億円の増加です。
爺 やっぱり、キャラクターを認知された作品は、シリーズとして強いってことだな。ジャック・スパロウしかり。以前この小僧が言っていたように、これまで映画は文学として語られることが多かったが、今はキャラクターを見るべきメディアへと変貌し、それが世界的に主流になっている。だからこんなにシリーズものばかりになるんだ(笑)。
女の後輩 そればかりなのも、ちょっとどうかと思いますけどねえ・・。
後輩 キャラクターの認知度という点で言えば、凄まじい勢いを見せているのは、イルミネーション・エンターテイメントが産んだ、ミニオンたちです。7月21日からその新作「怪盗グルーのミニオン大脱走」が公開されますが、これまたキャラ主導の映画として大ヒットが期待されるのではないでしょうか?
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爺 うん。このシリーズは2010年10月公開の「怪盗グルーの月泥棒 3D」からスタートしたわけだが、これは10月という公開時期からして、そう大きく期待された作品ではなかった。実際に興収も12億円だったしな。
女の後輩 ところが、2作目の「怪盗グルーのミニオン危機一発」が、2013年に公開された興収25億円を上げる大ヒットになりました。前作の2倍以上ですね。
後輩 フジテレビのキャラクターに起用されたことで、もの凄い勢いで認知度が高まったこと。そして作品の独自性や面白さが評判を呼んでのことでしょう。これが2015年の夏休みに公開されたスピンオフ「ミニオンズ」では、興収52.1億円!! 前作のさらに倍!!いやそれ以上の成績を上げて、俄然注目されたわけです。
爺 「怪盗グルーのミニオン危機一発」はまだ9月公開だったのが、「ミニオンズ」は7月31日初日と、夏休みのまっただ中に出した。そういったマーケット環境の問題もあるが、とにかく前作対比2倍以上の興収を上げているのは凄い。
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後輩 となると、今年の「怪盗グルーのミニオン大脱走」は、100億円を超えますか?
女の後輩 あんた、おめでたいわねえ。そんなに簡単に大金が稼げるんだったら、配給会社だって苦労しないわよ。宣伝もしないで、ただ単に映画を上映すればいいってことになるわよ。
爺 まあそうなんじゃが、勢いのあるキャラクターは怖いぞ。それとイルミネーションの作品は「ペット」「シング」などで、今や完全にファミリー・ムービーとして定着しているからな。ディズニー・ブランドを脅かすと言っても良いだろう。
後輩 シネコンの人も言ってました。イルミネーション作品が、春休みや夏休みに公開されることで、新しいファミリー番組がひとつ増えたって。
爺 歓迎すべきことだな。さて、次の「トランスフォーマー/最後の騎士王」なんだが、マイケル・ベイ監督作品は一生見続けると豪語する、先輩がいないのは残念だなあ。
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女の後輩 「ベイさんっ!!今度の作品も無謀な出来で素晴らしいですっ!!」って、「トランスフォーマー」シリーズの新作を見るたびに言ってるけど、誉めてるのかそれ。私としてはこのシリーズ、ちょっと飽きてきたかなあ・・。
爺 そのあたりは、後篇で語ることにしよう。「トランスフォーマー/最後の騎士王」、そして「スパイダーマン:ホームカミング」「ワンダーウーマン」について、君たちの見立てを聞こう。
後輩 了解です。ちょっと休憩ですね・・。
(後篇につづく)
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(企画・文:斉藤守彦)
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