Netflixが、アニメ・コンテンツの流通を大きく変えるかもしれない。

■「役に立たない映画の話」



「アニメ・スレート」大々的に開催!


先輩 ちょっと前のことですが、Netflixが開催した「アニメ・スレート」というイベントに出席しました。

爺 Netflixというと、配信だな。映画の興行や配給だけでなく、配信のことまで書くのかい?

先輩 いやいや。まだブラウン管でテレビを見ているレベルですので(笑)、目下勉強中といったところです。でも興味は持っていますよ。映画というか、映像コンテンツの流通が、配信によって大きく変革する可能性も感じています。

爺 で、その「アニメ・スレート」というイベントは、どんなものだったんだい?

先輩 Netflixが現在配信しているアニメ作品と、これから配信するアニメ作品について、大々的にプレゼンテーションをやったわけです。映画で言うと配給会社のラインナップ発表みたいなもんですよ。でも凄いコンテンツの数でした。発表も3部構成で午後2時から2回の休憩をはさんで6時までの4時間!! 内容も、新作アニメの監督やスタッフ、声優さんが登場してのトークや、Netflixがいかにしてアニメ配信に取り組んでいるかの説明があったりとか。




爺 それは凄い。映画会社だってそこまで大規模なプレゼンをしているとこはないんじゃないか?

先輩 しかも映画ジャーナリストの私まで招待されるという。

爺 何かの間違いで、招待状が送られたんだろうが(笑)。

「GODZILLA 怪獣惑星」の特別映像を初披露。


先輩 ざっと当日発表されたタイトルを列記しますと、現在日本で先行配信中なのが「BLAME!」「悪魔城ドラキュラ-キャッスルヴァニア-」「リトルウィッチアカデミア」「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」「賭ケグルイ」「Fate/Apocrypha」。



©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局


爺 ちょっと待て。「先行配信中」ということは、海外にも配信されるのか?

先輩 もちろんですよ。「悪魔城ドラキュラ-キャッスルヴァニア-」はシーズン1を配信していますが、シーズン2は2018年に全世界配信することが決定していますし、「CYBORG 009 CALL OF JUSTICE」は世界配信されています。

爺 ・・・凄い時代になったもんだなあ・・・。

先輩 それから10月に日本先行配信される「クジラの子らは砂上に歌う」、11月の劇場公開後に全世界配信されることが決定している「GODZILLA 怪獣惑星」は特別映像が初披露されました。短いものですが。



©2017 TOHO CO.,LTD.


爺 どんな感じだった?

先輩 いや、まあ舞台になるらしい惑星の風景、キャラが登場して、ゴジラのいつもの鳴き声が・・といった感じでしたが(笑)。

爺 なあんだ。

先輩 続いて今年冬に全世界同時配信される「僕だけがいない街」と「炎の転校生REBORN」。「僕だけが・・」は実写作品です。8月25日に全世界同時配信される「DEATH NOTE」。これは日本のコミックを元にした実写映画ですね。さらに「ヴォルトロン」はシーズン1,2を配信中。シーズン3を9月4日から、シーズン4を10月に世界配信することが決まっています。




爺 世界配信って、そんなに簡単にできるものなのか?

先輩 Netflixはそうした技術体制も整えたとのことです。その種のことに詳しいメディアに載っていると思いますので、検索してみてください。

爺 無責任だなあ。分からなかったんだろ(笑)?

先輩 でへ。続いて時期は未定ながらNetflixで配信が決定しているのが、「キャノン・バスターズ」「バキ」「Knights of the Zodiac:聖闘士星矢」「リラックマ シリーズ」の、4つのTVシリーズです。

爺 だんだん疲れが出てきたな。

先輩 死なないでくださいよ。まだありますから。2018年にNetflixで配信されるのが「LOST SONG」。同じく2018年春に世界配信が決まっている「ソードガイ The Animation」、「A.I.C.O. –Incamation-」「B:the Beginning」と、いずれもTVシリーズです。そしてこの会見の目玉は、「夜明け告げるルーのうた」の湯浅政明監督が手がける「DEVILMAN crybaby」で、あの永井豪の「デビルマン」の新しい映像化です。こちらは2018年初春にNetflixで全世界同時配信とのことです。



©Go Nagai-Devilman Crybaby Project


爺 ふえええ・・・・たくさんあるなあ!! 世界配信を前提にしているからか、英語のタイトルばかりで、わしゃくらくらしたぞ!

先輩 タイピングしてるこっちだって、大変なんですよお。

「上映時間12時間の映画があったって良いじゃないか!!」


爺 Netflixと言えば、アニメだけでなく実写作品も最近では製作から手がけていて、日本発の作品として「火花」「深夜食堂」「テラスハウス アロハステート」などを配信先行という形で世に出しているな。

先輩 海外でもポン・ジュノ監督の「オクジャ/okja」が配信中ですし、近くノア・バームバック監督の「マイヤーウィッツ ストーリズ(原題)」を配信するそうです。

爺 そういったNetflixオリジナル作品を、映画として見なすのかどうか、今年のカンヌ映画祭で議論になったそうじゃが。

先輩 もちろん見なすべきですよ。1本の作品なんですから。なんで否定する人がいるのか、理解出来ません。

爺 ただ、「火花」や「深夜食堂」などは、スタイルとしてTVシリーズの方法論をとっているからな。数話のエピソードで全体を構成するという。

先輩 いやいや。いいですか、映画とTVドラマの違いは何だと思いますか?まず映画にある画面サイズの選択権がクリエイター・サイドにあるのかどうか。それと途中でコマーシャルが入るか。上映時間の拘束があるか。だいたいそういったところが、映画とTVドラマの違いだと思いますが、Netflixで配信されているシリーズは、こうした従来のTVドラマの拘束がないじゃないですか。だったらこれはもう、映画として捉えても良いんじゃないですか?

爺 でもなあ、1シーズン12本出、途中で監督が変わったりすることを考えると、やっぱりドラマなんだよな・・。

先輩 複数の監督が撮るオムニバス形式だと考えれば良いじゃないですか!? 1シーズン12話だったら、上映時間12時間の映画であると、なぜそう捉えてはいけないんですか!?

爺 いけなくはないけど、作り手がそもそも映画館での上映を目指して作ったかどうかが基準になるんじゃないかな。クリストファー・ノーラン監督みたいに「最初のウィンドウは映画館である」と断言している人もいれば、配信ありきで製作された作品となると、やはり配信の観客を第一に考えるクリエイターもいると思うぞ。

先輩 カンヌあたりで、映画祭という場で、こういうことが議論になるというのはおかしいですよ。映画館にかからなくては映画じゃないと言うのなら、かければいいんだ。

爺 その通りだ。Netflixが映画配給をしても良いし、既存の配給会社に依託しても良い。

ODS、イベント上映などの興行に対する影響は?





先輩 そういうことは、デジタル化が進んだ昨今、やりやすくなっていすますよね。

爺 ひとつ気づいたのは、こうしてアニメ作品を世界配信するということは、そのレベルでビジネスが完了してしまうから、これまでみたいにアニメを2週間だけ劇場でイベント上映するといったことが、今後は少なくなるかもしれないな。ODSだな。

先輩 何をODSと見なして、何を映画とするか。そのあたりの境界線は複雑ですが、ODSのマーケットそのものは拡大しています。1月に映連が発表したデータによると、興収ベースで昨年は163億8800万円上げていて、これは前年対比107パーセントに当たります。内訳を見ても、邦画の興収が89億1000万円とダントツで、洋画は7億9900万円、中継が66億7900万円となっています。

爺 イベント上映という興行形態もウィンドウの問題で、まずパッケージ・メディアの発売が決まっていて、そのプロモーション的な位置づけで、特定期間映画館で上映するというケースが多かったからな。そこに配信が絡んでくると、さてどういう順序になるのやら。

先輩 いずれにせよ、こうした形で新しいビジネススタイルが出てくることは大賛成ですし、Netflixでの世界配信で、これまでビジネス・テリトリーに限界があったアニメ制作会社が積極的に海外市場に進出出来るのは、ビジネス的にとても良いことですよね。

爺 ただし、世界に出るということは、それだけ多くの敵と戦わなくてはならないことも意味するから、真の意味での日本のコンテンツの力が試されるというわけだ。大金を投じてアニメ・シリーズを作ったものの、海外展開で思うような結果が出ないというリスクも覚悟しなくてはならない。

先輩 それは映画館での興行と同じですよ。かけてみなくては、ヒットするかどうか分からない。映画の興行がそうであるように、配信というジャンルでも、そのリスクは変わらないわけです。新しいマーケットに新しい方法論で進出し、一刻も早く独自のノウハウを築いて欲しいと思いますよ。

(作品及びシリーズのタイトルは、一部仮題)

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(企画・取材・文:斉藤守彦)

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